観察月日 2018.4.12.晴 25℃
観察場所 清川村 宮が瀬
ダムに落ちる崖から立ち上がった高木の中「チョ チョ チョ・
ビィー」の囀りが聞こえた。南国から渡って来たばかりのセ
ンダイムシクイだ。
若い頃、この囀りを「鶴千代君・・」(ツルチヨギミー)と聞き
なす事を、先輩から教えられた。それ以来センダイムシクイ
の囀りを聞くと、「鶴千代君・・・」と頭の中を流れる。
今日では「焼酎一杯・グィー」と聞きなすとか、時代と言う
か、経済社会の流れであろうか。
すぐ頭上の枝から囀りが聞こえるが新緑の季節、若葉が
邪魔して姿が見えない。囀りを耳で追う事しばらく、柔らか
な葉の抜け穴に、姿を現した。
ウグイスの仲間だけあって、嘴を大きく開き、大声で囀る
のが見える。一声出しては休んだり、姿勢を変えたり、羽ず
くろいをしたり、忙しい。その割に、見上げている我々を気
にしない。
林道を飾るニガイチゴの白い小さな花に、ツマキチョウが
吸蜜にやって来る。♂は前羽の尖った先に付けた、黄色の
紅が美しい。
一歩先を行くRさんが、背を向けたまま「チョウが・・・!」と
小声で叫んで立ち止まった。覗き込むと、真新しい羽化した
ばかりのアオバセセリが、Rさんのシャツの袖口に止まり、触
角を下げ口吻を伸ばし小刻みに動いている。
今日は気温が高かった。Rさんは「汗は掻いていない」と言う
が、反応しているのだろう。長いレンズを抱えた熟年の男性が、
けげんな顔をしながら脇を通った。アオバセセリは即反応して
離れ、男性を追って飛び去って行った。
高木の茂みの中から 囀りが。
新緑の抜け穴に 姿が。
嘴を大きく開いて。
ニガイチゴ。
ツマキチョウ♂。
アオバセセリ。
食草のアワブキの新しい葉が開いていたので、アオバセセリ羽化の予感がした。
ヤマガラの囀りを頭上に聞きながら 帰途に就いた。