消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(49)新しい金融秩序への期待(49)排出権市場創出批判(4)

2009-01-08 13:21:27 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

本山美彦講演 質疑


質問 排出権をめぐって何が狙われているのか

本山――どうしてこの金融の自由化を嬉々として日本人は受け入れたのか。おそらくは、財界は、本当は分かっていてもアメリカに楯突いたら、権力が生きながらえた例がないことを知っているからです。と思ったと思います。財界の御手洗さんなんかでも、キヤノンの経営者であるときには、割と歯に衣を着せぬ形で反米的なことを言いました。経団連会長になったとたんおかしくなった。トヨタの会長もそうだった。

  郵政民営化のときには、米国は、日本車の輸入規制をちらつかせた。スーパー301条というものですが、郵政で日本が約束守らなかったら日本の最も得意とする分野でしっぺ返しをするという、とてつもない他国を威圧する法律がアメリカにある。それでそれまでかなりずけずけアメリカにものを言っていた奥田さん(前日本経団連会長・トヨタ自動車)が急に郵政民営化に賛成にまわった。心の中ではわれわれは食い物にされているとわかりながら、その怖れをオープンにしてしまうと、どんなしっぺ返しをされるかわからない、そういう恐れが財界には常にある。

  日米安保条約というのは軍事同盟ではなく経済同盟です。日米経済一体化ということが第2条にうたわれている。年次報告がある。6月と11月に必ず行われる。これでアメリカに対して約束したり、約束の履行程度が判定される。3月の貿易政策報告書というもので槍玉にあげられたら、日本は制裁措置を受けるという段取りになっている。非常に恐ろしいものを用意しながら交渉しているのが日米安保だと思います。基本的にはアジアがまとまって、少なくとも中国、朝鮮半島、台湾、日本とまとまって交渉する実績を一つでも二つでも作っていかなくてはならないのではないでしょうか。アジアは集団となってアメリカにものを言い、その反応を国民の前に知らせていくことをしていただきたい。

  ご質問の意味と違うかも知れませんが、私は暴力が秘密裏に使われていると疑っています。権力者といえども危ない。ほとんどのラテンアメリカの権力者たちは飛行機事故で死んでいる。そういう意味ではCIAは健在だということです。


質問 排出権取引のやりくちと国民にツケがまわるという関係性について


本山――価格というものは売りと買いで成り立つものだが、サブプライム問題でも排出権取引の問題でも、一方的に取引所を決めてしまう。だから、ロンドンの取引所が、日本は1トンあたり1万円だとした場合、イヤですと席をけったときに後何が起こるか。もっと安い所から買いますじゃないんです。売り手の完全独占なのです。その取引所を通さなければならないのです。これが排出権取引の実態なのです。

  世界のあらゆる所から自由に買えるのではなく、彼らを通さねばならないのです。言い値で買わされます。日本もそういう取引所をつくればいいじゃないかと言うけれども、残念ながらわが日本は辺境なのです。悔しいですけれど。アジアで紛争が起こったときに訴え出るのはアメリカの法廷に対してなんです。法律というのは議論じゃないんです。判例なんです。どういう判例が積み重ねられたかということで、判例のない日本で闘うよりも判例の宝庫のアメリカのほうが勝つか負けるかはっきりするんです。だからアメリカに行く。

  すると契約書はほとんど英語であるとなってくると、残念ながら英語圏が支配していく。日本の若者は失業の恐怖にあるのに、アメリカ人やイギリス人は国内で失業したらNOVAがあるんです。英語は巨大な産業なんです。この巨大な産業が金融に口をはさみ出したらどうなるか。契約に口をはさみ出したらどうなるか。わが日本でも法科大学院ができましたが、われわれが議論してつくったのではありません。アメリカから命令されてつくっちゃったんです。公認会計士も3倍に増やせと。すべて、日本の法律家と会計士はアメリカの巨大事務所の兵隊さんになれと。

  われわれアメリカ人は日本語をしゃべれないから、日本語をしゃべれる諸君たちがお客さんを取って来い、後の契約は英語でわれわれに任せろということなんです。そのためには兵隊さんがいっぱい必要だけど、エリートの司法官はいらないんです。兵隊さんが必要なんです。だから雨後の竹の子のごとくいっぱい法科大学院できた。どうなるか知りませんよ。そういう形で、そういう流れで日本の政策は一方的に押し切られているんだということの理解を私たち全員が持たなくてはいけない。

  今度の日銀総裁でも候補に上がった人は英語がしゃべれないというでしょ。ふざけるなと言いたい。G7だったら日本語を公用語にしろと言いたい。フランス人が英語しゃべると思いますか。わが日本はいつまでもアメリカにはいつくばらなけりゃいけないんじゃないか。

  大学存亡の危機は受験生が減るんじゃないんです。みんなアメリカに行っちゃうんです。危機は東大、京大も同じです。みんなアメリカに行く。アメリカ、アングロサクソンを本位とする世界システムに対して一矢報わなければならないし、そのためにわれわれはアジアに基盤を置くべきです。アジアで議論していく状況作りが必要だと思います。


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