実務家弁護士の法解釈のギモン

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一般社団,一般財団法人法(5)

2009-08-21 10:49:06 | 一般法人
 非営利法人性(1)

 一般社団・財団法人法は、非営利法人についての法律のはずであるが、一般社団・財団法人法のどこにも非営利を目的とする法人であるべきことについて規定がない。代わりに、一般社団法人に関しては、社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しないと規定し(11条2項)、かつ、社員総会は、社員に剰余金を分配する旨の決議をすることができないと規定する(35条3項)。一般財団法人に関しては、設立者に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めの効力を有しないと規定する(153条3項2号)。なお、中間法人法2条1号では、中間法人法の定義として、剰余金を社員に分配することを目的としない社団であることが一つの要件であった。
 この点、「報告書」には、営利法人と区別する方法として、社員の権利義務について、ア)出資義務を負わない、イ)利益(剰余金)分配請求権を有しない、ウ)残余財産分配請求権を有しない、エ)法人財産に対する持分を有しないこと、とする旨が明記され、このイ)、ウ)が明文化されたということになる。
 以上の意味するところは、営利法人性の理解にかかわる。すなわち、会社が営利法人とされる理由は、会社がその事業行為(会社法では、「営業」という言葉を使わず、「事業」という言葉に変わっている)により収益を上げる点ではなく、その収益を会社の構成員である社員に分配するところに、会社の営利性を見出すのが一般である。そのため、一般社団・財団法人法においては、社員や設立者に対して剰余金や残余財産の分配を認めないことにより、非営利法人性が観念できるという立法趣旨なのであろうと思われる。