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はじめての・・・

ブログ10年目…庭、踊り、ウォーキング、ギター、ゲーム

サ店にて -1-

2006-04-12 02:43:27 | エチュード
「・・・うん、いつものサ店にいるから。そんじゃ」
「ここはサ店じゃありません、レストランです」
「マスターがコーヒーとジャズにやたらこだわるサ店ってことで、連れから紹
介されたんで」
「困るんだよね、男の学生ばっかり集まる店は。煙草ふかしてコーヒー一杯で
何時間もねばってさ。大抵、オーナーは店をたたむ羽目になる」
「すみませんねえ」
「だから、煙草もマンガも雑誌も新聞もこの店にはおかない。あんた学生さん
じゃないよね。暇そうに見えるけど店手伝ってくれない?」
「いえ客のままでいいです。サ店で働いたことはありませんので」
「昼間だけ、洗い物だけでいいから、次の娘が見つかるまで。私一人で困って
るんだ。今からお願い」
「今からって、今から僕ここで友達に会う事になってるんですけど」

「結局、オーダーもやるんですか?食べ物のこと判りませんよ」
「メニューに書いてあるのだけ注文すればいいの。それに今はまだピザしかや
っていないので簡単でしょ」
「サラミって初めて聞くな。鯨じゃないベーコンって初めてだし。マッシュル
ーム、アイシー。シュリンプねえ」
「海老の皮をむく時はこうして尻尾の先端までつけてね。ちゃんと二股に分か
れるでしょ」
「おお。こんなちっちゃい尻尾が。こだわりますねー」
「嫌々やっている娘は、先っぽみんなちぎっちゃう」
「そんな事ぐらいで、後先考えずに女の子クビにしないで下さいよ。早く代わ
りの子見つけて下さい」

「・・・ただでも働きますからって、この店はボランテアを募集していません
ので結構です・・・あなた、まだ学生でしょ。勉強が大事じゃないですか・・
・昼間の忙しい時に電話をかけてくるのは非常識です。もっと相手の立場を考
えなさいよ・・・」

マスター、バイト断るのはいいけれど、もっとやさしい言い方があるんではな
いでしょうかね。女性客増やしたいと言っているけれどそんな言われ方された
ら客としても来なくなりますよ。私だって、ちっちゃな海老の皮むきとおしぼ
り巻きで一生終えたくないです。

こもん さば?

2006-04-11 05:17:20 | エチュード
ああ、なんてもったいない事をしてしまったんだと思う。自分の人生に対して。
懐かしくても逢うことがかなわぬ人を思って、胸を切り裂くような思いをする
事はままあるけれど、過去の自分をこんなにもいとおしく求めたのは初めて。
いつでも手の届くところにいると思っていたんだ、息子達のように。油断した
ね。

きっかけは何だ。自分を活かして活躍している人を目の当たりにしたからか?
古いアルバムを失くした事を思い出したからか?スポーツジムが閉鎖したこと
か?故郷の店でなつかしいピザを食べた事か?それら全部そしてテレビを通し
てフランス語にまた出会えたこと。

うら寂しい教室の片隅で

2006-01-25 00:07:33 | エチュード
うら寂しい教室の片隅で


うら寂しい教室の片隅で
こうして二人は向かい合って
こうして二人は話をする

さようなら ○○
僕らもうこんな風な気持ちになって
こんな風に語ることは無いだろうが

・・・

僕ら高三の正月だっただろうか、我が家に遊びに来たとき学校が見たいってい
うんで、誰もいない教室に二人で忍び込んだんだよね。

・・・私の名前の所○○になってるぞい。

そしたら今度は大学の授業に一緒に出たいと言いだしてさ。

・・・高卒して就職したから、大学生を一度やりたかったのです。

どうせ、講義解りゃしないから後ろで編み物でもしてたらっていったら、本当
に編み棒と毛糸玉もってやってきてさ。

・・・てっきりマンモス教室だと思っていたんよ。

3年から専門課程になるからね40名位になっちまうのよ。新学期が始まった
ばかりで、どうせお互いツラも判りゃしないさっておいらは思ってたけど。

・・・教室には助手の人が二人もいて、演習問題かなんか渡そうか迷ってたよ。
編み物諦めて貴方から借りた「間違いだらけの青春」読んでいました。

数日後、校舎のやたらあちこちに「本校に関係ない者の無断立ち入りを禁ず」
という看板が目に付くようになってさ。新しいのでなくどっか物置から慌てて
引っ張りだしたって感じ。

・・・迷惑をおかけしましたね。

こちらこそ。

それから

2005-11-22 00:31:55 | エチュード
N大学付属病院を出ると、母と二人で近くのテレビ塔に登った。何もかもが白
く明るく、私はそこで声を上げて泣いた。目が見えなくなったら涙も出なくな
るのだろうか、そんな事を考えながら。

母は私から少し離れて遠くの景色を眺めていた。横顔が少し微笑んでハミング
しているように見える。気が狂ったのだろうか。その時初めて、母が指を無く
した時自分が一滴も涙を流してあげなかった事を思い出した。ばちがあたった
のだ、多分。

