足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No.1047 ~ 再び ギフチョウ の住む山へ ~

2012年04月23日 | 昆虫

山道を行くと

ギフチョウが飛び出し 落ち葉の上に止まると姿が消える

黒と黄色のだんだら模様が不思議に溶け込む

山道の傍にカントウカンアオイの株が

よく見ると ギフチョウの卵が

真珠を連想させる

ギフチョウよ ありがとう

観 察 月 日  2012年 4月 19日 曇 15℃~17℃

観 察 場 所  相模原市 緑区

 雲が低く、夕方から雨との予報だ。さすがにギフチョウを目当てに

来る人は居ないらしく、登山口は入山者の気配はなかった。

 「ギフチョウだけが目的ではないから、動植物を見ながらゆっくりと

歩けるね」と語り合ったその時、後ろから足音が追って来た。風貌か

らして地元の年輩の人だ。私達の横を追い越しながら、「今日はギ

フチョウ飛ぶかね」と話し掛け「ホラ、卵があったよ」と、カントウカン

アオイの葉を返して見せた。

 その後再び出会った時は、“ギフチョウ談義”をひとしきりされ、初

めての同行者は感心しながら聴きいった。ともあれ、地元の人の話

はじっくり聞くのが作法なのだ。

 幸運にも雲が切れ陽が射すと、気温も上がりギフチョウが飛び出し

た。♂は落ち着きなく飛ぶが、♀はゆっくりと飛び林床の落ち葉の上

に翅を開いて止まる。すると、黒と黄色の華やかなだんだら模様の

翅が不思議にも落ち葉に溶け込んで、姿が消えた。春先は気温が

低い。体温を上げる行動と翅の模様が合致しているのだ。

 その後、カンアオイの葉裏に産みつけられた卵塊も観察する事

が出来た。

 ギフチョウを守る会の人々に感謝しつつ下山の途についた。

 


No.1046 ~ 見つからなかった フデリンドウ ~

2012年04月22日 | 植物

若芽が美しい八重桜

頭高山山頂

ソメイヨシノは満開

やっと見つけたフデリンドウ

次に見つけた

あったのは 三株だった

どの株も落ち葉に埋もれた状態

落ち葉が厚く貯まる

観 察 月 日  2012年 4月 16日 晴 20℃

観 察 場 所  秦野市 千村 頭高山

 「フデリンドウの結実を見て見たい」私の顔を見るとFさんが呟くのだ。

 何年か前、八重桜の塩漬けで知られる秦野市千村の頭高山へ行っ

た折、フデリンドウが足の踏み場もない程の花を開いていたからだ。

 今日は晴天、一日空きなので一人頭高山へ出かけてみた。

千村の八重桜の蕾は膨らんでいたが開花には早かった。若葉が緋

色に煙る八重桜の林に見とれて頭高山の山頂に着く。人影もなくひっ

そりとしている。

先ずは記憶を頼りにフデリンドウの集まりを探すが、全く見つからない。

記憶違いかと範囲を広げるがそれでも見つからなかった。花の時期は

いい筈だし、陽が出ているので開花は間違いなく、瑠璃色の花が目に

付かぬ訳がない。コーヒーブレークにする。目の前に咲くソメイヨシノの

向こうに松田の街と川が光った。          

再びフデリンドウ探しに入る。やっとの事で花を一輪付けたひと株を見

付けた。それは、厚く積もった落ち葉と落ち葉の間から、やっと花が出

たものであった。後二株見付ける事が出来たが、落ち葉の隙間から辛

うじて飛び出たものであった。ここでは、自然に落ち葉の吹き溜まりが

出来たのであろうが、落ち葉に埋もれた背の低い植物は消え、抜け出

る事が出来る植物だけが繁茂する世界に変わって行くのである。

「フデリンドウの結実を見たい」と言うFさんの思いは、叶えられるので

あろうか。

 

 


No.1045 ~ アズマヒキガエル の 産卵 ~

2012年04月18日 | 野生動物

アズマヒキガエルの抱接

ヤマアカガエルのオタマジャクシが集まってきた

産卵が始まった

卵嚢が産み出され長くなる

卵は3角おにぎり型 ひも状の卵嚢は2本

観 察 月 日  2012年 4月 13日 晴 20℃

観 察 場 所  山北町 玄倉 (丹沢湖ビジターセンター)

