虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

白いカラス (2003/アメリカ)

2005年11月13日 | 映画感想さ行
THE HUMAN STAIN
監督: ロバート・ベントン
出演: アンソニー・ホプキンス  コールマン・シルク教授
    ニコール・キッドマン  フォーニア・ファーリー
    エド・ハリス    レスター・ファーリー
    ゲイリー・シニーズ    ネイサン・ザッカーマン

 名門大学の学部長コールマンは、講義中に欠席した学生に対して発した“スプーク”という言葉が黒人学生への差別発言とされ、辞職に追い込まれる。更にこれにショックを受けた妻が亡くなってしまう。失意の日を送るコールマンは、スランプ中の作家ネイサンとの友情になごまされる。そんな彼がある時、フォーニアという若い掃除婦と出会い、恋に落ちる。

 アメリカ社会に根深く残る人種差別とよじれあった感情、主にプライドの悲しみの物語。見ていていい映画だと思うものの、沈んでくるような映画。
 登場人物が皆、深い傷を持って生きている。言いがかりで職も地位も妻の命までも失ったインテリ老人と、虐待の過去を持ち、暴力的な夫から逃げる子どもを不倫中の火事で失った社会の底辺で生きる30過ぎ女性。この二人の惹かれあいは、お互いの持つ傷の大きさが引き合ったように感じる。
 人種が交じり合わず以前の「人種の坩堝」から「人種のモザイク」と表現されるようになったアメリカだが、抜きがたい人種間の上下感覚…それに対する逆ねじのような馬鹿げた告発、過去からの復讐のような弾劾、誰かに愛情を期待することを恐れるような女性と、原作は未読なのだが、理解を求める心が、その相手が自分と同じような傷の大きさを持ってこそ癒されるという感じはわかるような気がする。

 ニコール・キッドマンはすさんでくすんだ美貌がよく表現されていて、うまいと思った。ホプキンスはいうまでもなく、エド・ハリスと、ゲイリー・シニーズも心のどこかが固まったままのような人間像が、それぞれの過去を思わせて、さすがでした。