足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No.1340 ~ スミナガシ は 墨流し? ~

2015年07月31日 | 昆虫

観 察 月 日  2015.7. 24.晴 31℃

観 察 場 所  清川村 宮が瀬

「スミナガシでしょうか。橋の欄干にずっといて動かないんですよ」

皆に遅れて歩いていた私に、Rさんが教えてくれた。

 急いで行って見ると、白くペイントされた手摺の上にスミナガシが

止まっていた。

 チョウと言えば、美しい翅を持った昆虫で知られているが、スミナ

ガシの翅は、暗青色の地に白色の細かいがらを染め込み落ち着

いた感じだ。

 “墨流し”それは水面に墨を流し、その流れ模様を紙や布に染め

たもので、それを連想した誰かが“スミナガシ”と言う美しい名を付

けたのであろう。

 ところが、人による感じ方は違うもので、私が若い頃初めてスミナ

ガシに出会った時の印象は、子供の頃母親が着ていた“かすり”の着

物の柄が頭を過った。人によって、その生活経験に裏打ちされた印

象から、“墨流し”を連想したり、“かすり“に見えたりする。では肝心

な本人達昆虫や、捕食者である鳥にはどう見えているのだろう。

 我々人間には波長800ミリナノメートルの赤から始まって黄、緑、

青、菫まで400ミリナノメートルまでは可視出来るが、昆虫は波長

300ミリナノメートルまでの紫外線まで可視部があり、紫外線も特

殊な色として見えていると言われ、鳥に付いても、青~紫~紫外線

をまたぐ領域の視度は高くなっていると言われている。彼等は人間

と違う色覚で相手を、見ているのだ。

宮ヶ瀬ダムを周遊する林道を歩く。

「スミナガシですか。・・・・・」とRさんが・・・・。

間違いなく ”スミナガシ”が手すりに・・・・・・・・。 美しさは いろいろ・・・ 

昆虫仲間には、鳥には どう見えるのだろう?

こんなに近づいても、逃げようとしない。なぜ?

スミナガシにとって、ご馳走の鳥の糞があったのだ。

昆虫には、鳥には、それぞれの世界が・・・

* 自然は いろいろ。解っているつもりが 実は 解らない事でいっぱい。

 


