モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

コバイケイソウとアオヤギソウ

2022年02月18日 | 高山植物

(冬場は山には行きません。夏場の回想記事が主体となります。
その一環で「高山植物」のカテゴリーを創設、山の花について語って行きます。)

コバイケイソウは数多ある高山植物(草本)の中では最も大型の植物ではないかと思っている。

生育地の気候ゾーンは、山地(ブナ)帯から亜高山帯なので、
厳密な意味で高山植物と呼べるかどうかは何とも言えないが、

東北の高山には欠かせない花風景をつくるので、あえて高山植物に含めさせて頂く。

2018/07/14 コバイケイソウ群生。八幡平源太ヶ岳、標高1500m付近にて。



2018/07/14 コバイケイソウ群生。八幡平源太ヶ岳、標高1500m付近にて。 



2021/07/31 コバイケイソウ群生。鳥海山薊坂、標高1800m付近にて。



ウィキペディアによると、

『コバイケイソウ(小梅蕙草、学名:Veratrum stamineum)はユリ科シュロソウ属の多年草。
新しいAPG植物分類体系では、シュロソウ属は、ユリ目メランチウム科に分類される。
(改訂新版・日本の野生植物(平凡社)では、メランチウム科をシュロソウ科と言い換えている)
山地草本の中では大型で、高さは1mほどになる。6月から8月に穂の先に白い花をつける。
花茎の先端部は両性花、横に伸びる花は雄花である。
群生することが多く、初夏の山を代表する花の一つ。
光沢があり、硬く葉脈がはっきりとした長楕円形の葉が互生する。

有毒であり、全草にプロトベラトリン等のアルカロイド系の毒成分を持つ。
誤食すると嘔吐や痙攣を起こし、血管拡張から血圧降下を経て、重篤な場合死に至る。
若芽は山菜のオオバギボウシやノカンゾウの若芽に似ており、
誤食による食中毒が毎年のように発生しているため注意が必要 。

名前の由来は、花が梅に似ており、葉が蕙蘭に似ているため。 
日本の本州中部地方以北、北海道に分布し、
山地から亜高山の草地や湿地のような、比較的湿気の多いところに生える。』

とあった。
 

コバイケイソウの開花にはムラが有り、毎年、咲くわけではない。
これは開花に大量のエネルギーを消費するためと言われるが、本当のところはよくわからない。
エネルギー充填に要する期間はニッコウキスゲよりも少し長いように感じる。
上三枚の写真は、数年ぶりに訪れた開花年に撮ったものである。

東北では場所によって低所の湿原にも出現する。
八幡平西部の大場谷地湿原は標高960m。ブナ林からアオモリトドマツ林に移行する高さだ。

2015/06/24 コバイケイソウとレンゲツツジ。大場谷地にて。



2015/06/24 コバイケイソウ。大場谷地にて。             2018/07/14 コバイケイソウ。大深湿原にて。
 



コバイケイソウの芽出し姿と実、枯れ姿。

2012/05/27 コバイケイソウの芽出し。大場谷地にて。



2017/05/22 コバイケイソウの芽出し。大場谷地にて。         2017/07/18 コバイケイソウの実。
 



2013/09/22 コバイケイソウの枯れ姿。八幡平八幡沼付近にて。



東北の山では、シュロソウ属のメンバーをもう一種、よく見かける。
アオヤギソウ/シュロソウの仲間だ。
こんな表現をしたのは、正確な名前がまだわからないから。
次の四枚の黄緑~褐色の穂花は従来の解説書等ではタカネアオヤギソウとされていたものだ。
花は地味な色合いなので話題になることはほとんどない。


2018/07/20 鳥海山にて。                      2020/07/30 鳥海山にて。
 


2016/07/16 月山にて。

 



