モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

高山に咲くアザミとトウヒレン

2022年02月23日 | 高山植物

他の地域はよく知らないが、東北の高山にはアザミが多いと感じる。
それが特に顕著なのは鳥海山。
この山の固有種、特産種のひとつにチョウカイアザミがある。

このアザミはどこから登っても、標高が1500mを超えるあたりから多くなる。
生育場所は草地がメインだが、雪渓跡の岩がゴロゴロ転がっているような裸地にもけっこう進出している。
草丈は1m前後。頭花は大型で花色は暗赤紫、遠目には黒っぽく見える。
総苞からは粘液が垂れている。

けっして奇麗とは言えないが、独特の存在感があり、よく目立つ。


2020/08/18 鳥海山にて。チョウカイアザミの群生。



2020/09/07 鳥海山にて。チョウカイアザミ。

 

                                                                         2018/07/20 チョウカイアザミ正面から。


チョウカイアザミは鳥海山だけだが、奥羽山系の山に行くと、

やはり同じような草姿で、もっと背が高く、頭花もでかいアザミを見かける。
オニアザミだ。
チョウカイアザミのように群生はしない。
分布は本州(石川県~秋田県)、日本海側地域に偏る。

次の二枚はオニアザミとしたが、厳密には変種のハリオニアザミかもしれない。


2018/07/09 和賀山塊薬師岳にて。オニアザミとニッコウキスゲ。



2013/07/20 秋田駒ヶ岳にて。オニアザミ。
 

                                        2011/07/19 八幡平にて。ハチマンタイアザミ。  


八幡平のアスピーテラインを走ると、
黒谷地湿原近くの道路端でオニアザミのような大型のアザミを見かける。

チョウカイアザミ同様、総苞から総苞からは粘液が出ているが、その量がすこぶる多い。
ハエ取りリボンのように粘り、たくさんの虫を捕えることから、
発見者の高橋喜平氏は、当初、「ムシトリアザミ」と呼んだが、

後に八幡平特産の新種、ハチマンタイアザミとして発表された。

以上、三種のアザミについては、『森と水の郷あきた』の頁、
山野の花シリーズ⑫ 鳥海・八幡平アザミ・・・』が詳しい。是非、参照頂きたい。


アザミの仲間は種類が多く、その分類はとても難しい。
図鑑で検索表等を見ても、さっぱりわからない。

そのため、私は、まずは分布域が限定的で、著名な種類から少しずつ覚えて行くようにしている。

ウゴアザミの分布域は、改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、
八幡平、秋田駒、鳥海山、月山、朝日連峰となっているが、鳥海山に極めて多い。
滝の小屋ルート、鉾立ルートにある薊坂という地名はチョウカイアザミではなく、ウゴアザミに由来したもののようだ。

2016/09/03 鳥海山にて。ウゴアザミの群生。



ウゴアザミは焼石岳にも多かった。
このアザミの棘はけっこう痛いので、脛や腕を出して歩くと酷い目に合う。

2020/09/16 焼石岳にて。ウゴアザミの群生。



2015/08/16 秋田駒ヶ岳にて。ウゴアザミ。
 

                                      2020/08/19 早池峰山にて。ガンジュアザミ。

ガンジュアザミは岩手県の岩手山、早池峰山、五葉山などに限定的な種類のようだ。
「ガンジュ」とは岩手山の古名、岩鷲山にちなむとのこと。

月山もアザミが多かった。
鳥海山や焼石と同様、ウゴアザミが多いが、ここにはそれよりももっと痛いアザミがいっぱい。

ナンブタカネアザミだ。
花は割と奇麗だが、鋭い棘を満載しており、へたに触ってはいけない。

「ナンブ」とあるが、岩手県には少なく、栗駒山のみ。
他の分布域は鳥海山、月山、朝日連峰、飯豊連峰、吾妻山と聞くので、

南部よりも山形や羽前を名乗った方が良さそうだ。

2016/08/20 月山にて。ナンブタカネアザミ。



2016/08/20 月山にて。ナンブタカネアザミ。
 

                                     2016/08/11 乳頭山にて。アオモリアザミ。

アオモリアザミ(オオノアザミ)は秋田駒ヶ岳より北に行くと、急に多くなる。
なおこの種類は高山だけでなく、低地にも多い。


次はアザミ属ではなく、トウヒレン属の仲間だ。
トウヒレンとは聞きなれない名前かもしれない。
ウイキペディアによると、
『トウヒレン属 Saussurea に属する日本産の種の和名については、
〇〇トウヒレン、〇〇ヒゴタイ、〇〇アザミとあり、紛らわしい。

北村四郎は、平凡社刊の旧版『日本の野生動物 草本III』で「日本ではこの属ははじめよく理解されないで、
トウヒレンとか、ヒゴタイとか、アザミとかに比較されて、名もはなはだ不統一で、でたらめの感が深い」としている。』
とあった。
また
『「トウヒレン」は「塔飛廉」の意で、日本産の種、セイタカトウヒレンを意味したものと考えられている。
北村によると「飛廉」とは、中国名でキク科ヒレアザミ属 Carduus のことであるが、
セイタカトウヒレンの直立した総状花序のようすを「塔」に見立て、「塔飛廉」としたという。
牧野富太郎による「唐飛廉」説もある。
「ヒゴタイ」は同じキク科にヒゴタイ属 Echinops があるが、あまり似ていない。
「アザミ」についてはアザミ属 Cirsium に似ていることからつけられたと考えられるが、
本属の種にはアザミ属の種のように葉に刺がないため容易に区別がつく。 』
との記述もあった。

トウヒレン属の高山植物は、中部山岳ならば、
クロトウヒレンが一般的だか、東北では磐梯山以外では見かけない。

登山道を歩いていてふつうに見かける種類は、早池峰山ならばナガバキタアザミ
鳥海山や焼石岳では(ナガバキタアザミの)変種のオクキタアザミの二種類くらいだろうか。

2020/08/19 早池峰山にて。ナガバキタアザミ(右奥のピンク穂花はナンブトウウチソウ)。



2020/08/19 早池峰山にて。ナガバキタアザミ。



2014/08/24 鳥海山にて。オクキタアザミ。



2020/08/18 鳥海山にて。オクキタアザミ。




2020/08/18 鳥海山にて。オクキタアザミ。 
 

                                    2015/08/16 秋田駒ヶ岳にて。ウゴトウヒレン?

奥羽山系や鳥海山の高所草地では、右上写真のような地味な色合いのトウヒレン属をよく見かける。
同様のトウヒレン属は低山の林内にも多く、いずれも名前が一発で特定できないのがつらい。

乳頭山にはヤハズトウヒレンが有るようだが、下写真がそれにあたるかどうかは何とも言えない。

2016/08/11 乳頭山にて。ヤハズトウヒレン?



以上。


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2 コメント

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Unknown (ミルク)
2022-02-23 14:54:54
こんにちは。
アザミと一口にいっても、ずいぶん種類があって
私には、さっぱり見分けのつかない事です💦
鳥海アザミだは、うなだれている様子が、特徴と思ったら
鬼アザミも、うなだれているのですね。モーズイカさんは
とても詳しくて植物学者のようですね。勉強になります。
返信する
ミルクさんへ。 (モウズイカ)
2022-02-23 15:19:41
コメントありがとうございます。
高山の花といっても奇麗な花ばかりでなく、アザミのようにチクチク痛いものもあります。
しかしそれも山歩きの愉しみのひとつ。
それを表現したくて敢えてアザミを取り上げてみました。
返信する

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