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「原発のウソ」

2011-06-18 | つぶやき
という本を読んだ。著者は京都大学原子炉実験所の小出助教。タイトルを見ても所謂御用学者でないことは明らかだが、原発や放射能汚染問題に関心がある人にとって、大変得ることが多い書籍だ。これを読んで尚、原発を推進したいと思う人は殆どいないのではないだろうか。●興味ある内容をいくつか紹介する。(1)汚染レベルが基準以下だから安全ということは決してない。被爆のリスクは低線量に至るまで直線的に存在し続け、安全というしきい値はない(直線、しきい値なしモデルと呼ばれるそうだ)米国が広島・長崎の被爆者を対象に半世紀にわたり調査を進めた結果、年間50ミリシーベルトの被爆でもがんや白血病になる確率が高くなることが統計的に明らかになったそうだ。(2)放射線被爆による死亡率は若い人ほど高くなる。理由は放射線の人体への影響は遺伝子を破壊することであり、若い人程、細胞分裂が盛んだからだ。平均は30歳ぐらいで、0歳児は平均の3.9倍、55歳では1/76という。(3)原発のコストは安くない。立命館大学の大島教授が電力会社の有価証券報告書を調査した結果、実際の1kWh当たりのコストは、水力3.98円、火力9.90円、原子力10.68、原子力+揚水12.23円と、火力発電より高いそうだ。安いというのは、核廃棄物再処理費用や開発や立地に投入される国の財政支出などを含めていないからだ。(4)電力会社は原発を造れば造るほど儲かる仕組みになっている。電気料金を決める際に、資産の一定の割合を自動的に利潤として上乗せしてよいことが電気事業法で認められており、建設費が膨大な原発は資産の増大に寄与し、収入が増えることになる。(5)原発はCO2を出さずクリーンというのもウソ。実際はウランを採掘してから原子炉で使える燃料にするまで(精錬、濃縮、加工)に大量のCO2を排出している。JARO(日本広告審査機構)は2008年11月に「”発電”の際にCO2を出さないことだけを限定的に捉えて『クリーン』と表現すべきではないと考える」との裁定を下したそうだが、JAROは社団法人で強制力を持っていないため、政府と電力会社はその裁定を無視して宣伝を続けてきたそうだ。さらに、原発は原子炉で発生した熱の1/3が電力になり、残りの2/3は海を暖めているそうだ。標準的な100万kWの原発で、1秒間に70トンの温度が7度高い海水を海に捨てているという。これは青森県の岩木川の水量に匹敵するそうだ。(6)日本の原子力政策は破たんしている。高速増殖炉が実現する前提で使用済み核燃料の再処理をイギリス、フランスに委託し、既に45トンものプルトニウム(長崎型原爆4000発相当)を溜めこんでしまった。その始末のために、普通の原子炉でMOX燃料(ウランとプルトニウムの混合燃料)を燃やす、危険性が増大することになるプルサーマル運転を余儀なくされている。(福島第1原発3号機がプルサーマル)「もんじゅ」に象徴されるように高速増殖炉の実現の見通しが付かない状況にもかかわらず、青森県六ケ所村に使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出す再処理工場の計画を進めており、既に原発100年分の使用済み核燃料が溜めこまれているそうだ。しかも、再処理工場が環境に放出する放射能の量は格段に多く、原発が1年で放出する量を1日で出してしまうという。(再処理工場は原子炉等規制法の濃度規制外という)しかも、濃度を薄める技術はあるにもかかわらず、費用がかかるからやらないという。(7)原発を止めても困らない。原発の発電量は全体の30%を占めるというが、実際は原発の設備利用率を上げて、火力を休ませているだけで、ピーク時でも、火力と水力で賄える電力の合計以上になったことは殆どないという。(8)明確な答えがない放射性廃棄物の処分問題。廃炉をどのように管理するか、300年監視を続けるという低レベル放射性廃棄物、100万年の管理が必要な高レベル放射性廃棄物(再処理の廃棄物)。未来の子孫に負債を押しつけることになる。