家に帰ってから誰も私に病気の事は訊かないし、私も話さない。話さなければ
病巣自体が消えてなくなる事を信じているように。でも相手は私を忘れてはい
ないようだった。寝床で顔の右側を下にしてしばらく伏せていると、こめかみ
のあたりが以前にも増して大きく膨らんで、顔の右半分が引きつって来る。怖
くなっていつもの様に顔の左側を下にする。

母が一人で耐えているように、私も一人で耐えてみよう。若い医師がノートに
ぐるぐる血管を描きながら言ったように、成長にあわせて病巣も育つのなら私
は成長する事を諦めよう。心も体も中学生の今のままでいい。不完全のまま大
人になればいいと。

受験地獄なんて言葉があっただろうか。何も考えず、夜の川原でいつも星を眺
めていたような気がする。

*以下10行削除 (2014/5/3)

N大学付属病院

2005-11-13 05:53:36 | エチュード
血管がですね、このようにこめかみの所でどんどん増えてしまってとぐろを巻
いてしまっているんですね。手術は頭皮のほうを切ってかき出しましょう。顔
には全然手をつけませんので、手術痕を気にしなくていいですよ。髪の毛で隠
れますから。

患部は頭蓋骨の外側ですから大丈夫でしょう。でもまだ若いですからね、放置
していくと左側にも移っていって、最悪失明するかも知れません。よく家族で
話し合って下さい。

考えるとか頭をあまり使うことは良くありません。それに読書も。でも中学生
は勉強が仕事ですからね。困りますよね・・・


夏だったのだろうか、病院を出ると景色はただただやたら白くて。

夜の川原にて

2005-10-14 03:34:02 | エチュード
雲の隙間に星達が見えるよ。すっかり過去になってしまって。川原も、川も、
対岸の堤防も、その向こう側にある建物や、山影も、ぼんやりした街灯たちも、
皆ほんの少しだけ光の分だけ年をとって、思い出と同じさ、私の目の前にはい
つも過去がある。

時の流れを今背中に受けて、私は過去へと流れていくものを見つめている。光
陰矢の如しっていうけれど、その矢はいつも過ぎ去りゆく方に向かっているの
さ。

私には君が見える。今なら君の思いが少しは解る。今なら君と友達になれる。
でも君はそこに立ち止まったままなので、背中(未来)の私を見る事はできな
いよ。

誰かが歌っている、夜の川原で。

社会とか私とか

2005-10-03 00:31:10 | エチュード
一人で生きているわけではない。今生きているって事は、日々穀物や野菜魚介
類等を頬張っている訳で、そこに至るまでには社会のいろんな約束事やら手続
きとかがあるのだろう。

また明日にでも突然敵が現われて、私の命を奪うような事はまああまり考えな
くても良いだろう、幸いにもね。そうならない為の用心やら、なんやかやを社
会はしているのさ。

そして私はその社会の一員。社会を群れと呼びかえてしまうけれど、食べてい
く事、むやみに死んだり、殺されたりしない事、群れはその為の仕組みや知恵
を持っている。そしてまた個人としての私はいずれ死ぬけれど、群れの仲間が
消滅しないように、直接的、間接的に仲間増やしに貢献するのさ。

私が四六時中、食う事や身を守ることにあくせくしている訳ではないとしたら、
それは先達たちのお陰だろう。群れにとって私の評価も、群れの仲間の一人一
人の食う事や身を守る事の苦労を、私の努力によりどれだけ減らす事ができた
のかにより決まるのだろう。

私の人生の意義、目的は、群れの中での評価を高める事にあるのだろう。群れ
が、たまたま「1、2、沢山」の3つの数詞しか必要としない社会なら、私が
夜中にふと星を見上げて体で感じてしまう「無限」のようなものは、群れにと
って何の意味を持たないだろう。

そして群れが「一人称」を言葉として必要としない社会なら、私に偶然「私は
誰か、どこから来たか、どこへ行くのか」という概念が押し寄せたとしても、
群れにとっては、蟻がむやみに触覚を振り回す程度にしか見えず、何の価値も
見出せないだろう。どのみち群れにとって「私」の価値など無いのだから。

人生の価値とか幸せとか、そんなことはどうでもいいさ。
私にとっての根源的な問い。
あなたにとっての根源的な問い。
蟻には蟻にとっての根源的な問いがあるだろうさ。
そして岩石には岩石の。
それらの問いに繋がりがあるのか無いのか、私は知らない。

女の子と死

2005-09-28 22:10:13 | エチュード
昼間だが薄暗い奥の部屋に、女の子が寝かされていた。女の子の母親が枕元で、
私は部屋の隅でその子を眺めていた。上布団ははねのけられていた。

