実務家弁護士の法解釈のギモン

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再転相続人の熟慮期間(2)

2019-09-12 13:06:13 | 家族法
 問題は、再転相続に関する民法916条の解釈である。同条が想定している単純な事例は、甲が死亡した後、相続人である乙が、甲の相続を放棄や限定承認をするか否かの熟慮期間を経過する前に、放棄も限定承認も(もちろん承認も)しないで死亡した場合において、乙の相続人である丙における、甲の相続についての熟慮期間がどのようになるかについて規定しており、丙が「自己のために相続の開始があったことを知ったときから起算する。」となっている。
 この、「自己のために相続の開始があった」について、従来の相続法の教科書での説明では、乙の死亡による相続の開始を意味していたように思う。要するに、丙における甲の相続に関する熟慮期間も、乙の死亡を知ったときから起算されるのである。この解釈の意味するところは、乙が死亡する前に経過した熟慮期間は丙が引き継がないということであり、丙の熟慮期間はリセットされて乙の死亡を知ったときから改めて進行することを意味する。
 単純に、祖父甲が死亡し、父乙が熟慮期間経過前に死亡したことを考えると、本人丙は、乙の相続に関する熟慮期間も、甲の相続に関する熟慮期間も、乙の死亡を知ったときからと考えて、あまり問題はなさそうである。

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