【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

初球打ち

2011-11-16 18:48:13 | Weblog

 結果がアウトなら「淡白な打撃」と評論家に悪口を言われますが、結果がヒットなら「積極的な打撃」と褒められます。だけど問題は「何球目を打つか」ではなくて「好球を打つかどうか」では?

【ただいま読書中】『また、やっちまった!』野浪まこと 著、 ジュリアン、2011年、1300円(税別)

 「男心がわからない」女性のために、「男が本音で男心について語る本」です。「男だから男心がわかる」のだそうですが、著者にわかるのは「自分」のことではないのかな?なんて思いながらも読んでみましょう。
 男が語る「結婚したい女」とかを気にしている女性がこの世にたくさんいるそうです。しかし、独身男の「結婚したい女像」なんか、まともに取り合うな、と著者は主張します。それはそうですね。離婚を繰り返す人がいる、ということは、結婚を経験してもそこからきちんと学べない人がいるわけで、まして結婚生活を経験したことがない人間が結婚生活について何を語っても、それは妄想の域を出ないのですから。ですから「乙女の勘違い」で「独身男の理想通りの女」を演じても、そこに「理想通りの幸せ」が待っていてくれるとは限りません、というか、待っていない確率の方が高いのです。男のたわごとには一応耳は貸すにしても、それに囚われないことを著者は勧めています。
 「もてない人」がある日突然もてるようになることは、ありません(著者はきっぱり断言します)。そこで著者が勧めるのは「路線変更」。学生だったら進学や転校で「キャラ変更」ができますが社会人だとそれは無理。一つのコミュニティでキャラを固定されたらそれを変更するのは困難です。だったら「コミュニティ」の方を変更してしまえばよい。会社を辞めるのではなくて、会社“以外”のコミュニティへの参加です。それも「自分の良い部分」が出やすいところへ。
 こういった物理的な「フィールド拡張」以外に、「心理的なフィールド拡張」もあります。とにかくいろいろつきあってみて経験を積む。それによって自分の“ストライクゾーン”さらには“得意球のコース”を絞り込む。他人から見たら“悪球”でも、そこが自分の得意コースなら自信を持ってバットを振ればよいのです(“打った”結果がヒットになるかどうかはわかりませんが、少なくとも見逃し三振よりはマシでしょう)。そして、踏ん切りがつかずにグズグズしている男を絡め取ってしまうのです。(男はグズグズするものだからこそ、昔は社会的に「男は結婚して一人前」ということばとか「仲人業」なんて人たちが男の尻に火をつけていたわけです。そういった社会的な動きがなくなってしまったので男の“本性”が目立っているわけ)
 「恋愛市場」で一番“戦闘力”を持っているのは、実は若い女性です。ほとんどの世代の男のターゲットとされていて“経験”も豊富。対して若い男は経験も財力も成熟度も不足しています。見事にアンバランスです。ただ、彼女の髪型の変化にも気がつかない男でも、「上司」に気を使ったりゴマをすることもできます。だったら彼女の方が彼の「(良き)上司」になる、という手もあります。
 「男の浮気性」とか「勝負下着」とか「26歳処女」など、ちゃらちゃらとした口調で「男と女のすれ違い」についていろいろ書いてありますが(そして、その“解決法”がまた軽い口調での一見おふざけのものですが)、その根底にあるのは「もっとコミュニケーションをしろよ」という主張です。男と女が(あるいは、男と男、女と女、も)自分の思い込みの世界にだけ生きるのではなくて、そこから半歩でも踏み出して“相手の世界”にも触れてみようよ、というのが著者の主張でしょう。軽薄な作りにしてある本ですが、中身はきわめて真っ当です。私には楽しめましたが、真っ当なものが真っ当な姿では“売れ”ないというのは、これはこれで困った風潮だなあ、なんて思うのは私がもう古くさい人間になってしまったからかもしれません。