足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No.1246 ~ ハートカメムシ の遍歴 ~

2014年06月21日 | 昆虫

観 察 月 日  2014年 6月 15日 晴 27℃

観 察 場 所  厚木市 七沢 (自然環境保全センター)

大山の山並みに雲が湧く 夏も間近だ。

この頃、ミズキの葉裏を見ると。

卵を抱えているエサキモンキツノカメムシがいる。

私は”ハートカメムシ”と呼んでしまう。

こんなにも沢山の卵を、幼虫になるまで抱えて、守って。だから背面にハートマークがあるのだろう。

”写真集 昆虫の生態” モンキツノカメムシのページ

 20年程前、自然観察に携わった頃、厚木市の林道を大人や

子供達と良く歩いた。

 6月にはミズキの実が緑に育ち始め、そよ風に揺すられる白い

葉裏には、エサキモンキツノカメムシが産卵のために集まって

いた。

 「葉裏にカメムシがいるでしょう。背中にハート印が付いている

のが見えますか」と大人や子供に話か掛けると、みんなは頷いた。

その内の一人が「カメムシのお腹の下に卵があるよ」「子供もいる

よ」「お母さんが子供を守っているみたいだ」 いつの間にかカメム

シを巡って話が弾み、生き物の不思議さや自然を感じる心が芽生

え始めるのであった。

 しばらくして落ち着いた頃、「このカメムシの名前は?」と一人が

質問、私はこの時「ハートカメムシと言うんだ」と答えた。質問した子

は「だから背中にハートのマークが付いているんだね」と。今でもこ

のカメムシに出会うと、私は「ハートカメムシ」と呼んでいる。

 私とハートカメムシとの出会いを、私の本棚から探って見ると、その

遍歴が見えて来る。

 私が子供の頃からボロボロになる程めくった本がある。1933年発行、

“原色千種 昆虫図譜(正・続)”でカラー印刷の本だ。そこには”モンキ

ツノガメ・ 背面ニ黄色ノ大紋ヲ装フ “とある。私も子供の頃は”モンキツ

ノガメ“と呼んでいたのだろう。

 青春時代はネット(採集網)片手に名前を追う事から、カメラを通して昆虫の暮ら

しの追求に変わった。そのバイブル的存在の本が、1951年発行“写真集

 昆虫の生態 田村 栄”で、ここでは“モンキツノカメムシ”になっていた。

そして、1948年6月教育研究所構内(現自然教育園)で長谷川仁氏が

産卵・哺育を発見した、と書かれている。

 その後、1965年発行“原色昆虫大図鑑”には“モンキツノカメムシ”と

同一種されていた”エサキモンキツノカメムシ “が種として独立し収録さ

れている。