2005年11月2日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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いよいよメキシコから帰国するお話です。
1982年にメキシコは債務危機に陥り、ある日突然ドル預金凍結とデバリが発生しました。中南米のような経済が不安定で自国通過が弱い国々では頻繁にデバリ(通貨切下げ)が起こります。しかも大統領の任期が終わる直前によく起こります。それは大統領自身がデバリのドサクサで金儲けをするからです。ドル預金を海外に移転しておいて自国通貨を切下げれば同じドルが自国通貨で何倍にもなるからです。
私はメキシコ滞在中にその逆の経験をしました。

通常は自国通貨、メキシコペソでは預金しておいてもいつ切下がるかも知れず、予防策としてドル預金をすることが常識になっています。切下がってもドルで持っていれば強いからです。ところが、82年には突然ドル預金凍結のお達しがあったのです。国民全員が真っ青です。私も真っ青でした。尤もそんな大金をドルで持っていたわけではありませんでしたが、凍結ですからドルでお金を出せないんです。私は人の金を悪いこともしていないのに凍結するとは何事だ、そんな権利が誰にあるんだと憤りを覚えましたが、お上のやることに逆らうことは出来ません。そして1週間すると低いレートでペソに変換してお金を出せるようになりました。市場レートよりずっと悪いんです。クソッ!と思いつつも仕方ありません。

しかも、市中ではドルの入手が出来ないのです。出国する人は一人200ドルを限度に空港の出国手続きを終えてから両替できましたが、たったの200ドルですよ。この様にメキシコの経済環境も悪化して、ヤマハ・デ・メヒコの業績も悪くなり、私の駐在年数も4年半を過ぎていましたのでそろそろ帰国命令が出るなと容易に想像出来ました。

そこで自分の貯金をどうするか悩みました。ドルでは出せないし、帰国時にドルも200ドルしか持って帰れないし、メキシコペソは日本に持って帰っても紙切れ同然だし・・・。そこで行き着いた対応策が貴金属を買って帰る事でした。メキシコには金細工やメキシカン・オパールその他の宝石が沢山ありました。そこで知り合いの宝石店で買うことにしたのですが、買い出すにつれて感覚が麻痺してくるんですね。自分の持っているお金より沢山買ってしまいました。結局借金をして帰国したのが83年3月でした。帰国してからメキシコに送金する事になってしまいました。トホホ・・・!

しかし、メキシコで経験したことは私の一生の宝物です。今もその時の経験が役に立ってます。インディオ文化とスペイン文化の融合。そのまだら模様が何とも魅力的だったメキシコ。私は8mmフィルムにインディオ文化、融合した文化、そしてスペイン文化の3段階の文化をフィルムに収めて成長するメキシコをナレーションを入れて紹介しました。30分の大作になりました。帰国してからそのフィルムを当時名フィルの事務局長をしていた人にあるイベントで使いたいと言われて貸し出したことがありました。しかし、その人はどこかに行方不明となりそのフィルムは帰ってきませんでした。私の大事な宝物が一つ消えてしまいました。そのフィルムを返してくれ~!

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