2007年3月25日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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今日は徳永真一郎サロンコンサートのレポートです。
彼はこの3月に高校を卒業したばかりの、まだあどけなさを残す18歳の少年でありながら、鮮やかな技巧と歌心の両面を持つ立派な若きギタリストでした。キラリと光るものを随所に見せる演奏で名古屋の観客に大きな足跡を残した事に違いないでしょう。彼はジュニアギターコンクール(‘00)をはじめ、第30回日本ギターコンクール・オヌール部門(‘03)や第20回スペインギターコンクール(‘03)で1位(最優秀賞)などを獲得していると言いますから、中学3年生で輝かしい経歴を作った事になります。しかし、彼の性格と師匠である川竹道夫先生(徳島ギター協会会長)の教えがいいのか、決して驕った所は無く、素直でとても好感の持てる少年です。

第1部の1曲目の「おいらはキャベツ作りの子の主題による変奏曲」(ジュリアーニ)では切れの良い鮮やかで且つ色彩感と立体感のある演奏でググッと迫るものがありました。ラマンチャの歌(トローバ)と二つのカタロニア民謡(リョベート編)の盗賊の歌、聖母の御子では若い演奏家にありがちな技巧に走る演奏ではなく充分に歌えるギタリストですと証明。ただ、アルベニスのセビーリャでは「さあ、今からセビーリャだぞ!」と言う気負いがあったのかやや固さを感じました。昨年11月の徳島でのデビューリサイタルのPR用CDでは見事な演奏をしていたので期待していただけにやや残念でした。

第2部の二つのベネズエラ舞曲、エル・マラビーノとワルツ・クリオージョ(ラウロ)はさらりと弾き切り、ヴィラ=ロボスの五つの前奏曲は1番から順番に演奏していく中で、第3番、第4番では聴衆と演奏者が一体となる空気を漂わせました。ゆっくりしたテンポのところは丁寧に歌う事で聴衆が引き込まれていくのです。が、その緊張感を持続する事の難しさを感じました。演奏者も集中力を長く維持する事が難しいのと同様に聴衆も集中力を長く維持する事は難しいんですね。やはりテンポの設定と変化など聴衆の空気を感じ取りながら生きた演奏をする事が大切なんですね。この点を18歳の経験の浅い徳永君に要求するのは酷かも知れませんが。
サウダージ第三番(ディアンス)儀式~踊り~祭りと終曲では彼の持ち味が存分に発揮されていました。やはりこの曲は彼の年代に合っているのでしょうか。切れの良い技巧と小気味良いリズムで、時には彼の体が左右に揺れるくらいに乗った演奏でした。このノリは逆にベテランのギタリストには出せないかも知れません。ただ、アンダンティーノ・バリアート(ポンセ)では惜しいポカをやりました。忘れた部分があり、彼は変奏を2つ程飛ばして先へ行きました。後で川竹先生から聞いたところによると、この曲は小学生の時からやった曲らしいのですが、ここ何年も弾いていなかったらしいのです。ディアンスで素晴らしい演奏をした後のプログラム最後の曲だけに惜しまれました。

しかし、とても良いもの、光る才能を持った人であることは間違いありません。聴衆全員が彼の演奏に惜しみない大きな拍手を送りました。5月からフランスに留学するとの事ですが、きっとひと回りもふた回りも大きく成長して帰ってくるでしょう。皆さんで「留学を頑張って来るんだよ。帰国したら又ミューズでも演奏してね!」と言って分かれました。徳永真一郎君、ガンバレ!フレー、フレー、と・く・な・が。

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