森男の活動報告綴

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試製五式四十七粍自走砲・ホルについて(その3・完)

2016年10月09日 | AFVの模型
というわけで、ホルの3回目です。長々と引っ張ってしまいましたが、何卒ご了承ください。とはいえ、引っ張ったとはいっても、そんなに内容があるわけでもないのが辛いところですが、これまた何卒ご了承ください。ホルが実際の戦闘(まあ、ありていにいうと本土決戦のことですね)に参加した場合、どうなるのかな?ということについて、あれこれ考えたことを今回書いてみたいと思います。このイラストは実戦の様子を想像して描いてみました。空薬莢受けとかは、私の完全な想像です。

まず日本本土決戦について、ざっくり説明します。米軍の日本本土侵攻作戦「ダウンフォール作戦」は二段階からなっており、前段が九州南部に侵攻し、飛行場を確保する「オリンピック作戦」、後段がその飛行場を利用した航空戦力の援護を受けて、関東に侵攻する「コロネット作戦」となってます。両方の地域とも、日本軍も米軍の上陸の可能性がもっとも高い地域として、重点的に防備を重ねていました。本土決戦はいろいろな要素から考えると、沖縄戦並かそれ以上の過酷で熾烈な戦闘になったと考えられます。沖縄戦のように、日本軍側の戦力は限定されていませんし(無尽蔵ではないとはいえ、かなりの備蓄があったと思います)、民間人の戦意も高く(戦争終盤にはかなりの人心荒廃があったといわれてますが、まあそれでも)、そして日本側からすると「後のない」戦闘だったことなどから考えると、恐らく人類史上最悪の戦闘になったことは間違いないでしょう。ほんと、あの段階で戦争が終わってよかったと思います。あのままいっちゃってたら、多分、日本は滅亡してますよねえ、、。

まあなんであれ、戦車戦に限って考えますと、例えば独ソ戦のように、彼我の戦車がガチでぶつかる戦闘が行われることになったかというと、それはほとんどなかったんじゃないかなと思います。もともと日本側の戦車部隊は決して多くはないですし、しかもそのほとんどは九七式・一式中戦車という47ミリ砲装備の車両なので、ガチの戦車戦を避ける戦法を採ったはずです。そして、何とかシャーマンに対峙できる三式中戦車・三式砲戦車の生産数はごくわずかです。終戦が伸びて四式・五式が制式化・量産されていたとしても、その部隊の数は非常に少なかったかと。

ホルも、前回お知らせした神戸製鋼の社史どおりだったとしても50両という生産数では、戦局を挽回するほどの活躍は出来なかったのではないかと。終戦が伸びて生産が続けられたとしても、せいぜい100-200両を超えることはなかったでしょう。

しかしながら、これらの新型戦車・自走砲を装備した部隊は、局地的ながらそれなりの戦果を上げたんじゃないかな、というのが私の推測です。それは外地での戦車部隊の戦いぶりを見れば容易に推察できます。米軍に戦いを挑むのには厳しいとしか言いようがない車両を駆使し、隊員が創意工夫を重ねて、最大限の戦果を上げている例は枚挙に暇がありません。例えば、フィリピンの一式砲戦車の活躍などはその最たるものじゃなかろうかと思います。たった2両であれだけ頑張ってるのって、ほんと凄いと思いますよ、、。もし20両あったらどーなってたんでしょうね、、。

本土決戦では戦車戦が行われなかったかも、という推測の根拠としてはもうひとつあります。それは、日本の地形によるところが大きかったんじゃないかな、と。例えばクルスクのように、ばーっと無限に開かれた平地というのは日本にはありません。関東平野があるといっても、すぐ川とか山で遮られてしまいます。米軍が平地に戦車をばーっと展開させて攻めてきたとしても、関が原じゃあるまいし、日本軍戦車隊が受けて立つわけじゃないですしね。そういう場合は沖縄戦のように、山などに隠した砲陣地からの砲撃で対処するはずです。そもそも、ドイツもソビエトもクルスクを取り合う目的でああいうことをやっているわけですから、もろもろの条件が揃わないと「平原での戦車戦」というのは成り立たないんじゃないかと。

じゃあ、どういう風に日本側の戦車隊が戦ったのかと想像すると、これはもう防御戦闘しかないわけです。要するに、米軍の戦車隊の進路を予測し、こちらにもっとも有利な地形の地域で待ち構えて、攻撃する。戦果が上がれば、可能な限り後退し、次の地点で待ち受ける。これしかないんじゃないかなあ、と。

米軍の進路の予測、といっても実はそんなに難しいことではなかったような気がします。車で国内を走るとよくわかるのですが、隣県に向かう道路の選択肢というのはまあほとんどありません。地域にもよるでしょうが、せいぜい数本の国道があるくらいです。山越えとなると選択肢はもっと狭まります。田舎に行けばいくほど、A地点からB地点に向かう道は、二桁国道一本のみ、ということがよくあります。当時、戦車が走れる道路がどれだけあったかと思うと、攻める米軍戦車隊の選択肢は非常に限られたものじゃなかったのかなあと。

