足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No.963  ~ ノアザミ に来る チョウ ~

2011年05月28日 | 植物

林道に沿って咲くノアザミ

羽を小刻みに羽ばたきながら吸蜜するカラスアゲハ

筒状花の奥に蜜があるので、ストローが長くないと吸えない

紫色の筒状のものは雄蕊の約で、刺激を受けると中から花粉が出てくる。

約の花粉が無くなると、雌蕊の柱頭が出てきて受粉態勢だ。

モンシロチョウのストローの長さが吸蜜の限界、頭を花の中に無理に突っ込む。

ストローの短いチョウは吸蜜できない

 

ノアザミとアゲハチョウの仲間はどんな関係。  (カラスアゲハ)

 

日  2011 525 晴 27

所  伊勢原市 子易 (仁ケ久保林道)

 

 林道に沿った緑の草原にノアザミが点々と続き、林道の

木々に沿って飛ぶカラスアゲハが、花に立ち寄って行く。

ノアザミの花は、赤紫色の一個の花の様に見えるが、花弁

を持たない小さな筒状花の集まりだ。

 アゲハチョウの仲間がノアザミの頭花に止まると、羽を

小刻みに動かし細い足で体重を支え、一個一個の筒状花の

奥にある蜜を吸う。

花の中心から紫色の筒状のものが出ていれば、それは

蕊の約で中には花粉が詰まっている。アゲハチョウが頭

花に止まり、足やストローで刺激すると筒状の約は動き、

中から白い花粉の粒が飛びだし、足やストロー等に花粉

が付き、別の花に運ぶ事になる。

筒状花の雄蕊の約に花粉が出尽くすと、今度は雌蕊が成

長し柱頭が現れ、アゲハチョウが体に付けて来た花粉を

受け取る仕組みだ。

ノアザミは、蜜を花の深い場に置いてストローの短いチ

ョウをカットし、アゲハチョウに花粉の宅配を指示し、

受粉の確実性を高める戦術をとっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


  No.962  ~ 田んぼで採餌 オオソリハシシギ ~

2011年05月22日 | 野鳥

ヤマボウシの花は、空からでないと見えない

花は白色、それが赤く変わるのは何故?

ランプシェード の雨が降る

畦を探る オオソリハシシギ

田の中で餌を取る

 

日  2011 520 晴 30

所  横浜市 港南区 舞丘市民の森

 

 舞丘市民の森には初夏の風が吹いていた。

 林に入るとヤマボウシが空へ向かって花を開き、エゴノキは、

ミニチュワ・ランプシェードの雨を降らす。

 ニシキウツギ、スイカズラ、ノイバラ、ガマズミは林縁を飾

り、初夏の花は白が目立つ。

 林を抜け谷戸田へ出る。水は張られてはいるが、田植え前だ。

谷戸田を抜ける小道を行くと、前方に長いレンズにカメラを三

脚に乗せたカメラマンが数人しゃがみ込み道を塞いでいる。

“鳥屋さんだな”と独り言を言って田の畔に目をやると、オオ

ソリハシシギが一羽、すぐ目の前で畔に反り上がった長い嘴を

突き刺し突き刺し餌を探している。

 オオソリハシシギはシベリアへ渡る途中立ち寄った旅鳥だ。

羽の色が薄く若鳥なのだろう。

 田の中程に移動すると、水中の泥の中へ嘴を入れ餌を探し始

めた。嘴の先端にセンサーが付いているのか、すぐに餌を見付

けだし、嘴ではさむと水中で2~3回振り洗いをする。と、次

の瞬間呑込まれてしまった。

「あの長い嘴をどう登っていったのだろう」一緒にいた人が言

葉を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


No.961  ~ キンラン が さらわれた ~

2011年05月20日 | 植物

林床が明るい雑木林になった。これからどんな植物が出るか楽しみだ。

林のあちらこちらで キンラン が 花をつけた

市民の森のキンラン

日  2011 515 晴 24

所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

 