どうして私がそこにいるのか判らない。女の子は私より少し年上で友達という
訳ではない。

やがて母親は眠っている娘に近づき、寝巻きの紐を解きにかかるようだったの
で、腰を上げようとしたら
「そのままでいい」
と言われた。

あっという間に、女の子は丸裸にされて布団の上に寝かされた。裸になると、
体が倍に広がってずーっと大人に見えた。裸のままで眠っていた。

「きれいでしょう」
母親の言葉にこっくりを一つして、一目散に外へと駆け出した。死んだんだ。
死んであんなにきれいになってしまったんだ。

実際にはその後、元気になったその女の子を度々見かけている。でも私の中の
死んだという気持ちを打ち消すこともできなかった。おかしな話だけけれど。
川で溺れて死んだ少女の記憶より、はるかに望ましい死の記憶だから、手放し
たくなかったのかもしれない。


大人になってはじめて異性を裸にしたとき、体が広がる感覚が蘇って戸惑い
ました。

川で死んだ子

2005-09-28 06:29:15 | エチュード
家の前の川原で、幼い女の子の水死体を見たことがあります。妹を抱いていて
いる母の服の裾を、しがみつくように持って、大人たちの脚の間から覗いてい
まいたから、私もその子と同じぐらいの年だったのでしょう。

妹のために川べりの花を採ってやろうとして、足をすべらせて落ちた。雨あが
りで土手がゆるんでいたのです。村の者が舟を出して、長い竿をつついて探し
たところ、中州あたりで首を川底に突き刺すように沈んでいたとの事です。

ござの上で、西瓜のようにおなかを膨らませて、素っ裸で寝ていました。わざ
わざ服を脱がしたんだろうか、そんな姿を皆にじろじろ見られて、隠すことも
できない、恥ずかしがることも出来ない、そんなのいやだなと思いました。

また小学生の頃には、皆で川渡りしている途中、最後尾の男の子がいつの間に
か姿を消したと思ったら、溺れて死んでしまったこともあります。

若衆が、その男の子の水泳パンツをずりさげ、
「だめだこりゃ、肛門がひらいてる」
というと、目の前でお母さんがどっと泣き崩れました。

ほとんど水を飲んでなかったので、転んだ時のショックで死んだのではないか
との事です。でも、お尻の穴まで覗かれるなんて、そんな死に方たまらないと
その時も思いました。

どんな目に遭うかわからないような死に方はいやだな。何とか無事に年取って、
できたら畳の上で恥ずかしくないように死にたいな。ちょっと臆病で、たいく
つな人生を選択したようです。

調布~多摩川

2005-09-20 00:50:04 | エチュード
見上げると、空一面羊雲が明るく浮かんでいて、そのまま多摩川まで歩くこと
にしたのさ。通勤用の革靴は少しかかとがあるのは良いとして、ゆるめなのが
足指に悪く、長く歩く気持ちにはなれないけれど、結局橋を渡って家まで歩く
ことになるのだろう。

子供の頃、夜空を見上げて、いつもいつも思っていたよ。何なんだろう、世の
中って、自分って、命って。そういう謎を、少しずつ、少しずつ解き明かして
いくことが、人生の目的なのかなあとね。

はぐらかされるような答えに出会うと、がっかりしたり、おやおやと思ったり、
逃げているなあと思ったりしたこともあったけれど、今はまあしょうがないか
なと思っている。

日々の暮らしに追われ、流され、時には遊びほうけたり、つまんない事にかか
ずりあって、無為に年を重ねていく、時には皆の幸せなんかも考えたりします
が、そんなのが自然じゃなかなあと、今は思うのさ。

そんなことじゃ、本質的な謎の解決に一歩も近づけませんよと言われちゃいそ
うですが、それでいいんだと思いたいね。子供の頃に感じた謎が、その謎のま
んまの形で、今の自分に同じように押し寄せて来ること、ただそれがね、嬉し
いんですね。

これから数十年人生やって、最後の最後に、やっぱりわかんないやーってくた
ばるのか、そんな疑問すら起きないほどの痴呆になっているか知らないけれど、
私が思おうが、思わまいがにおかまいなく、その謎は、謎のまんまで漂ってい
るのさ、それが嬉しい。

だから、その謎の答え知っていますよ、とか教えてあげますよなんて言われる
と、ちょっと戸惑ってしまいますよね。自分の人生の一番美味しいところを、
神様とか、賢い人に何だか持っていかれるような気がして、できたら関わりた
くないですよね。

宇宙の歴史とか、生命の仕組みの解明とか、まか不可思議な事について考察と
か、もろもろの学問を否定しているわけではありませんよ。それは人々が幸せ
に暮らしていくのに不可欠ですし、私も日々恩恵をこうむっているわけですか
ら。

まあそれらは、本質的な問を、新しい形で問い直す表現を発見したというんで
すごい事ではあるんでしょうね・・・

そんな事考え考え、郵便局の前の通りをとことこ歩いて、学校とか映画館を通
り過ぎて、そのまま行ってしまうと外れていくような気がしたので、途中少し
引き返したり、曲がったりして、神隠しに会う事もなく多摩川の堤防に着きま
した。