足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No. 1508  ~ ミヤマアカネ他 ~

2017年07月31日 | 昆虫

観 察 月 日   2017.7.25.曇 27℃

観 察 場 所   松田町 寄沢

 

「雨山峠までの登山道は荒れていましたが、それだけに、植物等

自然が豊かで良かったですよ。今度一緒に行きましょう」とRさん

が話したのは、もう随分前の事であった。

 今日は寄に来ていて、当時の事を思い出した。

 「登山道入り口までは、寄沢の流れに沿ったり渡ったり、途中キ

ャンプ場があったり、明るく開けた草原があったりした記憶が・・・

」とRさんが話したので、歩くコースは決まった。

 舗装された林道を進む。右は急な斜面が山へ登り、太いスギの

植林地で暗く、左は狭い混合林で沢へと降りるが、道は無い。「以

前はこんな林道は、無かった様に思う」とRさん。随分前の話だから、

人が歩く道も変わったのだろう。それでも、林道を詰めると、先程ま

で下を流れていた寄沢に突き当たった。大小の岩石が積み重なる

中を流れ、水量豊かだ。すぐ右には“雨山峠へ”の道標があり急登

だ。

 ここから引き返すと、草原の広場があった。コアカソの葉に、ホソ

バセセリが休む。目の前を飛び立ったのはミヤマアカネだ。1匹か

と思うと歩く度に何匹も飛び立つ。ミヤマアカネとは“深山にいるア

カトンボ”の意で付けたのであろうが、幼虫は田や緩い小川が棲息

域だ。

若い頃読んだ本には“ミヤマではなく、精々スソノアカネと言うところ

だ”とあった。成熟すると♂は深紅になるが、今はどの個体も♀の橙

色で区別が出来ない。餌の豊富な草原へ飛来しているのは未成熟

 個体で、♀♂の体色に差別を付けない、自然の知恵なのである。

林道を詰めると、下を流れていた筈の 寄沢に突き当たった。

ここで引き返す。 草原の広場があった。

ホソバセセリ。

ミヤマアカネが飛びたった。

歩くと 何匹も飛び立つ。

★ 餌の 小虫のいる草原へ来ているのは 未成熟個体だ。 体色では♀♂差別がない。

 


No. 1507  ~ 樹木園の片隅で ~

2017年07月28日 | 昆虫

観 察 月 日   2017.7.23.曇 27℃

観 察 場 所   厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

 ヤマボウシが花弁と誤解される白い苞を、一面に開いていたのは

ついこの前のように思えた。が、その後の様子はすっかり忘れてい

た。思い出したら吉日と、ヤマボウシを訪ねてみると、成長した緑の

玉を伸びた花柄が突き出していた。

 隣の似た樹形はミズキであった。ミズキと言えば、先月見た人を

感動させたエサキモンキツノカメムシの♀親虫が、卵を守っていたそ

のシーンを思い出した。

 あれから1ヶ月が過ぎ、卵から子虫が孵り、やがて子虫は♀親虫

を離れ、ミズキの枝を登って行く。そして、ミズキの実の汁を・・の

“つぶやき”は聞き取れても、そのシーンに出会うのは簡単な事で

はない。しかし、それに挑戦するのが“自然観察者”だ。目の届く限

りを探して見たが、この日は出会えなかった。だが、1枚の葉上にカ

メムシの4令?幼虫の集団が目に止まった。体形や背面の模様か

ら、卵を守る”ツノカメムシ“の仲間である事は解った。その時は、

葉を揺すっても動かず、仮眠していた様だが、集団でミズキの実を

吸汁しているのであろう。

 樹木園を歩くと小粒の実が落ちていて、見上げると若緑の葉の間

から、あずき色の実が覗いていた。再び視線を小粒の実に戻し、落

ち葉の上に腹ばいになりカメラで接近すると、実の横に漆色にツチカ

メムシが現われ吸汁。落ち葉や土の中にいるので出会いは少ない

虫だ。画面を楽しんでいると、2mm程のイエヒメアリが集まって来

た。

すっかり忘れていた ヤマボウシ。

隣に 樹形の似たミズキが。

”ツノカメムシ”の仲間の幼虫の集団 を発見。

クラカケノキ だ

小豆色の実 にカメラが大接近。

ツチカメムシとイエヒメアリが 大接近


No. 1506 ~ 七月の七沢 ~ 

2017年07月27日 | 昆虫

観 察 月 日   2017.7.16.晴 28.5℃

観 察 場 所   厚木市 七沢 (県自然環境保全ヘンター)