「あら!キンランが咲いている」 

「去年は、見なかったよね」 53日の事であった。

 ここは、タケやササの類が藪状の雑木林であった。それが

下草刈りの手入れをし、風通りがよい明るい林になったのだ。

 ところが、「あれ!キンランがない」5月15日の事で、

心ない誰かに取られてしまったのである。

 キンランはめずらしい植物だと言われたり、ランの名に引

かれ、ほしくなるのでは困りものだ。

 子供の頃に読んだ自然の本に、雑木林にキンランが咲いて

いる挿絵があった記憶がある。それ以来雑木林では見ている

が、深い山中で見た記憶はない。

 ランの種は、生命を広く分散のたくらみから、粉のように

細かくし、そのため発芽の養分を持っていない。地上に落ち

た種は、土壌のラン菌の助けがなければ発芽生育出来ない。

人が雑木林を作った頃からラン菌と共にキンランも生育の地

に選んだのであろう。と考えれば人の歴史と共に歩んで来た

身近な植物だろう。近頃よく手入れをされた雑木林を見掛け

る。そこでは、キンランの大株を見るのも珍しくなくなった。

 手入れをされた雑木林に、キンランはよく似合うのである。

 

 


No.960  ~ カヤラン の 季節 ~

2011年05月17日 | 植物

カヤランの咲く山麓

今年は、残った小株が花を付けた

もう少し 近寄って見ると

昨年 取られてしまった株。今年はこの花が見られず 残念!(2010年5月9日撮影)

日  2011 5、8 晴 18℃

所  山北町 玄倉

 

「カヤランを双眼鏡で見て来たが、根元に株が落ちていた。

戻せないので拾ってきたがなんとか生かしてほしい」二人は

自然観察に満足した顔を残して返っていった。

 私は、明日は西丹沢に行く予定なのである。「カヤランが

咲く季節なんだ」と呟いた。

 西丹沢では、スギの大木の梢に大株のカヤランを見ている

が、ここ数年は小株だがウワミズザクラの大木の幹で、カヤ

ランの花が咲くのを楽しみにしている。今年も心配顔で行く

と、小株ながら花を付けていて“ほっと”した。心配と言う

のは、心ない人に取られてしまうからだ。昨年

沢山の花を付けた株は取られてしまった。

 ラン植物は胚乳を持たない煙の様に細かい種子で、風とい

うよりも空気によって運ばれる。発芽するときは共生するラ

ン菌から栄養を受けないと出来ない。ここのウワミズザクラ

の幹にはラン菌が着生している様で、小さな苗が次々と育っ

ている。カヤランは、取られてもピンチヒッター登場の様に

、次々と花を付け懸命に命を繋いでいるのだ。

 取りたくなる人よ!その手を止め、ランの姿を、心の目を

開いて良く見てほしいのである。

 

 

 

 


No.959  ~ キアシナガバチ の 知恵 ~

2011年05月12日 | 昆虫

蛇口の周りをアシナガバチが飛び回る。 何故?

「おい ハチ君、その水飲めないよ!」

用があるのは板なのか!

板をかじっているんだ

板の繊維で何するの?

6月のハチの巣。 まだ女王蜂一匹が活躍中!(2010、6、13)

日  201158 晴 18

所  山北町 玄倉 (丹沢湖ビジターセンター)

 

「あれ?アシナガバチが!」と独り言が出たのは、蛇口の

周囲をハチが旋回していたからだ。

 センターの前庭には水道があり、蛇口に“のめません、

てあらい用”の木札が下げてある。

 「ハチ君、その水飲めないよ」とつい声をかけ、ハチの

行動を見守ると、ハチは蛇口が目的ではなく、ゆらゆら揺

れる木札へ見事着陸した。

「成る程」と私は呟き、ハチのねらいが読めたのである。

 ハチは板に止まると表面を強力な顎でかじりながら、下

へ下へと下がって行く。そこには濡れた跡が付きその長さ

約4㎝。板の上には数多くの跡が印されている。板の繊維

が口に溜まるとハチは飛び立ち、急上昇し木立を越えて見

えなくなった。再び板へ戻って来る時間を計ってみると約

4分、往復の道のりと咬み取った繊維と蝋物質で巣作りに

掛る時間だ。

 秋には大家族になるハチの巣も、春先には0からの出発。

1部屋、2部屋、3・・・と巣を増やさなければならない。

今働いているのは、厳しかった冬を越してきた1匹の女王蜂、

その懸命な姿なのである。