消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

助けられなくとも

2011-06-17 16:12:15 | 救急隊の本音
前回の当番は2件の出場、夜中に出場し、それが長時間に及んだため寝不足でした。

その後の通信勤務も非常に眠たく、半分以上はぼーっとしてる感じ。いつもこの時間に限り集中して勉強できるのですが、この時ばかりはやる気力も起きませんでした。


話は少し前に遡りますが、先日CPA(心肺停止状態)事案に出場しました。

傷病者本人とその家族(娘さんかな)の二人暮し。傷病者自身も高齢でいくつか病気を持っていて、いつお迎えが来ても…と家族談。

通報時はCPA疑いのため消防隊も同時出場。現場到着時にCPAを確認し消防隊と協力してCPR(心肺蘇生法)を実施。

かかりつけの病院で収容可能かどうかを問い合わせ、収容可能との回答。そのまま病院へ搬送しました。


傷病者接触時から病院到着まで容体は変わらずCPAのまま。病院内でも薬剤投与したりずっとCPRを続けたりしましたが、効果が現れてこず。そのまま医師・看護師に引き継いで帰署しました。


後日、消防署にその時のご家族の方が来られました。救急車に同乗してきた家族の方と、また別のご家族の方と一緒に。

私がちょうど通信勤務に入っておりましたのでそのまま対応。先日はお世話になりましたとのお言葉に、ただただとんでもございませんと頭を下げる私。

そして現場にはいなかった家族の方がこう切り出しました。


『もう年齢も年齢で、病気もたくさんしてたからいつ死んでもおかしくはないと覚悟はしていました。それでもやっぱりいなくなると寂しくて悲しくて泣いたもんですが、最期を看取れて良かった。』と。

そうでしたか、お力になれずにすみませんと私。そこでまた家族の方が、

『救急隊や病院の先生方が一生懸命な処置をしてくれなかったら、私が病院に着く前に死亡宣告されていたでしょうから。本当にありがとうございました。』と。


残念な結果的になり助けることはできなかったが、これを聞いて不思議と力が湧いたような感じがしました。

このご時世不景気により、公務員が悪いみたいに叩かれる世の中や報道に正直嫌気もさしますけど、この家族のお言葉により、少し救われたような気がした。

そう思うと、助けられなくとも意味はあったのかな。


色々嫌なこともあるし、時に凄惨な現場に行って本当に落ち込むこともあるけれど、こんなように『ありがとう』なんて言われたら、次こそはいい活動になるようもっと頑張ろうと思える。

そんな出来事が、また私のモチベーションをあげてくれる良いきっかけになるのでした。



明日はお休み。

用事があるため実家に帰ります。