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はじめての・・・

ブログ10年目…庭、踊り、ウォーキング、ギター、ゲーム

鶏のように

2006-09-27 06:17:57 | エチュード
大人の手からすり抜けた鶏は庭を走った。でもその時すでに頭は切り落とされ
ており、首から血を噴き出しながら体だけ走っていた。皆一瞬あっけにとられ、
その後どっと笑った。

もとより親竜を殺すつもりはなかった。白く柔らかな魔法の手袋で、そっと傍
らに落ちていた虹色の鱗片を拾い上げようとした刹那、仲間が放った流れ矢に
意識を取り戻した竜の鋭い爪が、背後から娘の白い首をかすめ切った・・・。

小さな体のどこにそんな力を宿していたのだろう。私もいつか鳥や魚に食われ
るがいいさ。実際は薬や毒に犯された体は見向きもされず、見せ場をつくるこ
ともなく朽ち果てるしかないだろうけど。

鶏を打つ

2006-09-24 23:06:36 | エチュード
鶏は今でも頭を押さえつけて、なたのような物で一気に首を切り落とすのだろ
うか。逆さに吊るし血が出尽くした後の羽根むしりに、子供等も加わった。綿
毛が心地よい。

羽根を売って欲しいと男は鶏小屋にいる誰にともなく言った。私が羽根と一緒
に、鶏肉や骨までかき集めているのを見透かしたかのように
「食料と(羽根を)交換してもいいぞ」
という。荷物になる割に腹の足しにあまりならない鶏肉には見向きせず、骨を
わざわざ埋葬する宗教心もなく、ただ羽根を集める為だけに人々は鶏小屋に集
まる。
「羽根なんて、集めてないよ」
150本程あったけど、見えついた嘘をついてその場を離れた。矢羽にして使
うのだろう。同じ弓使いなら消息を絶った姉の事を知っているだろうか。

姉は羽根を集めるために、ひ弱な鶏を殺すことに気が進まない様子だった。手
にしている花束で鶏を叩く。素手よりもさらに貧弱なその武器は、皆の笑い者
になっていた。その優しさが命取りにならなければよいがと、母は案じていた。

心が癒されるとき

2006-09-19 05:03:57 | エチュード
森へ行って木を切ります。いつも気持ちよい音楽が流れていて、持ちきれなく
まで木を切り続けます。まれに鳥の巣が落ちたりします。収集癖のある鳥なの
でしょうか、巣の中に黄金の指輪が入っていたりします。木の種が入っている
事も。くわえて運んだのでしょうか、糞に混じっていたのでしょうか。バナナ
の種だったりすると、渡り鳥だという事がわかります。私の育ったその土地で
はバナナは採れません。でも本当に育てることはできないでしょうか。庭に植
えて見たいと思います。そして竜狩に行ったきりの姉の帰りを待つのです。

「サ店にて」 作者が喋っていいの? 

2006-06-29 03:59:42 | エチュード
思いつきで声を掛けたのではのではないのだろう。ある程度の事情を知って、
といっても二人で店に来てたのが、一人で来るようになったことから想像でき
る程度の事情であるが、またおおよそのわたしの人柄をみて、店を手伝うよう
声をかけたのだろう。プロに徹してるマスターが、店のイメージをぶっ壊す者
を一時的にでも雇うとは思えないから。そして世間知らずのぼんやりさんが、
少しでも気晴らしになり、立ち直るきっかけをつくってくれればいいとさえ思
っていたかも知れない。あ、マスターはそんなそぶり少しも見せないし、わた
しも気付かない。
読者からみると、なおさらそんな事情なんて見えてこない。ひょんな事から、
店を手伝うはめになった主人公のどたばた、そうこれは軽い話なので軽く読み
飛ばしていけばいい。ここでは世間を知った、職人的な、軽口をたたかないマ
スターを書ききれていればいい。そんなマスターの口から出た一言だからこそ、
真実味があり、重みがある。

