虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

かくも長き不在(1960/仏)

2004年06月01日 | 映画感想か行
UNE AUSSI LONGUE ABSENCE
監督:アンリ・コルビ
出演:アリダ・ヴァリ ジョルジュ・ウィルソン

 パリの下町。カフェを切り回して戦後を女一人で生きてきたテレーズは戦後十数年たったある日、大戦中にゲシュタポに連れ去られたきりの夫にそっくりな男を見かける。その男は頭に傷があり、一切の記憶を失っていた。

 夏のパリ。バカンスに行くことがない下町の人々。
 どっしりした、しかし疲れを見せる盛りを過ぎた年齢の女が消息不明の夫にそっくりな浮浪者を見つけ、何とか彼の記憶を呼び覚まして、夫であるのかどうか確かめようとする。それはまた、長い年月封印してきたであろう自分の幸福の記憶を呼び覚ますという苦い行為でもある。
 ラスト、私は男が夫の名前で呼びかけられて手を上げたシーンで、彼は夫であると確信してしまった。記憶の底の恐怖の記憶が彼にあの行動をとらせた、と。だが、これは映画にとっては余計な事なのかも知れない。
 その瞬間に気を失い、目覚めた後また彼女はあてのない希望を抱いて、あてのないと知りつつ生きていくのだ。「冬」を待ちながら。

 オープニングの構成から秀逸。「第三の男」で理想的美女だったアリダ・ヴァリの生活感溢れた身体と、哀切さも見事。

 しかし、どうしてこの映画がビデオにもDVDにもなってないの?

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