ここで、改訂新版・日本の野生植物(平凡社)から抜粋。

『アオヤギソウ Veratrum maackii var. parviflorum
山地の林下や湿った草原に生える多年草で、茎の基部に古い葉鞘の繊維がシュロ毛状になって残る。
後出のシュロソウ(名の由来はこの性質による)も同様である。
茎は高さ50-100cm。葉は茎の下部に集まり、長楕円形~卵状長楕円形で長さ20-30cm、幅6-10cm、
下部は次第に狭くなり、基部は鞘になって茎を包む。葉の先は次第に尖り、毛は無い。
6-8月、茎の頂に円錐花序がつき、花序には縮れ毛が密生する。
花は黄緑色で径8-10mm、花被片は長楕円状倒披針形で長さ5mm内外、雄花と両性花がある。
雄蕊は花被片の半長、朔果は楕円形で長さ15-20mm。
本州中部以北、北海道、朝鮮半島に分布する。
葉の大きさ、花序の大きさ、花序の苞の長さなどに変化が多い。
タカネアオヤギソウ f. alpinum は高山型で、丈が低く、花序の苞がふつう花序よりも長くなるもので
本州中部以北の高山帯に生える。
シュロソウ var. reymondianum var. japonicum は、花被が暗紫褐色で朔果がやや小さいもので、
染色体数は2n=16。本州、北海道に産する。オオシュロソウとも言う。
これにも高山型があり、ムラサキタカネアオヤギソウ f. atropurpreum と言う。
基本形のホソバシュロソウ(ナガバシュロソウ)var. maackioides は葉が細く(幅3cm以下)、
花柄が長く(10-17mm)、花被は暗褐色で朔果の長さ20mm内外のものも有る。
本州(関東以西)、四国、九州、朝鮮半島、中国北部、シベリア東部に分布する。
以上のアオヤギソウ、シュロソウの類は環境により、形態、花の色などに変化が多く、
種、変種の区分が難しく、学名の扱い方もなかなか面倒である。

植物素人の私には花色しかわからないが、月山の二枚目はムラサキタカネアオヤギソウだろうか。
しかしすぐ左奥に黄緑の株も咲いている。となるとタカネアオヤギソウの変異の範囲内なのだろう。
ところで、これらの種類、丈は1mになるものも多く、はたしてタカネ・・・と呼ぶのは適切だろうか。
後述の低山で見かけるものとほとんど差が無かった。

同じ東北の他のお山ではどうだろうか。

2017/08/03 早池峰山にて。                        2019/07/10 太平山奥岳にて。
 



総じて黄緑の花が多いが、右上、太平山奥岳の株はもろムラサキタカネアオヤギソウという感じだ。

この仲間、中部山岳ではどうだろう。

1990/07/27 白馬岳にて。



こちらは花序全体が紅く、丈も低かった。
タカネシュロソウ(=ムラサキタカネアオヤギソウ)とした個体だ。


2007/08/14 霧ヶ峰・八子ヶ峰にて。                2015/08/10 湯ノ丸高原にて。
 


いずれも当時はシュロソウと同定したように記憶している。

この仲間、北東北では低山でも見かける。
特に男鹿半島の毛無山には多く、
海岸近くから山頂まで林の中はこの植物で埋め尽くされていると言っても過言ではない。

花の色も豊富でシュロソウのような赤褐色から
アオヤギソウとしか言いようのない黄緑まで幅広く、中間色の個体もある。

しかもそれらがどんじゃら混じり合って咲いている。
こうなるとどれがアオヤギソウでどれがシュロソウかなどの議論は全くナンセンス。

2020/06/21 男鹿半島毛無山で見た4シーン
 


 


この仲間は結局、なんと呼んだらいいのかわからないというのが結論だ。

以上。



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2 コメント

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Unknown (mimoza)
2022-02-18 12:42:26
秋田の山は秋田駒しか登っていませんが、
故郷の北アルプスでもコバイケイソウの咲く山がたくさんあります。
夏山が懐かしくなる数々のお写真、素敵ですね。ありがとうございます。
返信する
mimozaさんへ。 (モウズイカ)
2022-02-18 13:51:07
コメントありがとうございます。
登山を主体としたブログですが、冬場は山に行かないで、
夏に見た花などの回想記事でお茶を濁しております。
コバイケイソウは東北の山に多く、
昨年は数年に一度の一斉開花年でしたが、
残念なことに開花期に雹が降って、山によっては全滅でした。
次の開花年が待ち遠しいです。
他の花も可能な限り、載せようと思っておりますので、またお寄りくださいませ。
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