虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

玄鳥 (藤沢周平著/文春文庫)

2004年10月28日 | 
藤沢周平の時代小説のうちでも、北陸 海坂藩を舞台に武士を描いた短編集。

藤沢周平の世界は風が吹いている。
読んだあとなんとなく清しい風に吹かれたような気分になる。
登場するのは、癖もあれば欠点もあり、変なところにこだわったりする身近な人間像だが、やはり「武士」であり、死に対する姿勢が現代人とは明らかに違う。

女性のあり方もまた然りで、自制心に富み、表面は穏やかで、その奥の揺れ動く心が何かの折にふと表面にこぼれでる。たとえば、「三月の鮠」のヒロインは、密かに恋している男が、自分の家族の仇を討って無事で帰ってきた姿を認めて、それでも夢中で飛びついたりせず、身じろぎもせず立っている。巫女姿白い小袖と緋の袴でりりしく。
そして男が近づくと、
「その目に盛り上がる涙が見えた。」

わ~、たまりません。
私とは別人種だな、とは思っても、文章からして実に端整でしびれます。

藤沢周平はクールです。
今度の「隠し剣 鬼の爪」映画化でも、「たそがれ静兵衛」みたいに山田監督調にウェットで重くなってないかとちょっと心配。

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