実務家弁護士の法解釈のギモン

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一般社団,一般財団法人法(6)

2009-08-24 11:49:47 | 一般法人
 非営利法人性(2)

 一般社団法人・一般財団法人との対比でいうと、会社法には、株式会社に関し、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しないと規定する(会社法105条2項)。会社法のこの規定は、成案が出来上がるまで議論のされたことのないところだったようで、法制審議会でもほとんど議論の対象となったことはないようである(江頭憲治郎「新会社法制定の意義」・ジュリスト1295号6頁)。そのため、会社法制定時にはこの会社法105条2項の意味が問題となり、剰余金の配当と残余財産の分配の全部を与えないという定款の規定のみが無効なのであれば、一方のみを与えないという規定は有効なのかどうか、といったことが議論の対象となっているようである。が、「報告書」の上記イ)、ウ)の指摘、一般社団・財団法人法の規定を前提とすると、会社法案を閣議決定する段階では、すでに、非営利法人法には社員や設立者に剰余金、残余財産の分配をすることを認めない規定を設けることがあらかじめ前提となっており、非営利法人と会社との違いを際立たせるために株主に対する剰余金、残余財産の分配を全部認めない定款の効力を否定する条文(会社法105条2項)を設けた、とも理解できそうであるが、深読みのしすぎであろうか。もし、そうだとすれば、会社法105条2項は、単に株式会社は非営利法人ではなく営利法人であることを宣言した点に大きな意味があり、その趣旨に則って解釈すべき規定であるということになろうか(例えば,残余財産の分配のみ認め,配当は一切なしとする定款も,企業の永続性の観点からすると,実質的に同条違反となる可能性は高いというべきか)。また、この規定が株式会社にのみ規定され、持分会社に規定されていないのは、片手落ちだったということになりはしないだろうか。
 他方で、一般社団法人、一般財団法人の定款記載事項としての目的に、なんら制限がない。したがって、一般社団法人、一般財団法人の事業目的には法律上の制限はなく、社員や設立者に剰余金や残余財産の分配を行わない限り、法人として収益事業を行うこと自体は自由ということになりそうである。したがって、株式会社が行う事業と全く同じ事業を一般社団法人や一般財団法人が行うことも、可能というべきなのであろう。そうすると、今後の可能性としては、いわゆる民間企業といわれる企業の中に、一般社団法人や一般財団法人という形式の法人が出現する可能性もありうるだろう。場合によっては,証券取引所のような公共性の高い企業形態では,(現在は株式会社形態が可能となっているが)一般社団法人形態の法人を可能とする立法化もあり得てもよさそうである。
 ただし、公益認定を受けた公益法人においては、収益事業は一定程度に制限される(公益法人認定法2条7号、15条2号、18条4号等)。