2010年に初女さんはNHK
プラネットの依頼で゙生物多様性゙
について講演された時に、
大きな気づきがあったといいます。
それは、糠床は生物多様性なんだ!
という気づきです。
初女さんならではの気づきだと
思います。
亡くなられる前の年、作家の
田口ランディさんと、弘前在住の
コラムニスト山田スイッチさんと
私は、初女さんに呼ばれ、少し遅いお正月を初女さんの家でお祝い
しました。
すっかりお腹が一杯になった頃に
初女さんんが漬物の漬け方を
教えるから台所に来てと言った
のです。
私は、漬け方なんて特別なやり方が
あるんだろうか?と思いながら、
ちょっと急な階段を下りて、
凍てつく台所に行きました。
確か、きゅうりとセロリがあって
初女さんが、震える手で包丁を
持ち、きゅうりのボツボツをとっているのを見たとき、何だか
初女さんのいのちの炎が消えていくように思えて、頭が真っ白になったのを今でも覚えています。
初女さんが、糠床を私たちに
下さると言われ、ランディさんが
必死で断って(結局、もらってきたのですが)そのやりとりに、私の不安は
掻き消されていました。
再び二階に戻ると、初女さんは
ランディさんに『糠床は生物多様性なの。そのことを書いて下さい。』と言われて、本を何冊か
ランディさんに託されました。
その夜、その本を読まれた
ランディさんが翌朝、『生物多様性って地球なんだよ。地球という糠床に私たち一人ひとりがいるんよ。』と言われたのです。
そうか~そうなんだ!さすが
ランディさん!と思いました。
糠床には、茄子は茄子のまま、
きゅうりはきゅうりのままで
入っているだけで、美味しい漬物になります。茄子はきゅうりを茄子に
しようとは思わないのに…
人間はどうでしょうか。
地球という糠床で、私たち人間の
していることは、何なのでしょう…
『糠床は生物多様性なの』と
言った初女さんの言葉が、今また
深く深く響いてきます。
ぬか床って
゙生物多様性"だと思うんです。
米ぬか、塩、昆布、鷹の爪、
きゅうり、にんじん、なす
大根、食パン、りんご、
ヨーグルト……
それぞれがそれぞれのままに
おいしさを引き出しあう。
あるがままにいるだけで
互いに支えあってるの。
多様なものが
多様なまま響きあい
ともに生きる。
それがいのちの摂理です。
佐藤 初女