No.1339 ~ 丹沢のヒメハナバチとツチスガリ ~

2015年07月20日 | 昆虫

観 察 月 日  2015.7. 12.晴 32℃

観 察 場 所  山北町 玄倉

 西丹沢自然教室行きのバスは、途中玄倉を経由して行く。登

山者の為のトイレがあり、その横の裸地に2~3㎜程の沢山の

巣穴が開けられていた。中には盛り上がったものもあり2種と

思われた。

 ここには、3月まで県の丹沢湖ビジターセンターあり、巣穴が

あったが、閉館で草が茂り裸地が消え、ここを選んだらしい。

 バスから降りた人を背に感じながら、膝と肘を土上に付きカメ

ラを構えて待つと、小さなヒメハナバチの仲間が、後肢に太くな

る程花粉を付け、腹部下にも全面花粉を付け現われた。巣穴群

の上を低く揺らいで飛ぶと「アツ」と言う間に巣穴へ入ってしまった。

 土中には、卵を産み、幼虫を育てる部屋があり、餌の花粉を蓄

積しているのだ。しばらくすると花粉を落とし軽くなったハチは穴か

ら飛び出し、いずれかへ飛んでいった。

 次にカメラが捕えたハチは、ヒメハナバチより体長が大きく、飛行

から巣穴に着陸したが、巣穴が小さいらしく、頭を入れかけたとこ

ろで停止した。やがて中に入って行ったが、この場所は木陰で薄暗

く、何があったのかは、解らなかった。

 後でモニターを見て私は息を飲んだ。巣穴の所で止まったのは 

ツチスガリの仲間で、本の知識では知っていた「ヒメハナバチ等を狩

りして巣に運び幼虫の餌に供する」狩りバチの種類であった。

 ヒメハナバチは花粉を集めて幼虫に与え、ツチスガリはヒメハナバ

チ等を狩りして幼虫に与え,自分の遺伝子を次へと繋ぐ。このハチ達

が同一範囲の地中に隣り合わせに営巣している。

 ここまで来るには、どの様な経過をたどって来たのだろうか。自然

は複雑な事をやり遂げるものだ。 

玄倉バス停 バスの左側がその場所だ。

巣穴の群落だ 運び出した土粒で盛り上がっているのもある。

ヒメハナバチの一種が 花粉を付けて戻って来た。

巣穴の近くに降りた。

後足と腹部に花粉を沢山付けて。

幼虫のえさに 花粉を運ぶ。

巣穴が小さいのか? 入れないで立ち止まる、 やや大きいハチがいたが。暗くて確認出来ない。

ツチスガリの一種で、狩したヒメハナバチを抱えていた。巣穴に入るのも大変そう!

                        * 自然は ずいぶん複雑なことをやるものだ!

 

 


No.1338 ~ 丹沢に咲く ヤマユリ ~

2015年07月16日 | 植物

観 察 月 日  2015.7. 12.晴 32℃

観 察 場 所  山北町 玄倉

丹沢湖ビジターセンターの事業として長年続けてきた“自然

観察ガイドウォーク”。閉館されても丹沢の自然は捨てられず、

自主的に集まる。今月は県花のヤマユリ探しに玄倉林道を歩

く。林道は玄倉川の渓谷に沿って造られ、車1台ほどが通る

道幅だ。

 最初のヤマユリは崖上3mに細い茎を伸ばし、その先に大輪

の花を重そうに付けそよ風に揺れていた。普段は農家や施設

の敷地に多くの花を咲かせ茎も高く、逞しいヤマユリを見てい

る。ユリの語源は「揺り」の様で、本来のヤマユリの姿に出会っ

た喜びがあった。

 林道は木陰が多く吹く風は涼しい。黒いアゲハが揺れながら

風に乗って飛んで行く。微かなユリの香りに、遥か50m程先を

見ると、崖に咲く4輪の花が目に入った。急ぎ足で行くとミヤマ

カラスアゲハが私達を追い越して飛ぶ。「アゲハはユリを通り

過ぎたか」と思ったその時、飛行角度を変え翅をはばたきなが

ら細く長い肢で着地しストローを伸ばす。羽を動かす度に雄蕊

の葯は揺れ、赤褐色の花粉に染まる。

 アゲハは、蜜という生きるエネルギーを得て、ヤマユリは受粉

という生命を繋ぐ作業を託す。すばらしい自然の営みを丹沢で

感じ、参加仲間は幸せの気分に満ちて帰路に就いた。

 ところが赤燈点滅のパトカーが停車している。ビジター閉鎖

で駐車場なく、仕方なく路肩へ駐車していた全員の顔は蒼白に

なった。今回は、事情を聞いてもらい助かったが、今後どうする

か悩みの種が出来てしまった。月1回のガイドウォークの時だけ

でも、元ビジターセンターの駐車場を使わせてもらえると助かる

のだが。

そよ風に 揺れる。 ユリの語源は 「揺り」から。

ユリの香りが 渓谷に広がる。

アゲハチョウは、花の香りは 触角で、花の確認は目で。

 

黄色い線模様をたどれば 蜜の場所に到達する。

大きな翅をばたつかすと 揺れる葯の花粉が・・。

他の花の花粉を運び 雌蕊の柱頭に。

ヤマユリの花には 黒いアゲハがよく似合う。

丹沢で自然の営みを感じて 幸せの気分で帰路に・・・・。

 ところが 赤燈点滅が目に飛び込んできた。今までに 無かったことが! 困った!!

 

✿ 最後の ガイド ウォーク   2015.3.8.