「お似合いだと思っていたけどね」

思いがけない一言によって、あ、この人解かってくれているんだと驚き、慰め
られた事はありませんか?見ている人はちゃんと見ているのさ。人生捨てたも
んじゃないぜ。何ひとつ解決するわけではないけれど、なお一層胸が締め付け
られるばかりだけれども、それでももう少しだけ生きてみようかと思った。そ
んな思いを共有したい作品です。

生まれて最初の記憶

2006-06-26 05:14:38 | エチュード
姉の入ったみかん箱は縄で自転車に繋げられて、ずるずると雪道を火葬場へ向
かっている。自転車を曳く父も寄り添う母も無言。自転車の荷台は薪が一杯積
んであった。薪を持っていかないと燃やしてもらえない。何もかも不足してい
た時代だった。
まだお前は生まれてもいないのに、どうしてそんな事を覚えているの。それに
みかん箱に入れて運ぶはずがないじゃないかと、母は笑った。それがぼくの最
初の記憶。いろの白かった名無しの姉。ぼくはゆきちゃんと名前をつけた。
死ぬときはみんな子供になるのだろう。そして大いなる父と母に連れられて行
くのだろう。人も猫も。

お気に入りのデザート

2006-05-10 03:39:18 | エチュード
元々、私の生まれ育った家には「デザート」なんて概念はなかった。だから
「おいちかったかい?」
と、外孫に話しかけて
「うん、デザートは?」
と訊かれた時のお袋の狼狽ぶりは何だか可笑しかった。ミカンを見つけてあげ
てたけれど、我が息子の神妙な表情を見ていても、あれ勝手が違うぞって感じ
なの。お袋はこれにこりて、その後は私達がお邪魔する時はデザートの準備ぬ
かりなく、息子の顔を見るなり
「デザート用意してあるよ、食べるかい?」
なんて話しかけて、苦労しているのである。

息子にとっての、お気に入りのデザートはバナナである。ミカンの皮剥きに負
けず劣らず、バナナの皮剥きも子供には難しい。いじっているうちに中身がぐ
にゅぐにゅになってしまうと大人にだって剥き辛い。だからたいてい私が剥い
てやり、半分っこにする。でもご飯を残すとデザートにはあり付けない。息子
があんまりのろくさご飯を食べていると、
「あれ、バナナがまだ残っているぞ、父さん食べちゃおかな?」
なんて言って口に持っていく。息子は私の手元、口元を横目で見ながら、いそ
いで食べようとするから、ぽろぽろご飯がこぼれてよけいに手間取る。私も結
構シュールなんで、バナナを食べる振りをしているつもりで、本当に少しずつ
少しずつ齧ってしまう。それがとっても美味しく感じたのは、息子のたましい
まで少しずつ齧っていたからかもしれないね。

サ店にて -5-

2006-04-30 07:03:00 | エチュード
今はサ店でもピザ屋さんでもなく、本物のイタリアンレストランである。常連
だった女子高生やOLが結婚し、旦那や子供を連れてやってくる。マスターが
夢見ていた通りの情景がある。だがコーヒーの味はまろやかになったし、ジャ
ズを流す事もない。夢を実現する為には、切捨てられたこだわりもあるという
事だ。えびの尻尾の先の事は知らないけど、おしぼりは業者が扱っている。

私は、今でも時々カフェオーレを頼んだOLのことを思いだす。友達が「ミル
クコーヒー」って注文したら、普通「わたしも同じ」とか「わたしもミルクコ
ーヒー」って言うと思うけど、どうしてそこで「カフェオーレ」なのだろうか
と。その時の彼女の気持ちが知りたい。私が「カフェオーレ」と言ってみた所
で、何かが解るという訳でもないけど。正確なフランス語では「カフェオレ」
か、まカタカナ表記で正確も何もないけど。

女の子の気持ち解らないよ。伝わらないよ。もうたくさんだよ。実は新しい言
葉なら何でも良かった。きれいな言葉、うれしい言葉、やさしい言葉だけを覚
えたら、その新しい言葉の世界で私は幸せでいられると信じた。傷つくことも、
傷つける事もない。別れる事も、忘れることも無い。本当にそう思った。

