消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

民営化される戦争とグローバル企業(7) 広島講演より(9月24日)

2006-10-31 23:57:17 | 世界と日本の今

世界を支配するIC技術

 そのICというものが世界を支配すると思います。必ずこれは軍事技術に応用されます。つまり、戦争の現場にどの程度必要物資を送るか、これは「ロジスティック」と言います。日本語でいう「兵站業務」をICが果たします。そうすることでどの地域にどれだけの武器が流れて今どこに集積しているか。こういったことが把握できるようになります。

 何よりも恐いのは私達が監視されるようになることです。これからは例えば携帯電話を駅でかざすと目的地へどういうルートで進めばよいかが携帯電話に入ります。便利になったなあと思います。けれどもこれは逆に言えば、私がどこにいるかが当局に見られていることになります。あるいは皆さん、カーナビを使っていらっしゃるでしょう。あのカーナビはスイッチを切ることができないことをご存知でしょうか。切っているように見えるけれども、あれは全部発信されているのです。だから、我々がどこにいるかがカーナビでわかる。

日本産業界も武器開発へ

 まあ、考えたくないけれども、本格的に監視される世界に私達は突入しているのです。その時アメリカ方式とか日本方式とかフランス方式とか各国毎に方式が変わっていたら困ります。ペンタゴンで統一することになる。そうしますとそういう企業に群がっていくでしょう。誇り高き三菱重工といえどもそれからはずれたら巨大マーケットを失います。ですから今、必死になって三菱は食い込もうとしている。そのためには武器三原則は邪魔だ、共同開発させてほしい、イージス艦の一部を我々にも作らせてほしいと。こういう方向へどんどん持っていかざるを得ない。そういう意味でも日米軍事同盟の一体化というのは、悲しいことながら産業界の方で一体化が進んでいると思わざるを得ない。これが現代版軍産複合体だということです。

宣伝映画のすごい影響力

 その状況を分かりやすく説明しますと、まず映画で宣伝します。もう腹が立ちます。海猿」というのでしたか、海上保安庁の宣伝映画を見たのですが、かっこいいですよ。上手に作りますよ。次第にその気になっちゃうのです。それで海上保安庁の人に聞いたら、「すごく今年は受験者が増えました」と言っていました。あるいは六本木ヒルズの前に突然戦車が現れるのです。東名高速度道路を富士駐屯地から戦車が走ってくるのではないのです。それこそばらばらに部品にはずし、六本木ヒルズの前に集めて、そこでみるみる組み立てて戦車ができる。こういう宣伝をあちこちでしていくのです。

 
そうしますと私達はああいう職業がかっこよくなるのです。ゴルゴ13(超一流のプロ狙撃者が主人公の劇画)麻生外務大臣なんかゴルゴ13の愛読者だと平気で言うでしょう。そんなことをやって結局私達は暴力を使うかっこいい職業として見るのです。こういった方向に次第に私達は洗脳されていくのです。

「労働の流動化」という首切り

労働の流動化」は、いまでこそ当局にとってありがたい便利な言葉です。私は経済学をやめたいくらいこの言葉が嫌いです。つまり首切りの自由化のことなのです。それを「労働の流動化」というのです。皆さんは本気でそう思いますか。やはり一生かけて成し遂げる仕事にみんなあこがれるわけです。しかし皆さん、今では中華鍋のない中華料理店、火のないレストランとかがあるのをご存知ですか。それこそ許せないのです。どこを見ましても店長だけが社員で後はみんなパートタイマーです。

 
「労働の流動化」で何が腹が立つかと言いますと、昔の日本の経営者はどんなにつらいことがあっても従業員の首は切らなかった。戦後の大変な労働争議、革命前夜であった労働争議、その労働争議を潜り抜けてきて日本的労使一体化路線にやっと来た。その時に労働組合に対する恩義があって首は切らない、ということが長いこと続いてきたのです。

 
これをいつの間にか、日本は労働賃金の硬直化で結果的に日本人の消費が伸び悩んだとか、護送船団方式とか文句を言われています。ふざけるなと言いたくなるのです。アメリカに文句を言われる前までは、日本には21都市銀行があって一つもつぶれなかったのです。しかも5.5%の利子があったのです。それが今は、都市銀行は3行くになってしまって利子は0.1%になったのです。何が金融の自由化だ、護送船団方式に戻せと言いたい。

 皆さんお気づきですか。最近の若い男の子達は、女の子に金を払わせている。飲みに行っても女の子に払わせる。なぜかというと、女の子はかわいいからパートで使ってもらえる。男の子は就職先がない。まずないのです。仕方なく女の子のヒモになっていく。こういうように男の子に就職先がないという社会。

 
こういう社会に先ほどの軍事的なものがポッと来たらどうでしょう。ちょうど戦後すぐで我々は生きるのが精一杯の時に突然暴力団が流行ったのと同じように、今の日本でもそういった土壌ができているのだと知っておいてほしい。おそらく若者達がそちらに流れていく可能性は否定できないと思います。ますます境界線はあいまいになってきています。


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