秋田は北国のせいか、秋が深まると新しく咲く野草はめっきりと少なくなる。
比較的多く見かけるのはセイタカアワダチソウくらいだろうか。
これは有名な帰化植物だが、秋田では平成時代に入ってから、急に多く見かけるようになった。
日本在来種ではどうだろうか。
比較的遅くまで咲いているのはトリカブトだ。
里山でも沢沿いの湿った日陰地などで散見する。
添付はたぶんオクトリカブトだろう。2011年9月28日、八峰町の里山で見た。
この日は珍しく白花にも巡り合っている。
次にあまり知られていない花だが、二種類取り上げてみる。
以前、10月に由利本荘市大内町の国道105号線を走っていたら、
放棄された水田の奥に黄色い花を見かけた。
今頃、何の花だろう。正体を確かめてみようと、近くのパーキングに車を停めた。
車に積んでいたゴム長に履き替え、放棄水田のあぜ道に入る。
入り口のあたりでは薄紫色のノコンギクと混生していたが、
黄色い花が多く生育している場所はじゅわっと水が浸み出す湿地になっていた。
近づいてみると、この花、頭花はキク科のニガナやジシバリに似て、
けっこうでかく、草丈は1m前後あった。
オオニガナ Nabalus tanakae だった。
名前はニガナだが、所属する属は、フクオウソウ属という聞き慣れない属名だった。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
「本州(近畿地方以北)に分布し、山中の湿地にまれにある」とあった。
しかし秋田県内ではあちこちの山あいの湿地で割と多く見かけるようだ。
茎葉は独特の形をしており、
図鑑によると、狭い翼のある葉柄を持ち、頭大羽裂するとの解説。
撮影日は2012年10月9日。
続いてもう一種。
こちらは花火で有名な大曲、現在は大仙市のとある湿地で見かけた。
丈は40センチ前後。近づいてみると、花は野草にしては勿体ないくらい奇麗な紫色だった。
ヤマラッキョウ Allium thunbergii だった。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
「本州(秋田県以南)~九州、朝鮮半島、中国、台湾に分布する」とあった。
たぶん今回の生育地は分布の北限ではないかと思われる。
球根(鱗茎)はラッキョウ同様、食用になるとも言われるが、
少なくとも秋田のものは絶滅寸前であり、絶対に食べないで保護して欲しい。
撮影日は2013年10月18日。同じ場所に咲いていたエゾリンドウも添えておく。
以上。
イネ科植物は風媒花ばかりなので花は地味だし、分類も難しい。
単にグラースとかイネ科雑草としてひとまとめにしてしまえばハイそれまでだが、
トータルボリュームも多く、景観を形づくる点でも重要な存在だ。
中にはススキやエノコログサの仲間のように誰でも知っている顕著なものもある。
せめてそういったイネ科くらいは取り上げてみようかなと思う。
キンエノコロの群生
ススキはどこにでもある植物だが、ありすぎるものだから、
いつでも写せると高をくくってしまい、(野生種の)手持ち写真は今までさっぱり無かった。
もしかしたらまともに撮影したのは今回が初めてかもしれない。
9月下旬、鳥海山麓にて。ススキの群生。
ススキの穂は新鮮な頃は赤みを帯び、光の具合によってドキッとするほど美しいものもあるが、
今回は撮り逃がしてしまった。来シーズン以降の課題としよう。
下左に、
ススキの初々しい穂花の一例(2010年8月下旬、岩手県で撮影)。
右上はヨシの穂花。
ヨシもススキと同様、知名度の高いイネ科だが、穂花はやや薄汚れた感じで、美しさではススキに敵わない。
下写真では手前に群生しているのがヨシ。後ろがススキ。
続いてエノコログサ。
ネコジャラシの愛称でも親しまれているが、
「エノコロ」自体、「犬ころ」の意味なので、ヒトに最も近しいペット両方に通じるイネ科である。
キンエノコロ
ここではただのエノコログサも混じっていた。
エノコロのコーナーは全て9月下旬、鳥海山麓で写したものだが、
キンエノコロが異常に密な場所があった。
ここは採草地の隅なので特に栄養状態がよいのか。
イヌやネコといっしょに駆け回りたくなる風景だった。
チカラシバはブラシのような穂花を立てて咲かせる。
個人的には、エノコログサと同様、親しみのあるグラースだが、
いざ探すとなかなか巡り合えなかった。
以上。
昔はあちこちで見かけたのに、近頃さっぱり見かけなくなった花がある。
その代表取締役(横綱?)はオキナグサだ。
この花については、拙ブログでも既に複数回取り上げている。
例えば、「われ幻のオキナグサを見たり。岩手ウブウブ編。(2011年5月28日)」、
「オキナグサは今何処。」など。
オキナグサがこの方面の植物の横綱?だとしたら、
本頁で扱うコシオガマは大関か関脇クラスに相当するだろうか。
こちらは旧ゴマノハグサ部屋、現在はハマウツボ部屋、
いやハマウツボ科に所属している。
私が子供時代(今から60年近く前)は横手実家から1キロくらい離れた畑に行く途中の道端に生えていた。
この場所は全くの平地、周りは水田や果樹園ばかりの場所だった(現在は国道13号線バイパスに変貌)。
長じて、社会人となってからは、
仕事でよく行っていた大館市の郊外、野球場グランドの隅っこの草原などで見かけていた(約30年前の記憶)。