「陸軍機甲部隊」(学研)によりますと、九州南部の防備を担った第57軍がまず何をしたのかというと、それは戦車が進出できる道路網の整備だったそうです。要するに、根拠地から米軍のいる場所まで戦車が向かえる道路を整備しなければ、接敵すらできなかったわけです。逆に言うと、米軍も自分の望む道を走って来れなかったであろうということです。

宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」で、試作機を牛車で運ぶシーンがありましたが、あれは国内に飛行機を運べるトラックがないとかいう話じゃなくて(劇中に自動車はたくさん登場してますしね)、トラックに積んだ飛行機を壊さずに運べる「きちんとした道路がない」ということを表してるんですよね(多分)。要するに道路網というインフラが整っていないのに、世界レベルの戦闘機を作ろうとした歪な状況を描いているわけです。しかし、それでも世界レベルの戦闘機を作っちゃった日本ってスゴイ!のですが、話がそれるのでここまでにしておきます(笑)

というわけで、我田引水の重ね重ねにもほどがある言い訳(笑)はここまでです。要するに、自分たちのホームに引き込んじゃえば、なんとか一回くらいは勝てるんじゃないか、と言いたかった訳です(回りくどいなあ、、)。そこで考えてみたのが、この「必勝法」です。

①私が無理やり引き出した先ほどの結論の通り、米戦車が来られる道は限られてます。大体は、道路は山々の谷間にあって、左右どちらかには川があったりしますよね。待ち伏せするなら「あそこを目指すならここを通るしかない」という地点を探るのが肝要かと。
②ホルは、とにかく道路の左右に陣取ります。47ミリ砲はM4の側面なら比較的遠距離で(砲塔で700メートル・車体で1500メートル)貫通が可能です。「何が何でも、とにかく側面!」が合言葉であります!(悲)砲塔正面でも500メートル以内なら角度がよければ(こればっか)何とかなるかもダゾ!
③車体の小ささを生かして、とにかく頻繁に射撃地点を変更することが肝要です。事前に茂みや家屋など射撃地点を選んでおくことは必須でありましょう。短砲身の三突でソ連戦車7両を喰ったビットマンのように「頻繁に動いてれば敵は包囲されたと思うさ」って感じですかね。
④まず最後尾のM4をやっつけて退路を防ぎます。
⑤次に先頭のM4を仕留めて、残りの連中を動けなくしちゃうわけです。
⑥支援用に、75ミリ砲装備の三式砲か三式中戦車が1両でもあると文句ないのですが、まあこれは望みすぎでありましょう。でもあると嬉しいなっ!イージーエイトなんかでもイチコロっすよ!
⑦川の対岸にも1-2両配置してはさみ撃ちするのが基本でしょうね。小隊で最低3両、4両あるなら文句ないですね。
⑧田んぼには、出来る限り水を張っておいて、走りにくくしておかないといけないでしょうね。M4はキャタピラの幅が狭いので、泥濘地ではさすがにモタモタするでしょう。動きが鈍くなったところをガーンとやっちゃいましょう。
⑨挟まれた車両は、そのまま的になるか、田んぼにはまるか、川に落ち込むかしかないわけです。神州に土足で上がりこむ不逞の輩の運命は決まっているのであります(冗談です)。
⑩川の橋は、ホルはまあ渡れたとしてもM4には無理なものばっかでしょうから、対岸からアッカンベー(死語)してやりましょう。日本では普通にどこにでもある川も川原も、戦車にとってはどうしようもない嫌な地形ですね。こういうのを活用できるかどうかが、勝負の分かれ目といえるでしょう。

というわけで、簡単にシミュレーションしてみましたが、まあ何とかなりそうですね(ほんとか)。なんであれ、ガチの戦闘を避けて、土地勘からくる有利さを最大限引き出して、狭い地域に呼び込んでちょっとづつ潰していくというのがキモでしょうね。

で、山間部の戦闘はこんな感じでなんとかなる(?)のですが、都市部での市街戦はどうでしょうか。まあ、こちらも車体の小ささを生かして、ちょこまか動き回れば勝機はあるんじゃないかなあという気がします。「小さい車体に、それなりに威力のある砲を積んでいる」という長所を最大限生かせればかなりの活躍ができたんじゃないかと思ってるのですが。東京の市街戦でも、こんな感じで活躍したんじゃないかという想像図がこれ。

ばーっと挟み撃ちして、ささーっと路地に逃げ込んだら、M4も手出しできないんじゃないかなあ、、、、ってそんな甘くはないか、、。

とはいえ模型で比較してみると、M4との車格のあまりの違いにちょっとげんなりしてしまいます。

うーん、やっぱちょっとしんどいかな?とは思いますが、一方で砲の性能がいいので、それを加味すれば車体の小ささは逆に有利に働くんじゃないかな、と。例えば一式中戦車だと車体が大きすぎるために砲の性能が割り引かれちゃうような気もするんですよね。

