実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

会社法改正要綱案-キャッシュ・アウト(3)

2012-10-09 09:59:52 | 会社法
 そもそも、こうした中小企業の場合の株主は、どこで利益を得ているかというと、配当によって利益を受けているのではなく、その会社の役員などに就任して、その役員報酬などで利益を得ているのである。だから、配当など必要がない。

 このような会社でよく起こることは、経営上の対立などで少数株主たる役員が役員から外され、会社経営から完全に排除されてしまうということである。そうなると、当該会社の株主ではあっても、何の利益も生み出さない株式を所持しているだけとなる。そこで、このように会社経営から排除された株主は、少数株主権を行使するなどして会社に対して嫌がらせをすることになる。大株主たる社長がこれを嫌えば、今回の改正要綱で制度化が図られている売渡請求を行い、ごくわずかな一株あたりの純資産とごくわずかな純利益、無配等を理由に雀の涙ほどの対価での売り渡しを求めてくるという図式が、考えられそうなのである。
 しかし、経営が順調な中小企業であっても、純資産や純利益が薄い場合があり、それがなぜかかといえば、役員が利益相当分をほとんど役員報酬として食いつぶしているからに他ならない。このような会社において、単純な純資産方式、配当還元方式あるいはDCF方式による株価の算出で雀の涙ほどの対価での売り渡し請求を認めてしまうとすれば、私には妥当とは思えないのである。