モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

東北の高山のキキョウ科

2022年02月19日 | 高山植物

キキョウ科の高山植物と言えば、イワギキョウとチシマギキョウの二種が有名だ。

2018/07/20 鳥海山行者岳にて。イワギキョウ。



2018/07/20 鳥海山行者岳にて。イワギキョウ。
 


2016/07/23 月山にて。チシマギキョウ。



2015/07/05 月山にて。チシマギキョウ。



この二種はとてもよく似ている。
改訂新版・日本の野生植物(平凡社)によると、

イワギキョウ Campanula lasiocarpa
葉に小さな鋭鋸歯があり、萼裂片は狭披針形~線形でわずかに鋸歯がある。
花冠の内面と裂片の縁に毛は無い。

チシマギキョウ Campanula chamissonis
葉は縁に波状の小さな鈍鋸歯があり、萼裂片は広披針形でほとんど全縁。
花冠の内面と裂片の縁に長い軟毛がある。』

とあった。
東北の高山ではどちらも少ない。
しかも生育する山が限られており、両方揃う山は無いとされる。

したがって片方が有る山を知っておけば、迷うことはないだろう。

キキョウの仲間の分布マップ



イワギキョウは鳥海山、岩手山、八甲田山の三山のみ、

チシマギキョウはこれらの山には無く、
月山、朝日、飯豊、他には早池峰、八幡平、南蔵王にホンの少しと聞く。

日本アルプスや北海道の山では両方が同じ山に生えているので、
先の識別方法が出番となる。

ところでこの二種は学名からもお分かりの通り、 Campanula =ホタルブクロ属だ。


東北の高山には、Adenophora =ツリガネニンジン属もある。 
ハクサンシャジン(タカネツリガネニンジン)Adenophora triphylla var. hakusanensis
は、ツリガネニンジン Adenophora triphylla var. japonica の高山型とされる。

古い写真で恐縮だが、若かった頃、鳥海山で見たハクサンシャジンの花風景には圧倒された。
この年はニッコウキスゲやトウゲブキ、ヨツバシオガマなども一緒に咲いていた(通常は少しずつずれて咲く)。
このような花風景は他の山では見られないと思っている。

1993/08/08 鳥海山長坂道にて。



次は2008年、南面の八丁坂で見たハクサンシャジン。

2008/08/12 鳥海山八丁坂にて。




2008/08/12 鳥海山八丁坂にて。




2008/08/12 鳥海山八丁坂にて。
 


長年、使用していた二書、山渓カラー名鑑・日本の高山植物(豊国秀夫・編、山と渓谷社・刊)

と原色新日本植物図鑑(Ⅰ)(清水建美・著、保育社・刊)には
この植物をハクサンシャジンと掲載されていることから、
私はずっとその名前を使っていた。
ところが最近購入した改訂新版・日本の野生植物(平凡社)を見てショックを受けた。
変種としてのハクサンシャジンが消滅していたのだ。

該当箇所を抜粋すると、
「本州の高山帯には草丈が低く、花序の枝があまり発達せず、花が輪生してつくように見えるものが知られ、
ハクサンシャジンと呼ばれるが、低地の風衝礫地や海岸礫地にもこのようなものが見られ、
また必ずしもこの形質が遺伝的に固定しているわけでもないため、区別しない見解をとる」。

五十年近く使っていた名前をサラリと捨てることは私にはできそうにない。

比較的最近見たハクサンシャジンの花風景を。


2018/07/20 鳥海山御田ヶ原にて。バックに咲くのはトウゲブキ。



2020/07/30 鳥海山御浜にて。一緒に咲くのは、ヨツバシオガマ、ネバリノギランなど。



2020/07/30 鳥海山御田ヶ原にて。一緒に咲くのは、ハクサンフウロ、タカネアオヤギソウなど。



ハクサンシャジンの分布は山によって粗密があるようで、
特に多いのは鳥海山だが、

奥羽山系では乳頭山や和賀山塊、焼石岳に豊富な印象が有る。
乳頭山では登山道の両側がびっしりとハクサンシャジンに覆われ、思わずシャジンロードと呼びたいくらいだった。

2016/08/11 乳頭山にて。
 


2016/08/11 乳頭山にて。ミヤマトウキ、シロバナトウウチソウなども混生。




2019/07/26 和賀山塊薬師岳にて。

 
                                     2017/08/06 焼石岳にて。下の方の白い花はハクサンイチゲ。


2017/08/06 焼石岳にて。ハクサンフウロなども一緒。



2017/08/06 焼石岳にて。三界山方面を望む。



約30年前、北アルプスを訪ねた折り、此方で見かけるシャジン類はミヤマシャジンやヒメシャジンが多いと教えられた。

この二種は非常によく似ている。
萼裂片の鋸歯の有無で識別する(鋸歯が無ければミヤマシャジン)が、

現在、改訂新版・日本の野生植物(平凡社)では、ヒメシャジン Adenophora nikoensis で一本化されていた。
東北の高山では少なく、早池峰山、南蔵王、吾妻山、飯豊連峰などで報告されている程度だろうか。
なお以下の手持ち4書籍ではミヤマシャジンの名前が使用されていた。
◆早池峰連嶺の花(土井信夫・著、文化出版局・刊)
◆フラワートレッキング蔵王連峰(日野東+葛西英明・著、無明舎・刊)
◆フラワートレッキング吾妻連峰(日野東+葛西英明・著、無明舎・刊)
◆花かおる飯豊連峰(小荒井実・著、ほおずき書籍・刊)

私自身が早池峰山で見たものは、土井氏の著作に従い、ミヤマシャジンの名を使用した。

2020/08/19 早池峰山にて。ミヤマシャジン。




2017/08/03 早池峰山にて。ミヤマシャジン。ナガバキタアザミ(蕾)も一緒。




以上。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コバイケイソウとアオヤギソウ | トップ | はまでうつくしい?(2)深山や... »

コメントを投稿

高山植物」カテゴリの最新記事