消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

民営化される戦争とグローバル企業(9) 広島講演より(9月24日)

2006-11-02 23:48:55 | 世界と日本の今


ビジネス対象にされる大学

 教育について言えば、日本の公立大学も法人化されました。ヨーロッパでは国立大学ではみんな授業料はただです。アメリカはそんなことは全然言わない。とにかく優秀な大学は民営化されているのだという言い方をする。そしてわが日本もやれというので我々も風前の灯です。


 私の学生時代は1年間の授業料が
7500円でした。ふすま張りの仕事でいいバイトがありましたので、むしろ親に仕送りをするようになりました。京都でのふすま張りのバイトはいいので、親にお小遣いあげようかと言っておりました。国立大学はただ同然だったのです。それに対して社会の人達は文句を言わなかったのです。


 今はそんなことしたら大変で、受益者負担と言って、大学を出たということでいい生活できるのだから当然授業料を払いなさいということで、授業料は
50万円を超えています。これも民営化されます。


 
の結果、日本の大学の授業料は、数年以内にアメリカ並みになります。つまり、いい大学ほど授業料は高く、ダメな大学ほど授業料は安いのだと。いい大学は授業料を500万円から800万円取っても人は来るであろうという形になってきまして、まあ400500万になるのはすぐそこです。私達は学生にいつも言うのです。君達は親によって大学に行かせてもらったけれども、君達は自分の子どもは大学に行かせられないぞと。


 例えば、県知事が理事長を指名する。理事長はアメリカ人で理事長が学長を指名する。学長が学部長を指名する。教授人事は教授会から奪っていき外の団体に頼む。そうなってきますと、まあ私なんか無理です。あんな日本の国の悪口を言っている奴がなんで大学の教授に留まっているのかけしからんではないかとなってしまう。結局、大学は民営化されていくのです。つまり今の日本の大学はみんな横並びで授業もそっくり変わらない。そして、外資系の大学が入ってきます。大学の規制緩和とは、校舎を持たなくてもいい、校庭も要らない、食堂も要らない、インターネットさえできればいいというものになります。今、ソフトバンクがそれをしようとしています。インターネットで各種大卒の資格がもらえるのです。


 こういった大学が次第に作られていって9月に入学式が変わります。そうするといつでもアメリカの大学に転入することができる。日本に進出しているアメリカの大学を卒業して
MBAをもらうという方向になってくる。そして、大学に行けるのはお金持ちあるいは政治家の息子とかになってしまいます。実力で入れるのは3分の1だけで後はコネクションでとなってきます。


「日米投資イニシアティブ」で圧力


「日米投資イニシアティブ」(投資促進のための日米合意文書)で、アメリカが日本にああしろこうしろと毎年言ってきているのです。「日米投資イニシアティブ」の今年の目玉は「医療」と「教育」なのです。けしからんです。日本は少子高齢化を迎える。だからこれからは医療と教育が重点になってきます。医療は分かりますね。我々おじんがたくさん増える。退職金をもらって病気になってくれると助かる、儲かる。


 教育はなぜなのだろう。少子化なのに。教育は今までは完全に「官」の社会であった。しかし、儲けてはいけない学校法人を株式会社や営利法人が儲けてもいい方向に持っていく。


 教育とは人格のことであって、人格溢れる先生に純粋な若者達がついていく。一生懸命に勉強に喜びを見出すのであって、少なくとも役に立たないことを一生懸命勉強することがものすごく大事なのです。そういった教育の原点が失われてしまう。皆が経営学修士になってしまう。文学修士なんかいなくなってしまう。源氏物語が読める日本人がいなくなってしまう。ほんとうにそうなってしまいます。そういう方向が儲か方向となってきている。「官から民へ」とは、儲けてはいけない分野で儲けてもいいというゴーサインなんだということを理解してください。


徴税業務も民間へ


 
そしてその典型例が駐車違反の取締りです。今まで「公」(おおやけ)がやっていたのです。それを民間に委託した。大変な事件だと思いませんか。そのうちに宅配便の連中が賄賂を使いますよ。そんなことされたら我々はやっていけないと言って、大手会社の警備会社に対して賄賂を渡してお目こぼしをとなる。こうなってしまうのです。


 これは徴税業務にも拡大されます。それもものすごく恐いのです。「官」だったら徴収ができないが「民」だったら徴収ノウハウがある。これはサラ金のことです。どれだけサラ金が恐いか。要するに徴収業務を民間人にまかせる。こうなってしまうと恐い恐い兄ちゃんが来ます。ものすごく恐いから徴収率が上がります。それみろ「官」より「民」のほうがすごいだろうとなってしまうのです。


規制緩和で日本を売り渡す人


 規制緩和委員会の座長を10年以上やってきた宮内義彦さん関係の会社が規制緩和の恩恵を受けた。これこそ取り巻き行政です自民党がぶっ壊れて何がオープンになったのでしょうか。一握りの経済財政諮問委員会という組織の中の人間達がいち早く情報をつかみ、そういう会社を起こしている。


 日銀総裁が村上ファンドに出資したらだめです。村上ファンドの村上世彰代表は少なくともあの
MA(企業の合併・買収)の法律作成に関与した本人なのです。こんなことをしていたら日本は堕落に次ぐ堕落です。そして日本の会社が儲かったのかと思いきや、規制緩和をしたら後ろから本家本元のアメリカがやって来た。


 
そういう意味で私達がそういう方向に向かっている現状を知ることがものすごく大事なのです。戦争中で占領されていた時代の日本ですらアメリカにここまで譲らなかった。戦争していないし占領されていない平和な日本が、この10年間で全ての分野においてアメリカに奪い取られていった。最後の聖域が医療と教育である。これも風前の灯火である。こういう状態になってきていることを理解してください。


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