ところがその後、21世紀になってからはさっぱり見かけなくなった。
何故だろう。
ハードデスクの中を探してみたら、最近では、2009年の秋に出会っていた。
今回はその日に撮った写真を幾つか報告してみる。
場所は南秋田郡の山間部。撮影日は9月18日となっていた。
この場所(広域農道の道端)はその後も訪ねているが、コシオガマは消滅していた。
跡地はススキやオオブタクサなどの草藪と化していた。
ほぼ同時期、秋田空港のすぐ近くを走る道路の法面でも群生を見かけた。
こちらは道路の構造上、近くに停車できないため、近づいて撮影することは出来なかった。
一、二年後にまた掠めたら、やはり丈の高い草にすっかり覆われてしまっていた。
この植物は他の強壮な草木との競争にはとみに弱く、日当たりが悪くなるとサッサと姿を消してしまうようだ。
秋田県のかつてこの花が生育していたような道端は、
ほぼ100%、ススキやオオハンゴンソウ、オオブタクサ、セイタカアワダチソウなどの
強壮な草に占領されてしまった。
コシオガマは今何処で何をしてるんだろうか。
以上。
2013年9月10,13日は鳥海山の北山麓を車で彷徨っている。
両日ともに鳥海山は雲を被って見えなかった。
10日、最初に訪ねたのは、標高約900mのブナ林。
道端の水が浸み出して湿った場所に、背の高いサラシナショウマやセリ科が咲いていた。
その根元にくすんだピンク色のでかい花を見つけた。
オニシオガマだった。大きなものでは背丈が1mを超えることもあり、
シオガマギクの仲間としては国内で最大。
こんなでかい植物が半寄生植物とはにわかに信じ難い。
近くでトリカブトの花を見つけた。
標高は約200mに低下。
杉林の中を走る道路端で、アケボノソウを見つけた。
以前(たしか5,6年前)、このあたりの杉林の下一面はアケボノソウに埋まっていた。
それまで杉林のような暗い場所にも咲く花だとは思ってなかったので、この時は驚いたものだが、
今回は道路端に少数の株が残っているだけだった。
次はゲンノショウコ。
秋田ではゲンノショウコの花色は白ばかりだが、今回、一株だけ、ピンク色の花を見つけた。
この杉林、湿り気が多いせいか、あちこちでツリフネソウが群生していた。
13日は丘陵地帯の杉林でキバナアキギリを見つけた。
この花、暗い林にもよく咲くが、公共花壇でよく使われる真っ赤なサルビアと同属とはちょっと意外だ。
個人的には気に入っており、紫や白の花を咲かせる品種をわざわざ取り寄せて咲かせている。
この日はシソ科ばかりだ。次はタイリンヤマハッカと思われる。
別場所、標高500mくらいの道端で紫色のシソ科植物を見つけた。
このシソ科は何だろう。手持ちの図鑑を繰ったが見つからなかった。
カワミドリに似ているが、花色が濃いように感じる。
道端の限られた場所に群生しており、他地域では見かけない。
もしかしたらカワミドリ属の洋種が人為的に持ち込まれたものかもしれない。
お分かりの方は教えて頂きたい。
最後にメハジキ。
この花、秋田では県北地方(北秋田市や鹿角市)でときどき出会うが、
県南で見るのは今回が初めてだった。
新しく出来上がった山間の道路の法面一帯がこの花で覆われていた。
ただしよく咲いていたのはこの年くらいだった。
二、三年後に訪ねたら、ほとんど消失、2022年は壊滅していた。
オオブタクサ
2016年、森吉山ダムの道路法面で見たもの(こちら)と同じような感じで
跡地はオオブタクサやヨモギに置き換わっていた。
この植物の一時的な繁茂は道路工事と何か関係があるのだろうか。
以上。
夏の間、低山では、花は皆無に近くなるが、
秋めいてくると幾つかの種類が咲き出して来る。
2016年9月5日はそれを探して森吉山の麓を彷徨っている。
打当集落から見た森吉山
道路端でトリカブトの大株に出会った。
たぶんオクトリカブトだと思う。
秋の風物詩、ツリフネソウ。
通常、ツリフネソウの花色は紅色(マゼンタ?)だ。
ときおりピンクや白っぽい株を見かけるが、
森吉山の周辺では何故か白っぽい色の品種が多かった。
ツリフネソウの白花タイプ
2012年に完成した森吉山ダムの方にも廻ってみた。
するとダム手前の道路法面にシソ科の花がいっぱい咲き出していた。
ヒキオコシ
メハジキ
ヒキオコシは県北部の山あいなどでよく見かけていたが、
メハジキは珍しい。秋田ではずっと見なかったが、最近、道路の法面などにときどき見かけるようになった。
パイオニア植物なのか、初めはクワモドキ(オオブタクサ)などけしからん帰化植物と覇を競っているが、
数年で敗退、消滅するようだ。
コシオガマ (ハマウツボ科)も有った。この植物も秋田では見かけることが少なくなった。
コシオガマ
実はこの法面、2023年8月下旬にも再訪しているが、メハジキなどシソ花は皆無になっていた。
他の強壮な多年草(オオハンゴンソウやヨモギなど)やつる草に覆われてしまい、消滅してしまったようだ。
この二日後、9月5日は太平山南麓の鵜養(うやしない)、伏伸(ふのし)滝を訪ねてみた。
この付近ではツリフネソウ、
キバナアキギリ
キバナアキギリの他にシソ科の大形植物を見た。
このシソ科、亀さんのような葉の形から、
当初カメバヒキオコシかと思ったが、後で識者からタイリンヤマハッカだとご指摘いただく。
以上。