浴衣を着た関取が二人、テーブルを挟んで向かい合って椅子に腰かけている。
私は行事の位置に腰かけている感じ。二人ともハンサム、無言でお互い見合っ
てにこにこしている。右側の若い方は若島津って名前かなあ、相撲の事詳しく
ないので。前方からまわし姿の朝青龍が入ってきて、水色の風呂敷包みを持っ
て後を付いてくる関取に
「料理、若いもんにくれてやれ」
と声をかけて、私たちの脇を通り過ぎていく。
で、重箱が二つ私の前にある。ひとつは炊き込みご飯で、へりに沿ってまある
く箸を付けた形跡がある。もう一つは鯛かなあ、頭も骨もなく切り身のように
も見えるけれど、こちらもあちこち箸を付けた感じ。お祝い事でもあったのか
なあ、手つかずのを期待する程虫のいいこと考えてないんで、ほんとご馳走に
ありつけてありがたいという感じで、炊き込みご飯の方からいただく。
今まで無言で微笑んでいた左側の親方が
「料理をあげなさい」
といい、若島津が「はい」と返事。私はなんかたいそうあわてて、
「この料理は先程頂いたもので、貴方方から頂いたものではありませんよ」
二人はちょっと驚いたふうにこちらを見る。
「はは、そんなこと分っていますよね。言わずもがなの事をつい口走っちゃう
のが、私の昔からの悪い癖で、いやこりゃまあほんとうに失礼しました」
と、恥ずかしさのあまり重箱のご飯に顔をくっ付けるようにして隠す。
私は行事の位置に腰かけている感じ。二人ともハンサム、無言でお互い見合っ
てにこにこしている。右側の若い方は若島津って名前かなあ、相撲の事詳しく
ないので。前方からまわし姿の朝青龍が入ってきて、水色の風呂敷包みを持っ
て後を付いてくる関取に
「料理、若いもんにくれてやれ」
と声をかけて、私たちの脇を通り過ぎていく。
で、重箱が二つ私の前にある。ひとつは炊き込みご飯で、へりに沿ってまある
く箸を付けた形跡がある。もう一つは鯛かなあ、頭も骨もなく切り身のように
も見えるけれど、こちらもあちこち箸を付けた感じ。お祝い事でもあったのか
なあ、手つかずのを期待する程虫のいいこと考えてないんで、ほんとご馳走に
ありつけてありがたいという感じで、炊き込みご飯の方からいただく。
今まで無言で微笑んでいた左側の親方が
「料理をあげなさい」
といい、若島津が「はい」と返事。私はなんかたいそうあわてて、
「この料理は先程頂いたもので、貴方方から頂いたものではありませんよ」
二人はちょっと驚いたふうにこちらを見る。
「はは、そんなこと分っていますよね。言わずもがなの事をつい口走っちゃう
のが、私の昔からの悪い癖で、いやこりゃまあほんとうに失礼しました」
と、恥ずかしさのあまり重箱のご飯に顔をくっ付けるようにして隠す。