2008年4月6日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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「音は脳の中で初めて音楽になる!」その通りですね。
昨日は脳医学博士の中村先生にこのタイトルで講演をして頂きました。
彼の言葉をお借りすると、「脳科学的に言いますと、音は脳の外で起こっている物理現象、 音楽は脳の中で起こっている心理的現象、ということになります。 洒落た言い回しをすれば、音は空気や物を振動させる力のあるもの、音楽は人の心をふるわせる力を持っているものといってもいいかも知れません。
ですから、どんなに高性能な音響機器を使ったとしても、それ単独では「音」 は分析できても、「音楽」を分析することはできません。何故なら「音楽」は 人の心(つまり脳)の産物だからです。
ということで今回は、音が耳から入り、脳の中で音楽になるまでの道のりについて、 脳科学の最新の知見を織り交ぜながらお話しをしていきたいと思います。」と言う事で大変興味深いお話をして頂きました。

先ずは音が音楽として心に届くまでの道のりについてお話をして頂きました。音は二つの全く異なる世界を旅してから心に音楽として届きます。一つは音が耳に届くまでの空気の振動としての物理世界、もう一つは音が耳から入って鼓膜の奥のリンパ液を振動させて繊毛細胞が揺れる事で神経の電気信号に変わってからの認知脳科学の世界(心理世界)。この二つの世界は全く違うものなんですね。従ってそれぞれの世界における影響の因子も全く違います。
物理世界では弾き方、楽器の状態、ホールの環境、湿度温度、周囲の雑音などが影響を与える訳ですが、心理世界、脳の中で起こる電気信号に影響する因子としては、意識レベル、注意レベル、慣れ(飽き)・予測(期待)、好き・嫌い、体調・気分などになります。ふむふむ、成る程、ですよね。
従って、脳の中で感じた音は、実際に耳の外でなっている音とは違うんだそうです。例えばクレッシェンドなど音量のコントロールをどうするとクレッシェンドらしく聞こえるか?これは音のエネルギー(物理量)と感じた音の大きさ(心理量)とは異なるので、それらしく聞こえる弾き方があるんですね。書面で説明し難いので、お知りになりたい方はミューズお出でになった時にお教えします。

そしていよいよ核心に迫りますが、飽きない演奏とはどうすればよいか?
1.脳は飽き易い
2.脳は変化に敏感
3.脳の変化に敏感な性質は、音楽の様々な性質に共通する
と言う基本を踏まえ、
・単調な演奏は聴き手の注意力を散漫にし、眠気を誘う。
・音量、テンポ、音色など「適切な」変化が必要。
・変化のし過ぎ、無秩序な変化は逆効果
・秩序ある様式が構築された中で、時々変化するのが効果的。
・持続的に聴き手の注意を集めるのが最も基本的に大切

次に「心の伝わる演奏とは?」
心理世界の答えを考えるキーポイントは二つ
1.音楽はコミュニケーションである
 ・相手は機械ではなく、人間(語りかけるように)
 ・聴き手は、自分に向けて発せられていると感じられないメッセージには注意が向かない
2.脳は言葉や理屈なしでも、相手の気持ちや意図を理解する能力を持っている(ミラーニューロンシステム)
「心を込めた演奏」は必ず伝わる
 ・心を込める→感情のこもった話し方や歌をイメージし、本当にその気になってしまうのが簡単
 ・ミラーニューロンシステムは相手の心の状態を自分の心の中に鏡の様に映し出す神経システム→相手が楽しそうなら自然に自分も楽しくなる、悲しそうなら自分も悲しくなる。

つまり音楽は耳のみで聴くにあらず!と言う事です。
注意の向けられない音は心に残らないため、相手の注意を集める事が最も大切。例えば弾き始めの出だしの雰囲気作りはとても大事。また、人間は嫌われるとアラ探しをされてしまうので、ステージマナーや笑顔なども重要な要素となってくる。
等など、ここには書き尽くせない内容のお話を沢山していただきました。
ギター愛好家だけではなく、当日はピアニストやセラピストなどの方々も参加され、熱心にメモを取られていらっしゃいました。
また、中村先生には第4回もお願いしたいと思います。今回参加できなかった方も是非次回はお越し下さい。こんなによい話を聞かないのはもったいないです。



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