(2)「筆界確認情報」提供要求の現状に関する現実認識
この事実認識をめぐる問題は、より基本的な事柄についてもあります。
そもそも、「筆界確認情報」は、どの程度求められているのか、どのような場合にどこまでの範囲で求められているのか、ということに関する事実認識です。
「法務局によっては、一定の場合に確認情報を求めないこともあり、統一がされていない」と言われる全国的な実態については、次のようになっていると言われます。
「筆界確認情報」の提供を求めるという規定あるのかどうか、ということに関する全国各局の実情は、「提供を求める」24局、「可能な限り求める」10局、「提供を求める規定なし」16局であり、印鑑証明書の添付については「提供を求める」9局、「可能な限り求める」11局、「提供を求める規定なし」30局となっている、とのことですが、この分類では実態を見切れない部分があるように私には思えます。
その点を見るために、私の知る大分(九州)の状況について見てみます。
大分(九州)の法務局には、「土地建物実地調査要領」(平成23年11月15日改訂)というものがあり、その第35条で「筆界の認定」に関することが規定されており、それは次のものです。
このような大分(九州)の規定を、私は合理的なものだと思いますが、これは上記の全国の実情に関する分類でいうと、どれにあたるのでしょうか?たしかに「筆界確認情報」の作成・提供に関する規定はありますし、印鑑証明書についての規定もあります。しかしそれは、例外規定のうちの一つとしてなのであり、「提供を求める」というのとは違いますし、「可能な限り求める」というのとも違うように思えます。
ここでは、問題は「筆界確認情報」を軸にして立てられているわけではないのです。それはあくまでも、「必要があるときは求める」ものに過ぎないのであり、「必要でないときは求めるまでもない」ということになるわけであり、「筆界確認情報」をどうするか?ということが主要議題として立てられているわけではないのです。
これは、きわめて当たり前のことで理論的な考え方として正しいものと思えますし、実務上の感覚、現実に登記審査の中で行われていると思われることと合致するものです。
そしてこの「必要な時に求める」ということであれば、次の問題は「どのような時に必要とするのか?」、逆に言うと「どのような時には不要なのか?」ということが問題になります。問題は、あくまでもここに立てるべきなのであり、「筆界確認情報を求める」取り扱いが広く行われている、ということを前提にしてしまったうえで、「確認情報を得ることが困難な場合」にはどうしようか(不要又は軽減できるか)、というようなところで立てるのは、「筆界確認情報」に引きずられすぎた問題の立て方なのであり、正しくないように思えます。
参考
なお、改定前の平成19年制定の大分(九州)の法務局「調査実施要領」では、次のような規定になっていました。
それにしても、この平成19年要領では、「立会証明書」という「筆界確認情報」の提供ということで本則が立てられ、その適用除外をも考える、という形で構成されていたわけですが、平成23年改訂版は、そもそもそのような構成をとっていません。この違い(進化)を、10年後の今、改めて考えるべきだと思います。
この事実認識をめぐる問題は、より基本的な事柄についてもあります。
そもそも、「筆界確認情報」は、どの程度求められているのか、どのような場合にどこまでの範囲で求められているのか、ということに関する事実認識です。
「法務局によっては、一定の場合に確認情報を求めないこともあり、統一がされていない」と言われる全国的な実態については、次のようになっていると言われます。
「筆界確認情報」の提供を求めるという規定あるのかどうか、ということに関する全国各局の実情は、「提供を求める」24局、「可能な限り求める」10局、「提供を求める規定なし」16局であり、印鑑証明書の添付については「提供を求める」9局、「可能な限り求める」11局、「提供を求める規定なし」30局となっている、とのことですが、この分類では実態を見切れない部分があるように私には思えます。
その点を見るために、私の知る大分(九州)の状況について見てみます。
大分(九州)の法務局には、「土地建物実地調査要領」(平成23年11月15日改訂)というものがあり、その第35条で「筆界の認定」に関することが規定されており、それは次のものです。
「第35条 登記官は、地積の更正又は分筆の登記等において,土地の筆界の認定を行う揚合は、申請人又は申請代理人、隣接する土地の所有者等の立会いを求めて行うものとする。ただし、以下のいずれかに該当する揚合については、立会いを省略することができる。
(1)附録第12号様式による立会証明書又はこれに準ずる証明書が印鑑証明書を添付して提出されている揚合であって、申請情報、添付情報及び登記官が登記所内外で収集した資料と現地とが整合しており、筆界が明確である揚合。ただし、印鑑証明書を添付することができない揚合は、証明者本人が署名したことを申請人又は申請代理人が当該証明書に添え書きし、これについて申請人又は申請代理人が署名・押印したものを添付することで差し支えないものとする。
(2)法第14条第1項地図が整備されている地域に所在する土地の筆界であって、当該地図の現地復元により指示される地点に地図作成当時に設置された筆界点と認められる規則第77条第1項第9号に規定され別表第4に掲げる境界標及び地図作成当時に測量の基礎となった規則第10条第3項に規定され別表第4に掲げる基本三角点等が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等により当該筆界を現地において復元することができる場合