★ これで最後かと こんなに沢山の人が集まった。

       丹沢湖 ビジターセンター が閉館しても 丹沢の自然は捨てられない。★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


No.1337 ~ ジャノメチョウ の 生きる道 ~

2015年07月11日 | 昆虫

観 察 月 日  2015.7.4.曇 26℃

観 察 場 所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

 一面緑の草が生え、良く刈り込まれ芝生に見えるが、チガヤ

やススキか、イネ科の野草が生えた広場だ。

 人はこの様な景色に出会うと、思わず深呼吸をしたくなる。草

の中に足を踏み入れると優しい草と土の感触が、伝わって来る。

すると、足元からジャノメチョウが飛び立った。

 他のチョウであれば驚いて飛び立ち、高くか、遠くへ飛び去って

姿を消すであろう。所がジャノメチョウは、2~3m程、それも草丈

すれすれの低さを飛んでは、草の茂みの中へ入ってしまい静寂

が戻る。

 緑の草の根元に入り翅をたたむと、焦げ茶の翅は草の緑に融

け込んでしまうのも、自然が作り出した不思議だ。

 日当たりのいい、或る程度の広さがある草原があれば、山地で

あろうと、平地であろうと、ジャノメチョウは見られる。それは、卵、

幼虫、蛹、成虫、雌雄の出会い等、生活のすべてが成り立ってい

るのだ。彼ら彼女らが、逆に高く大きく遠くへ飛び、明るい草原を

離れたとしたら、ジャノメチョウの生命の連続性は途絶えてしま

うだろう。

 多くをコンクリートに依存した環境の中で、便利さに甘んじて暮

している自分がいる。ジャノメチョウが選んだ生き方を見ていると、

人も生き物。暮らしの中味を、暮らしの範囲を、止めどなく広げて

行く今の方向は正解なのか、考えさせられた。

みどり の広場 思わず深呼吸をしたくなる。

足を踏み込むと 草蔭にジャノメチョウが。

ゆっくりと 飛び立ち 。

2~3m先の草の中へ。

翅を閉じると 草原に溶け込む。

高く、遠くへと 飛び出さない。それが 命を継続する秘訣!

翅には ハッキリとした 蛇の目の模様が!

* これが ジャノメチョウの 旗印!


No.1336 ~ 山麓に 降る雨は ? ~

2015年07月08日 | 植物

観 察 月 日  2015.6.28.晴 29℃

観 察 場 所  伊勢原市 子易

 雨の日が続く。雨の日も、丹沢山麓に出かけて見る。木も草も

虫も生き物達が、みどりの雨に濡れて、ゆっくりと休んでいるの

に出会うのが好きだから。

 今日は、つゆの合間を選んで山麓へ出かけてみた。林道を行

くと陽が射しているのに、空から“ハラハラ”と降って来て肩を叩く。

見上げると乳白色の花を付けたクマノミズキが枝を広げ、林道を

包み込んでいる。思わず両手を広げて受けて見ると、4本の雄蕊

と、4枚の花弁がバラバラとなり花柱を残し、雨粒になって掌をぬ

らす。

 灰色に舗装された林道が、乳白色に煙っている。林道を歩いて

いるのは私一人で、クマノミズキの花の雨の美しさを独り占めし

ながら歩いている。

 ふと気が付くと、その雨の音が”ポツン、ポツン“と転調し、大粒

に変わって来た。手で受けて見ると、花弁と、多数の雄蕊を付け

た花そのものが、淡黄褐色の雨となって降っている。見上げると

アカメガシワ雄花の花盛りだ。

 アカメガシワは、雌雄別株で、雄花にはベニシジミが何匹も集

まって吸蜜し、恋をささやく姿にも出会った。

つゆの止み間に 林道を歩く。

 雨が降る降る。花の雨が!

雄蕊と 花弁が雨となって。

見上げると クマノミズキの花盛り。

雨の音が転調して 大粒だ。

花そのものが 雨となって。

アカメガシワの雄株が 林道を包んでいる。

ベニシジミが 雄花で吸蜜。

花の雨の中を 独り歩く。

                              * 贅沢な 一日でした。