北朝鮮は今や、米中ロの三角関係を揺るがす「独立変数」として登場している。  しかし、韓国と尹錫悦政権はいまだに北朝鮮を、4年前のいじめられた・・

2023-09-28 12:20:41 | 朝鮮を知ろう。
[コラム]

金正恩委員長、「乙」から「甲」の存在へ…

知らないのは尹錫悦政権のみ

登録:2023-09-28 01:21 修正:2023-09-28 08:31
 
[チョン・ウィギルの世界、そして] 
 
北朝鮮は今や、米中ロの三角関係を揺るがす「独立変数」として登場している。しかし、韓国と尹錫悦政権はいまだに北朝鮮を、4年前のいじめられた「乙」としかみていない。
 
 
北朝鮮の金正恩国務委員長(右)とロシアのプーチン大統領が13日(現地時間)、ロシアのアムール州ボストーチヌイ宇宙基地で握手を交わしている/AFP・聯合ニュース

 2019年4月24日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はロシアを訪れた。ベトナム・ハノイの朝米首脳会談をノーディールで終えて会談場所のメトロポールホテルを離れてから2カ月後のことだった。

 早朝に列車に乗って出発した金委員長は、午後6時にウラジオストク駅に到着し、ロシアのメディアの奇襲インタビューを受けた。慌てたのか「あ、あの…」とうめき声を上げた。ロシアは北朝鮮の「尊厳」に、尊厳をもって対応しなかった。

 北朝鮮は慣例どおり前日になってようやく金委員長のロシア訪問を発表したが、ロシアはすでに6日前に発表していた。ロシアはロシア語で「ロシア-北朝鮮会談」と表記した。米国との対話が決裂した後にロシアを訪れた金委員長に対して、ウラジーミル・プーチン大統領は「ロシアは朝米対話を支持し、6カ国協議を開いて核問題を解決しなければならない」と述べ、両国の軍事協力には言及しなかった。孤立無援の北朝鮮がロシアを訪ねて手を差し伸べたが、「朝ロ関係で新しい全盛期が繰り広げられた」といううわべだけの言葉を述べるばかりだった。同年末、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、北朝鮮の対外関係は全面凍結された。

 4年5カ月後の今月12日、金委員長は再びロシアを訪問した。ロシアは今回は北朝鮮と同じく前日に金委員長の訪問を公式発表した。首脳会談では遅れて登場することで悪名高いプーチン大統領は、13日のボストーチヌイ宇宙基地での金委員長との首脳会談に30分早く到着し、相手を待った。今回は「ロシア-朝鮮会談」と表記した。2019年にはロシアは朝鮮半島での北朝鮮の代表性を認めなかったが、今回はこれを認め、韓国を無視した。

 「尊厳」を傷つけられた「乙」(立場が下)だった金委員長は、4年5カ月が経った後「甲」(立場が上)へと華麗に変貌を遂げた。米中対決の激化、ウクライナ戦争、東アジアにおける韓米日準同盟体制の進展に対応し、中ロと北朝鮮が作った情勢変化だ。

 金委員長の「乙」から「甲」への格上げは、米国の反応に如実に表れている。米国は4日、金委員長のロシア訪問をニューヨーク・タイムズを通じてあらかじめ報じ、北朝鮮がロシアにウクライナ戦争に必要な砲弾などを提供する兵器取引をするとして両国叩きに乗り出した。

 しかし、マーク・ミリー米合同参謀議長が16日「北朝鮮の兵器提供がウクライナで大きな動きを生むだろうか」、「私は懐疑的だ」と述べたように、北朝鮮の通常兵器の支援は相対的に些細な問題だ。朝ロは今回の首脳会談を通じて、両国の戦略関係の再開を示唆した。両国の戦略関係の再開は、両国を越えて東アジア、米国の世界戦略に大きな影響を及ぼしうる。

 プーチン大統領は13日、金委員長との会談前、「ロシアは北朝鮮の宇宙衛星建設を支援するのか」という記者団の質問に「それこそが我々がここに来た理由だ」と答えた。ロシアは2015年4月、金委員長の特使としてロシアを訪問したヒョン・ヨンチョル人民武力部長(当時)が、防空ミサイルシステムS300の購入と原子力潜水艦の設計の支援を要請したが、はっきりと断っている。ハノイ・ノーディール以降「核武力の高度化」で疾走してきた北朝鮮に、ロシアが偵察衛星など戦略兵器の技術を支援して跳躍の機会を与えようとしている。

 ロシアと北朝鮮の経済協力は、北朝鮮に対する米国の制裁を無力化する。2022年の北朝鮮の対外貿易に占める割合は、中国が96.7%、ロシアは0.1%未満だった。だが、ウクライナ戦争による西側の制裁で西側経済と絶縁されたロシアは、もはや北朝鮮との経済協力をためらう理由がなくなった。制裁にもかかわらず、原油価格の上昇と中国との人民元・ルーブル取引で新しい経済システムを構築しようとしているロシアは、戦争によって不足している労働力を北朝鮮から調達することもありうる。石油と食糧もふんだんにある。

 もちろん、軍事および経済における朝ロの戦略関係の深まりは、まだ実現性の高い可能性にすぎない。北朝鮮とロシアはその可能性を切り札としてちらつかせている。金委員長のロシア訪問時、プーチン大統領の訪中と中ロ首脳会談が発表された。このため、モスクワに向かっていた中国の王毅外交部長を米国がマルタで引き留め、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安保担当)との会談を急きょ設定した。そしてバイデン・習近平首脳会談を調整した。金委員長のロシア訪問が、米中ロの三角関係に与えた衝撃を如実に表している。

 朝ロの戦略関係に驚いた米国が中国に近づき、中国は北朝鮮と結束しようとしているロシアとの連帯をちらつかせて米国を揺さぶっている。ロシアは北朝鮮という切り札で米国を刺激する一方、中国を引き込もうとしている。北朝鮮は今や、米中ロの三角関係を揺るがす「独立変数」として登場している。

 しかし、韓国と尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権はいまだに北朝鮮を、4年前のいじめられた「乙」としかみていない。

チョン・ウィギル|国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「親日植民地史観」と批判さ... | トップ | 奨学金の支給も行われる。バ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

朝鮮を知ろう。」カテゴリの最新記事