懐に入っちゃえばこっちのもんだ!、、、ってことはないか(笑)でも、この距離なら必殺ですよ。ほんと。

ちなみにM4はタミヤのM4A3をほぼストレートで組んだものです。とてもいいキットですね。「にっくきシャーマン」みたいなことをずっと書いてますけど、シャーマンはシャーマンで好きなんすよね(笑)

でも、M4だからまだなんとかなりそうですけど、スターリンになっちゃうとお手上げです。

もう、ちょっと相手にならないような感じが、、。これがほぼ同時期なんですから、嫌になっちゃいますね。

128ミリ砲の砲身がホルの車体と同じくらいの長さですもんねえ、、。

ここまで迫っても、、無理か、、、。パーシングでも同様だと思います。うーん、悔しい、、。悔しいなっ!でも、五式ならなんとかなるかな?ホリなら圧勝だぞ!(空しい、、)スターリンのキットはドラゴンのものです。これも傑作ですねえ、、。もう一個作りたいです。スターリンは初期型の方が好きですね。

で、パーシングが出てこようがこまいが、北海道にスターリンが上陸してこようがこまいが(さらっと書いたけど、結構あり得るんすよね、、。この辺のシナリオって、考えれば考えるほど怖くなります。ほんと、あのタイミングでの終戦って僥倖に近いと思います)、それ以前に対処しなければいけない案件があります。航空機からの攻撃です。戦車隊がいくら頑張っても、制空権は恐らく100パーセント米軍に取られてしまいますので(残念ですが)、その辺の対処は必須になったんじゃないかと推察します。その辺の苦労はノルマンディーのドイツ軍と同じかそれ以上(対空火器が、、)だったんじゃないかな、と。

で、これまた小さい車体の有利さが働きます。カモフラージュがしやすいんですね。樹木によるカモフラージュとかを考えてて、ふと思いついたのがこの偽装ユニット。どーですか!(といわれても困るか、、)

杉などの軽い材木を使えば、重量もそれほどでもないと思いますし、何より雨がよけられるという実用的な長所があります(笑)

こちらが、簡易な藁タイプ。どーで(略)


どちらも案外、上空からはわかりにくいんじゃないかなあと。街道に寄せてじっとしてればわかりませんよね。多分。

なんであれ、それぞれ手近な材料で効果的なカモフラージュが出来るのがいいんじゃないかなと思うんですけどね。こういう風なものを作ったかどうかは別にして、本土決戦になると現場では知恵を絞って本当にあれこれ工夫したんじゃないかなと思います。


で、模型にしたらどんな風に見えるのかなあと思ったので、実際に作ってみました(笑)

いや、ほんと案外いけそうじゃありません?


材料は薄い杉の板です。至近弾一発で吹っ飛んでしまいそうですけど、戦闘までのカモフラージュの目的は十分に果たしてくれそうです。


きちんと作れば、日本の風景にしっかり溶け込んでくれそうですねえ、、。このジオラマはホビージャパンの五式中戦車の作例(このエントリーの「その1」で説明してます)で製作したものです。


ちょっと情けなく見えないこともないですが(笑)、あったらあったでなんか安心しそうな気もします。「我が家」って感じですねえ(笑)。隊員の中に大工さんとかがいたら、一日で一台分くらいは軽く作れるんじゃないかと。


思いつきで作ったのですが、結構気に入ってしまいました。でも、説明もなくジオラマに登場させても「ハアッ?」って感じでしょうね。どこかで何かに使えないかなあと思ってるんですけど、突飛すぎて難しいですね(笑)

というわけで、長々となりましたがこれにてお終いです。ホルの模型を作りながらあれこれ考えたり気が付いたりしたことのほとんど全てを、自分なりに何らかの形でまとめておきたかったというのが、この一連のエントリーを書いた大きな動機です。

今後、ホルについて興味を持ってくれたり、知りたいという人がこのブログを見て、少しでも何かの役に立ってくれればそれに勝る喜びはありません。推測憶測妄想の塊のような内容でしたが、その辺は差っぴいて参考にしていただければと思います。差っぴくとゼロかマイナスになっちゃうかもしれませんけど(笑)

なんであれ、ホルは謎の多い車両ですので、今後どなたかの手によって調査が進展したり、新たな資料が発見発掘されたりすることを願っています。繰り返しになりますが、これらのエントリーの内容の多くは、基本的に私の個人的な妄想や考察を元にしていますので、その辺はご配慮いただければ幸いです。もちろん、妄想だけではなくて、事実のことも書いています(この辺がややこしくて申し訳ないのですが、、)。例えば、神戸製鋼の記述については本当のことです。

というわけで、当分はこれまでのように適当な近況報告のエントリーになると思いますので、これまたあらかじめご了承ください。こんな内容でも、それなりに大変でしたので、ちょっと疲れました(笑)

それでは。




※この車両を使ったジオラマは月刊アーマーモデリング2015年4月号にて紹介されています。興味のある方はぜひ誌面をご覧ください。

参考までに、掲載時のお知らせのエントリーはこちらです。http://blog.goo.ne.jp/morio1945/e/0a2c497d62f7526393c4bee1bfb09f3a
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