 「裏の池へ行ったら、ヒキガエルがいましたが」とYさんが呼びに来た。

 肌色のきれいな雌の背に、前足で確りと雌を抱え込んだ土色の雄が

乗っていた。後から来た誰かが「交尾しているんだ」と呟いた。

 カエルの場合、雌が水中へ産卵すると、雄が精子を掛け受精する仕

組みなので、交尾ではなく抱接と言う。

 抱接するヒキガエルの総排泄口付近に、先月孵化したヤマアカガエ

ルのオタマジャクシが集まってきた。ヒキガエルの産卵を感じとったらしい。

 やがて、3角おにぎり型の卵がぎっしりと詰まった、5㎜程の寒天質の

ひもが水中に伸びて来た。雄が後足を小刻みに動かす。池の底の落ち

葉と土が掻き回され水が濁った。精子を放出し卵は受精したのだ。卵は

左右の卵巣から同時に生み出されるので、2本並びに伸びてくる。

 ここでは見られなかったが、時間が経過すると卵を包んだひもは、水を

含んで25ミリの太さに膨れ、卵も球形になる。

 ひも状の卵嚢は、2本合わせて10m以上にもなり、卵の数は1500~

8000個以上にもなる。6月頃には子ガエルになり野山での暮らしが始

まるが、この内何匹が親ガエルとなって池に戻って来れるのだろうか。

 ヒキガエルは、大量の卵を産み、自分の遺伝子を繋ごうとしているのだ。

 

 


No.1044 ~ 今年の ギフチョウ は! ~

2012年04月17日 | 昆虫

集落のサクラのつぼみは硬く、山はまだ芽吹きも浅い

ギフチョウが登山道で日光浴

ヒナスミレに吸蜜に飛来

タチツボスミレに次々にやってくる

飛翔するギフチョウ

口吻を伸ばしてタチツボスミレの花の奥、距に貯まる蜜を吸う

地上に止まっても蜜を吸う

そして、次々にスミレを訪れる

観 察 月 日  2012年 4月 10日 晴 20℃

観 察 場 所  相模原市 緑区

「今年はサクラの開花が遅れているし、他の生物も地球温暖化の

影響を受けているのでしょうね」と環境学習の出前授業をしている

と言う人から聞かれた。「さあー、どうでしょうか」としか私には答え

られなかった。

 今年も、3月末に山梨県の山に自然のカタクリを見に行ったが

、昨年より早めに咲いていた。4月に入りギフチョウを見に行った。

集落のサクラの蕾は堅かったが、チョウは飛び交っていた。

 タチツボスミレ、ヒメスミレの咲く山道にしばらく座っていると、次々

と吸蜜に飛来しその回数は、昨年と比べて大分多いと思われた。

オスの個体は尾状突起が欠けていたり、翅の傷みが目に付き羽化

してから時間が経っていると見えた。

 生き物は、季節が冬から春へと向かう中で、種による発育限界温度

を越えた温度を毎日足し合わせ、有効積算温量によりチョウが羽化

したり、花を開いたりと、春を数えている。

 山道には、ヒトリシズカ、センボンヤリ、シュンラン、スミレ類、・・・

例年と変わらず花を開いていた。

 それはともかく、地球温暖化の現象は、過度な豊かさを追求した

我々人間の責任だ。“今の暮らしでいいのか“原点から考え直す

時なのであろう。

 

 


No.1043 ~ ハナネコノメ から トウゴクサバノオ ~  

2012年04月12日 | 植物

大日堂のソメイヨシノ

沢の様子

ハナネコノメは花盛りのように見える

雌蕊の根元子房が膨らんでいる

トウゴクサバノオの群落

直径8ミリ程の花

観 察 月 日  2012年 4月 7日 晴 15℃

観 察 場 所  秦野市 蓑毛

 秦野市街のサクラは咲いていたが、蓑毛の大日堂のソメイヨシノ

は蕾で花に会えず残念だった。

 この前、ハナネコノメを写した沢へ入ってみた。あれから、10日

も過ぎているが、景色としての眺めでは花は咲いている。だが、

目を花に近付けて見ると、白い花弁状の蕚片は確りと残っていて、

花盛りを思わせる。しかし、雄蕊の約から溢れ出ていた赤褐色の

花粉はすっかり落ちている。この状態では“花は咲き終わった”と

言う方が正解であろう。

 二つに分かれている雌蕊の元は膨らみ花の中心を埋めている。

種子を充実する段階に入ったのであろう。

 沢の両側は落ち葉の堆積場になっていて、落ち葉の間から10㎝

程の花柄が伸び、その先にクリーム色の小さな花を付けている。

沢の景色は、トウゴクサバノオにバトンタッチしたのだ。

 可憐なはなびらに見えるのは蕚片で、蕚が花弁の役まで果たし

ている形だ。では“花弁はどうした”と言うと黄金色に見えるそれで、

蜜腺の役を引き受けている。キンポウゲ科の特徴の一つで、昆虫

に対する呼び掛けなのだ。サバノオ=鯖の尾とは不思議な名前だ

が、果実になった頃再び訪れて見ると“なるほど”と納得させられる。