2007年3月1日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> エルネスト・ビテッティさんはお上手?
 
昔、初めて聴いた時には、「なんじゃこれ下手くそ!」と思って、その後ほとんど聴いたことのなかったエルネスト・ビテッティという、1943年アルゼンチンのロサリオ市で生まれて今年64歳になるギタリストのレコードを最近聴き返してみる気になった。1枚はホセ・ブエナグという指揮者と共演した「アランフェス協奏曲」と、エンリケ・ガルシア・アセンシオという指揮者とやった「ある貴神のための幻想曲」が裏表の1枚。もう1枚は裏表全部で9曲入っているが全てアルベニスの作品というちょっと凝った内容のレコード。いずれも30センチLP。ビテッティさんにはもう1枚、ロス・マルバ指揮、フィルハーモニア管弦楽団のバックで、同じ曲の組み合わせによるレコードがあるはずだけども、おいちゃんはそちらのレコード(CD)はまだ手に入れておらず、従って聴けておらんので感想を述べる権利はないと思うのでここでは失礼しようと思うので勘弁してほしいと思うのでありまするが、それでもまあ大きくは違やぁせんかという気がするようなしないような気がしないでもないかなという気がせんでもない。

じゃあその演奏はどうなんじゃ、というと「うーん、どうなんやろ?」申し訳ねぇけども「アランフェス協奏曲」に関してはっきり言っちまえば、「テクニック不足」。指があんまし回ってなくて、オーケストラについていくのがやっとやっとで、時としてオケに先を越されて「ちょっとちょっと、あんたちょっと待ったってぇな、そう急がんとゆっくり弾いてぇな」といった感じのする箇所が随所に見られるなんともはや情けない演奏。切れ味鈍いっつうか立て板にトリモチっつうか、いまどきの若手ギタリストのテクニックの水準と比較するとちょっともの足らない。はっきし言うともの足らねぇどころかまるで技術的に不足しておる。どうも昔聴いた時に「なんじゃこの下手くそ!」と感じたのもこの演奏だったようだ。その感想は残念ながら今聴いてもやっぱしあんまり変わらんかった。これっくらいの演奏であれば、今どきちょっとしたアマチュアの方が上をいくんじゃねぇべがっつうくれぇ技術的におぼつかなくて頼りない。もっと言ってしまうと、もしピアノやヴァイオリンの演奏家の人がこのアランフェスを聴いたら、「ギターってこれくらいの水準でもプロになれちゃうの?」と言われかねねぇなと思えてしまう。もちろん芸術なんて技術だけではねぇっちゅうことはよーくよーく理解しとるつもりだども、どうしてもこのアランフェスを聴いておると、演奏家が表現したいことよりも、テクニック不足なことの方が目立っちまって、表現どころじゃねぇずらよ、悪いけど。

芸術なんて先ほども言った通りテクニックばっかりではにゃぁことはよーくわかっとるつもりだけんど、それでもそのテクニックを補って余りあるほどの何かがあればええけども、それがにゃあとなると・・・?ねぇ。いまどきアランフェスなんて有り余るテクニックであふれんばかりの表現力を見せてくれる人がいくらでも出てきとるもんだで、この程度の演奏じゃあほとんど存在価値はねぇだぁよ、悪いけんど。(もしかしてビテッティさんのファンの人がこれを読んでいたら怒っちまうやろなぁ。ごめんなさいね。)
 
しかし、しかし、当のビテッティさんのもう1枚のLP。アルベニスばっかりのレコード。これは何だか知らんがとっても気に入っちまった。1976年の録音っちゅうことになっておりまするが、技術的にもアランフェスほどのものを要求していないと言ってしまえばそれまでだども、9曲それぞれが他の演奏家とどことなく違っていて、なんともはやしっとり落ち着く名演なんどすなぁこれが。とにかく前編歌が溢れとる。内容をお知らせすると①朱色の塔、②セヴィーリャ、③カディス、④タンゴ、⑤オリエンタル、⑥アストゥーリアス、⑦コルドバ、⑧グラナダ、⑨サンブラ・グラナディーナの以上9曲。特に朱色の塔、セヴィーリャ、アストーリアスの3曲を除くとみなテンポのゆったりした曲ばかりで、そのあたりにビテッティさんの本領と特徴がよーくうかがえる。どの曲もみな決してがなりたてることなく、しっとりとメロディを繋げて本当に良くギターを歌わせている。旋律を小さく小さく弾いても、その音色の統一感の良さと繋がりで十分下の音に埋もれることがない。このあたりについちゃあ皆さんもよーくお手本にしたらよかんべと思えるし、アストゥーリアスにしてもあのラスゲアードの部分もぐっと押さえた音量で弾かれ、あくまでも幻想的に、そして神秘的な表現で進められていて、ちょっと他と違った印象を持たせる。「あぁこんな表現もなかなかええなぁ」と感じさせてくれまんがな。

どうもビテッティさん、この2枚のLPからうかがい知るに、和音進行や単旋律進行、それにアルペジオなどはめっぽう得意で、類い稀な表現と美音を聴かせてくれるけども、反対にアランフェスに見られるようなラスゲアードや各弦にまたがるような快速なスケールなんかでリズミックに書かれた曲なんかはめっぽう不得意なんでねえべが。解説によると、ビテッティさんはめちゃくちゃ長い爪で、しかもその爪の生え際から弦に当てるような演奏法をとっておるらしく、柔らかくしかも明瞭な美音には長けているが、逆にそのあたりの弊害が出とるのかもしれんなあと思えなくもない。

それにしてもこのビテッティさんのレコードを、おいちゃんは2枚しか持っていないので、その他のCDなんかではめちゃくちゃいい演奏をしとるかもしれん。もうちょっと今度は違う演奏を聴いてみることにすんべぇ。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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