 6月のミズキの葉裏では、沢山ものエサキモンキツノカメムシ♀が、

産卵した卵を抱え大事に守っていた様子を見る事が出来た。

 参加者の多くは「ハートカメムシが、背中にハートマークを付け、

守っていた。人間は学ばなくちゃー・・・」の様な感想が多かったが、

その中で、「カメムシは、食べたり、葉を丸めて家にしたりしないの

に、別にミズキで無くても良いのでは」と書かれた人がいた。

 もし、その疑問を直接言われたら、私は「来月私と一緒に見て見

ましょう」と答えたに違いない。すぐに言葉で説明する方が親切に

思われるかも知れないが、自然とはそう簡単なものではない。

 今月はそれを解決するのに絶好の機会だ。朝、先ずはミズキの

木立へ行ってみた。大きな木立の中、小さなカメムシの子虫を見

付けるのは容易な事ではない。でも、その努力が科学の醍醐味な

のだ。Rさんが果実の汁を吸っている子虫を見付け、私がカメラに

収める事が出来た。午後は雨でミズキには行けなかったが、写真

を見てどう感じるだろうか。

 体に泥を付けたニィニィゼミの抜け殻があった。カツラの木から

は鳴き声が聞こえるが羽化始めで少ない。「アレ!」と言われて足

元を見ると、前羽をクロヤマアリが運んでいる。風にあおられ、羽が

立ち上がったり、ひらひらしたり、ヨットの様だが、アリは放さない。

だがおかしい。まだ羽化始めだと言うのに、もう命を落としている。     

オニヤンマのヤゴもあって、いよいよ夏本番だ。

6月は 卵を守っている♀成虫を 何匹も見た。

解決には 今月がいい。

子虫が ミズキの果実の汁を吸っていた。

ニィニィゼミの抜け殻

まだ出始めなのに クロヤマアリが羽を引く・・・

オニヤンマのヤゴの抜け殻

★ いよいよ 夏本番だ!


No. 1505 ~ クロオオアリのかたまり ~ 

2017年07月20日 | 昆虫

観 察 月 日   2017.7.9.晴 31℃

観 察 場 所   山北町 玄倉

 ヤマユリの殆どは、まだ蕾であった。暑い日が続くので開花

は早いと思ったのに、雨量が半分以下だったので、それが原

因なのだろうか。

それでも、玄倉川を飛ぶヤマセミを双眼鏡で追ったり、お洒落

なトホシカメムシを見たりして、元ビジターの庭に戻って来た。

 さあ昼食にしようと、Sファミリーがベンチに付いたその時、急

に立ち上がりそわそわし出した。何かあったんだ。その様子を

見て、他の人達が速足でそこへ集まった。

 「ベンチの下に大きいアリが集まっていて、何かと思って」高

校生のKさんが指さした。

 私も地面に膝をついて覗き込むと、それはクロオオアリで、何

十匹かが団子状に盛り上がっている。その中心に何があるのか

、アリが覆い被さっていて見えない、想像もつかない。クロオオア

リの “つぶやき“ が私に聞こえてこない。そんな私の表情を見

てか、Uさんが突然塊りの中心に向かって、軽く息を吹き掛けた。

 すると、アリは驚き四方に散ると、中心に居た大きな女王アリが

現われた。女王アリを覆っていたのは、若い未熟な内勤のアリで

はなく、

巣から外へ出て、食糧を集め、外敵から守る役目をするベテラン

の働きアリであった。そこまでの “つぶやき“ は聞こえたが、そ

の先が解らない。巣内にアクシデントがあったのか、それとも何か

が?

 アリの研究者であったなら、不思議なクロオオアリの女王の行動

を、“つぶやき“と言う発見の旅に出たかもしれない。

殆どが 蕾だ。

やっと岩陰で ヤマユリの花を見つけて 記念撮影。

トホシカメムシ 今日は何匹も出会う。

ベンチに 大きなアリ が。

クロオオアリのかたまり 中心が見えない。

大きな女王アリが 現われた。

すぐに 女王アリを覆いはじめる。


No. 1504  ~ ヤモリのつぶやき ~

2017年07月19日 | 野生動物

観 察 月 日   2017.7.9.晴 31℃

観 察 場 所   山北町 玄倉

 「キャー」と声も出さず、半歩後退りしたRさんが目に写った。

だがそれ以前、何があったのか見ていないので私には解らない。

 最近は、“シャッターを切る前の光景が再現できる“と言う時間

の神を恐れないカメラがあるが、私の目にはそれが無い。見ると

Rさんは既に2m程移動してしゃがみ込み、何かを見ていた。

 聞くと、「ケヤキの幹の樹名板を返して見たら、ヤモリが飛び出

し、地面に落ちて走り出した」のだと言う。

 「ヤモリがいたよ!」と叫ぶと、仲間が集まって来た。ヤモリは落

ち葉と玉石の隙間に身を寄せ、体色を変化させ周囲に融け込ん

で見ずらい。捕まえようと言う人もいたが、ヤモリの体は柔らかく

傷つきやすく、尾に触れると尾を自切する心配があった。

 暗い樹名板の中から急に明るい地上に飛び出し、ヤモリは戸惑

いながら、何と “つぶやいた” だろう。

 光が強い時には、カメラなら円形のレンズ絞りが働き、入射光の

量を調節する。人間にも光彩の中央に円形の瞳孔があり、光量を

調節しているので暮していられる。

 では、ヤモリの目は? それがすごいのだ!

 先ずは瞼が無く、目全体を透明な鱗でカバーし、光彩は、縦にシ

ンメトリーに波型で、そこに小さな穴が4つ出来、カメラで言うピン

ホールレンズの役目をしているのだ。

 何はともあれ、その時写した私の写真をお見せしよう!

Rさんは、この樹名板を覗いたのだ。

ヤモリが飛び出した。 何処にいるのか解るかな! 体色をまわりに合わせてカモフラージ。

ここですよ!

ヤモリの ”ささやき” 聞こえますか!

すごい ヤモリの目の秘密 ご覧あれ!