実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

給付利得の返還請求権(1)

2009-08-27 13:17:50 | 債権各論
 我々実務家にとって,不当利得類型論というのは,あまり縁のない分野である。おそらく,最高裁の判例の中で類型論に言及した判例は存在しないと思われるし,実務的には給付利得の返還請求に分類される事案であっても,侵害利得の返還請求に分類される事案であっても,ともに基本的には民法703条以下の条文を形式的に適用することで解決してきていると思われ,場合によって個別事情を考慮して判断している判例もなくはない,というのが実務の実態ではないかと思われる。
 そのため,実務家の多くは,不当利得類型論はあまり知らないのではないかと思うし,かくいう私も,ほとんど分かっていない。実務家にとっては,不当利得の分野は判例をどれだけ知っているかが勝負かと思っている。
 ただし,最近の民法の教科書は,程度の差こそあれ,たいがい何らかの形で類型論に言及しているようである。そこで,最近の教科書の不当利得の部分を通読して感じた印象(私見といえるほどのものではない戯れ言である)を,何回かに分けて大胆な発想で展開してみたい。