虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
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座頭市物語 (1962/日)

2004年11月25日 | 映画感想さ行
監督: 三隅研次
出演: 勝新太郎 天知茂 万里昌代 島田竜三 三田村元

 天保水滸伝を、座頭上がりの市という盲目のキャラクターを主人公に配して描いたドラマ。

 私は、シリーズ化の後や、テレビシリーズの決めセリフがあったりする座頭市ではなく、まさにこの映画で座頭市と出会ったので、このいささか暗くてニヒルっぽい雰囲気に馴染んでいます。
 三隅監督らしい、実に端正な時代劇らしい画面で、いつもながら光と、そして影の落ち方が美しい。男をかっこよく見せるのが本当に上手だ。

 でもこの映画を初めてみたときは、勝新よりも平手造酒役・天地茂にぞっこんまいってしまった。登場シーンや、市との決闘シーンは本当に瞬きも忘れるようだ。 
 後年は「○○を演じる天知茂」を見るような気がするのだが、この映画では「天知茂が演じている平手造酒」で、平手造酒というキャラのひとつの典型のよう。落ちるところまで落ちた自分をあきらめた侍の最後のプライドが凄惨で、悲しく、しかも美しい。
 ヤクザが飯岡・笹川双方ともに酷薄に描かれているだけに、一層哀れ。
 そして、見事な居合いの腕を持つ市も、やって来たとき同様、みっともなくよたよたと、慕ってくれる女性も置いて去っていく。
 ハードボイルドな映画だった。
 音楽も、画面に沿った感じで、全体に押さえた雰囲気。