実務家弁護士の法解釈のギモン

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和解成立による訴訟終了宣言の無効主張と不利益変更(7)

2016-04-06 15:36:06 | 民事訴訟法
 ただし、それでも問題が残るのは、民事訴訟法307条は、例外として、事件についてさらに弁論をする必要がない場合は一審に差し戻さなくてもいいとなっている点である。つまり、訴えを却下する一審判決に対し、控訴審においてこれを取り消すとしても、本案の審理としてさらに弁論を開く必要がない事件であれば、控訴審において自判していいということである。
 弁論を開く必要がない事件とは、既に一審段階で本案の審理が尽くされている事件ということになる。どのような類型の訴訟が想定されるかを多少具体的に言えば、本案の権利義務の内容と訴えの利益が絡んでいて、訴えの利益の有無の判断の前提として事実上本案の権利義務の判断をせざるを得ないような事案が典型事案といえるだろうか。

 この場合は、訴え却下の一審判決に対して、控訴審はそれを取り消した上で本案の判断をしてもいいことになるので、これと同様に、和解成立による訴訟終了宣言判決に対する控訴審において、これを取り消した上でさらに弁論を開く必要がなければ、一審に差し戻さなくてもいいということにもなりそうである。
 ただし、訴え却下に対して控訴するのは、通常は原告である。被告側も控訴の利益はあるとはいわれるものの、通常あまり想定はしがたい。原告控訴事案であれば、不利益変更との関係でも、取消自判もあまり問題はない。ところが、今回の判例と比較する場合は、通常は想定しがたい被告控訴事案で考えなければならない。

 この被告控訴事案の場合、訴え却下判決や和解成立による訴訟終了宣言判決と、一部認容判決との、どちらが不利益かを検討せざるを得なくなるという問題が残ってしまいそうである。

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