えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

祭りの七日:いとしみあった 人々のために

2010年03月01日 | 雑記
あの時あなた 来てました……
だから声、かけて あげましょね

「上海バンスキング」の冒頭は軽快ならっぱと弾むベースで始まる。
たん、たん、たん、と音がステップを踏むように上がる。
華やかな舞台のように踊りだした演奏はそれが当然であるかのように、
吉田日出子の声に主旋律への道を譲った。

ウェルカム上海 ウェルカム上海
朝には消える 思い出の上海

恋は燃え 愛のときめき
冒険も また熱い涙

ああ……夢が 多すぎる

苦い 葉巻の 煙のように 
幻の ウィ・マダム 懐かしき上海!!!

結婚式の花束のように、いとおしみながらも明るく放り投げられた声を
観客は拍手とともに受け止める。吉田日出子が一礼して去ると、
またらっぱがぶかぶかと足踏みをはじめた。

いつかあなた 来るでしょう
だから声 かけて あげましょね

ウェルカム上海 ウェルカム上海
いつか見たような 忘れた上海

愛は消え 血は凍り
躍る心も過ぎたとき

ああ……夢が 多すぎる

どこか遠くを見つめるように息がそっと吐かれる。ほんの少ししめっぽい吐息を
振り払って、ベースがずかずかと歩いてくる。

苦い 夜明けの 朝もやのように
幻の ウィ・ムシュー! 懐かしき上海!

最後にカーテンコールの大きな一礼をして、歌はいさぎよく曲から去ってゆく。
深呼吸して最後の一息をらっぱがベースが吐いて、曲が終わる。
はじまりのこの曲は、どこも同じだ。

明日は舞台を観に行く。

とりあえず明日は、吉田日出子の舞台を見ることなく彼女の曲が好きだった
祖父に感謝して行きたい。

――愛(いと)しみあった人々のために、
  見知らぬ人々のために、
  よみがえれ!「上海バンスキング」
 (串田和美)
コメント
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