(3)現地復元性のある地積測量図が提出されており、当該地積測量図の現地復元により指示される地点に地積測量図作成当時に設置された筆界点と認められる境界標、地積測量図作成の測量の基礎となった基本三角点等又は別表第4に掲げる恒久的地物が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等又は複数の境界標及び恒久的地物により筆界を現地において復元することができる場合
(4)当該筆界について、筆界特定がされている揚合」
筆界認定を行うに当たっては、登記官が実地調査で土地所有者の立会を得て行うことを本則とする、という建前(これ自身現実に即さないものでいかがかと思いますが)の上で、その適用除外として(1)~(4)が挙げられています。そのなかの(1)が「筆界確認情報」の作成・提供を求める規定であり、(2)は14条地図、(3)は既提出地積地積測量図によって復元可能な場合、(4)は筆界特定のなされた土地、というものです。(1)附録第12号様式による立会証明書又はこれに準ずる証明書が印鑑証明書を添付して提出されている揚合であって、申請情報、添付情報及び登記官が登記所内外で収集した資料と現地とが整合しており、筆界が明確である揚合。ただし、印鑑証明書を添付することができない揚合は、証明者本人が署名したことを申請人又は申請代理人が当該証明書に添え書きし、これについて申請人又は申請代理人が署名・押印したものを添付することで差し支えないものとする。
(2)法第14条第1項地図が整備されている地域に所在する土地の筆界であって、当該地図の現地復元により指示される地点に地図作成当時に設置された筆界点と認められる規則第77条第1項第9号に規定され別表第4に掲げる境界標及び地図作成当時に測量の基礎となった規則第10条第3項に規定され別表第4に掲げる基本三角点等が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等により当該筆界を現地において復元することができる場合
(3)現地復元性のある地積測量図が提出されており、当該地積測量図の現地復元により指示される地点に地積測量図作成当時に設置された筆界点と認められる境界標、地積測量図作成の測量の基礎となった基本三角点等又は別表第4に掲げる恒久的地物が現存しており、これら複数の境界標及び基本三角点等又は複数の境界標及び恒久的地物により筆界を現地において復元することができる場合
(4)当該筆界について、筆界特定がされている揚合」
このような大分(九州)の規定を、私は合理的なものだと思いますが、これは上記の全国の実情に関する分類でいうと、どれにあたるのでしょうか?たしかに「筆界確認情報」の作成・提供に関する規定はありますし、印鑑証明書についての規定もあります。しかしそれは、例外規定のうちの一つとしてなのであり、「提供を求める」というのとは違いますし、「可能な限り求める」というのとも違うように思えます。
ここでは、問題は「筆界確認情報」を軸にして立てられているわけではないのです。それはあくまでも、「必要があるときは求める」ものに過ぎないのであり、「必要でないときは求めるまでもない」ということになるわけであり、「筆界確認情報」をどうするか?ということが主要議題として立てられているわけではないのです。
これは、きわめて当たり前のことで理論的な考え方として正しいものと思えますし、実務上の感覚、現実に登記審査の中で行われていると思われることと合致するものです。
そしてこの「必要な時に求める」ということであれば、次の問題は「どのような時に必要とするのか?」、逆に言うと「どのような時には不要なのか?」ということが問題になります。問題は、あくまでもここに立てるべきなのであり、「筆界確認情報を求める」取り扱いが広く行われている、ということを前提にしてしまったうえで、「確認情報を得ることが困難な場合」にはどうしようか(不要又は軽減できるか)、というようなところで立てるのは、「筆界確認情報」に引きずられすぎた問題の立て方なのであり、正しくないように思えます。
参考
なお、改定前の平成19年制定の大分(九州)の法務局「調査実施要領」では、次のような規定になっていました。
(立会証明書等の添付)
第24条 地積の更正の登記の申請情報には、できる限り,当該±地に隣接する土地の所有者又は代理入において作成した「土地の筆界について異議なく確認されたものである。」旨の、附録第9号様式による立会証明書又はこれに準ずる情報の添付を求めるものとする。
2 前項の添付情報には、できる限り、関係人の印鑑証明書の添付を求めるものとする。
この改定前の規定であれば、「筆界確認情報の提供」「印鑑証明書の提供」のいずれについても「可能な限り求める」に分類するので妥当なのだと思われますが、それでも、分筆の場合には「添付された地積測量図が既提出の地積測量図と符合する場合には、添付を省略することができる」(4)、「立会証明書は、登記官において、添付された実地調査書の記載等によって、筆界が確認されたことの信ぴょう性が得られた時は、その実地調査書をもってこれに代えることができる」(5)とされていたのであり、何が何でも提出を求めるというものではなく、「必要に応じて」という面を持つものであった、と言えます。第24条 地積の更正の登記の申請情報には、できる限り,当該±地に隣接する土地の所有者又は代理入において作成した「土地の筆界について異議なく確認されたものである。」旨の、附録第9号様式による立会証明書又はこれに準ずる情報の添付を求めるものとする。
2 前項の添付情報には、できる限り、関係人の印鑑証明書の添付を求めるものとする。
それにしても、この平成19年要領では、「立会証明書」という「筆界確認情報」の提供ということで本則が立てられ、その適用除外をも考える、という形で構成されていたわけですが、平成23年改訂版は、そもそもそのような構成をとっていません。この違い(進化)を、10年後の今、改めて考えるべきだと思います。