量子力学の基本原理である「ハイゼンベルクの不確定性原理」が常には成立しないとする実験結果をウィーン工科大と名古屋大の研究チームが纏めたそうだ。●不確定性原理は、1927年にドイツのハイゼンベルクが提唱(32年にノーベル物理学賞受賞)したもので、微小粒子を測定する際に、位置の測定誤差と運動量(速度×質量)の測定誤差の積はプランク定数/4πより小さくはできないというもの。測定の際に光のエネルギーが粒子に影響を与えるからと説明される。●同工科大の長谷川准教授らは、中性子の2つのスピン(位置と速度に相当)を不確定性原理の下限以下の誤差での測定に成功したという。また、共同研究者の小澤名古屋大教授は2003年に不確定性原理の不成立を別の数式(小澤の不等式)で主張してきたそうだ。今回それが実験で実証されたという。 ⇒ 1/16読売新聞
【1/22加筆】
量子力学の不確定性原理には実は2つあるのだ。1つは、量子の世界の本質的なゆらぎを数式化したもので、これは米国の物理学者ケナードの不等式と呼ばれる。 もう一つが、量子の測定誤差を数式化したハイゼンベルクの不等式だ。式の形は、「誤差」と「ゆらぎ」の言葉が違うだけで全く同じなのだ。一般者向けの量子力学の解説本では後者しか出てこないような気がする。従って、それが、量子力学の本質的なゆらぎも表していると誤解している人も多いと思われる。今回、修正が必要なことが実証されたのは、測定誤差に関するもので、本質的なゆらぎを表す数式に誤りがあった訳ではない。今までは誤解していても数式が同じなので問題なかったとも言えるが、今後はそのような訳にはいかなくなった。●小澤の不等式の考え方は、既に、重力波の検出方法に使われているそうだ。超新星爆発による重力波の到来で物の長さは1mあたり6億分の1mm程変わるそうだ。この測定を狙う干渉計型という観測装置は構造が単純で望ましいが、ハイゼンベルクの不等式によると原理的に捉えられないらしい。しかし、小澤の不等式によれば、観測可能であり、岐阜県飛騨市で20日から建設が始まった日本の大型低温重力波望遠鏡も、この方式を採用しているという。 ⇒ 1/22読売新聞
今まで出版されている膨大な数の量子力学に関する本の内容修正はどうするのだろうか?