5、医療や大学が民営化される実態
「官」より「民」がいいのか
「官から民へ」、これが流行語になっています。私も今、福井県庁に勤めていることになっているのですけれど、公務員は働かないと言われるたびに腹が立つのです。いつの間にか「官は馬鹿で民は賢い」というイメージで語られるようになってきました。しかし、そんな言葉遊びで翻弄されたらいけません。少なくとも「日米構造協議」で「官から民へ」と唱えられている「官」と「民」の区別は、儲けてはならない分野を「公」(おおやけ)つまり「官」がマネージメントする。どうぞ儲けてくださいという分野が「民」だということです。これを取り違えまして、少なくとも「官は馬鹿だからすべて民に変えていけ」という方向に問題がすりかえられている。ここが一番大きな問題だと思うのです。
大学も医療も外資が狙う
皆さんお分かりでしょうけれども、これから日本の大学はどんどんアメリカに買収されます。そして現在の構造改革の目玉の一つは医療保険です。なぜか知りませんが、テレビでいきなり外資の医療保険のコマーシャルが大量に始まりました。日本の生命保険会社はどこにいったのだという感じです。次は教育です。うちは小学校から大学院まですべて英語で通しますとやられたら、東京大学や京都大学といえどももう一瞬で崩れるでしょう。結局、東大も京大もアメリカの大学院にどれだけ合格させたかという一種の予備校になってしまうでしょう。次になるのはそれなのです。「教育はやられます」と声を大にして言いたい。
民営化で国民皆保険制度が危機
わが日本の医療制度は国民皆保険です。何がなんでも守りましょう。お金持ちでも貧乏人でも同じ医療を受けることができるのです。そして、給料の高い人ほど健康保険が高いのです。貧乏人ほど安いのです。高く払ったからといって高級医療を受けるわけではないのです。貧乏人と同じ医療なのです。これはすごいことだと思いませんか。少なくとも日本の国民1人当たりの医療費(総医療費を人口数で割る)は31万円程度で、米国は世界1高く、60万円近い。日本は国民1人当たりの医療費が安く最も長寿の国であることを誇りに思って当然と違うのでしょうか。
ところがいつの間にか、これはおかしい、すくなくとも高度の医療を受ける権利が国民にあるはずだ。だから国民皆保険を止めてしまえ。少なくとも保険外診療での民間保険適用を解禁しろと言う。保険外診療での民間保険適用を解禁することによって医療内容に応じての健康保険代がかかってきます。これが医療の民営化というものなのです。
外資に明け渡された保険の第3分野
もう少し詳しく言いますと、日本は生命保険を第1分野と言います。そして、損害保険、火災保険を第2分野と言います。その境界線にある医療保険、ガンについてのガン保険、疾病保険これを第3分野と言います。AIGグループが進駐軍と共に日本にやってきた。そして一生懸命に第3分野を開拓してきた。しかし日本の日本生命や東京火災海上とかの大手に苦しめられてきた。そこで日米保険協議により「第3分野に対しては日本の大手企業は参入してはいけない。アメリカの企業か日本の中小企業が第3分野に参入しなさい」と決めたのです。これが2001年まで続くのです。もう勝負はあったのです。
こういうことをやられると、AFLAC(アフラック:アメリカンファミリー生命保険)などは全世界に会社がありますけれど利益の70%は日本一国で稼いでいるのです。こういった分野が大きくなって、結局もっと大きくするためには、日本の国民皆保険制度をなくせと言ってくる。具体的に言いますと、これまでは、医者、医療機関は儲けてはいけない。そして健康保険を使うためには自由診療にしてはいけなかったのです。この薬の方がいいのだがなあと思い、認可されていないその薬を使った瞬間に、今までの保険治療は全部ご破算になる。全部実費を払えという事になっている。なぜ厚労省はそれをするのかというと、いたずらに医療費が高騰するのを防ぐために自由診療を認めなかったわけです。そうされると困るので、自由診療を認めろという方向にものすごい圧力がかかっているのです。
あっという間にテレビコマーシャルでは一番大事な我々の健康を守る保険がみんな横文字の会社となっている。