「これマスターから。かず間違えたので、ひとつだけ種類違うけど」
「マスター、ごちそうさまでーす」
「あんた来さなすぎ。今月この店開店33周年なんだよ、33周年」

サ店にて -4-

2006-04-27 05:26:19 | エチュード
「まあ一ヶ月よく持ちこたえたね。満席になった時はさすがにあせったけど。
サ店ならともかく、うちみたいなレストランはプロだって1人で10テーブル
同時は辛いよ。(ピザの皿が80も流しにたまっちゃって、それでも新しい皿
次々出てくるんで、この店ふところでかいって感激したね)
「思うんだけどさあ、あんたってどんなに混んでいようが、動作全然かわらな
いじゃない。何か見てる客のほうまで諦めるっていうか、うつっちゃってさあ。
(根っから不器用なんだから、急ごうと思っても急げないだけです)
「まあ平日の昼間にうちにくるような客はひまだからさ、のんびり待たされる
とそんなもんかと納得しちゃうんだな。(失礼だぞ、こら)
「あと、皿とか、グラスとか1個も割らなかったね。週一回位は割らかすもん
です。やる気がなくなると、わざとじゃなくても急に続けて割るようになるか
ら判る。すぐに替えますね。(厳しいよ)
「レジのお金が一円も狂わなかったのは、あんた当たり前だというけれど、な
かなかできないよ。不足しても払いすぎても客の信用無くすから。(私いまだ
に時給いくらか聞いてないんですけど。口先だけでほめるだけほめて、まさか
ボランティアってことないでしょうね)

「お金のこと何も言わないからいらないかと思ったよ。これからどうするの?」
「フランス語習おうかと思っているけど」
「イタリア語でしょう、イタリア語。一緒に本場を見にいきません?」
「イタリア語教える先生一人もいなかった。スペイン語は一人いたけど」
「へ、本気なんだ」
「よさそうな娘、見つかってよかったね」
「あんたと一緒に店に来てた娘、あんな娘なら申し分ないけれどね」
「いきなり何?ひょっとして今でも彼女この店に来る事あるの?」
「客として店に居るだけでも何かまわりが華やいでさ、店の雰囲気がかわるん
だな」
(一人だけでって事はないよね・・・)
「お似合いだと思っていたけどね」

サ店にて -3- 

2006-04-23 22:56:00 | エチュード
「わたし、ミルクコーヒー」
「カフェオーレ」
「かしこまりました。ミルクコーヒーとカフェオーレですね」
「え、あの。ミルクコーヒー2つですけど」
「わかりました、ミルクコーヒー2つとカフェオーレ1つでいいですか」
「えーっ?カフェオーレ2つとか」
「ありがとうございます、ミルクコーヒー・・・」
「ちょっと、あんたはもういいから。お客さんミルクコーヒー2つですね」

「何でシャンソン流してるの。暗くって店のイメージに合わないでしょ」
「マスターのジャズの方がよっぽど暗くって店に合いませんよ。フランス語知
らなくて失礼しましたね。これからお店で勉強させていただきます」
「カフェオーレピザはないだろ」

「ごめん、手が離せない。トマトジュース作って」
「えー話が違います。作り方わかりません」
「ミキサーそこ。ボタン押すだけ」
「マスター中味がどんどんせり上がってきます」
「ふた、ふた、ふた、ふたー」

「お客さんに味は大丈夫ですか?なんて訊くなよ。プロなんだから」
「ミキサーって何かをかき混ぜるんでしょ。トマトジュース入れてかき回した
だけで意味あるのかなあと思って」
「生のトマトはどうしたの?」

サ店にて -2-

2006-04-15 21:05:09 | エチュード
「早く次の娘見つかるといいですね」
「○○○で働いたことがあるなら、即採用するんですけど。あそこは店に出す
までにしっかり接客の基本を教えているからね。そこで何ヶ月か勤まればまず
大丈夫」
「そんなに出来が違うんですかね?」
「私は奥にこもりきりでもね、レジから目を離しませんね。お金を出す瞬間の
お客さんの表情を見るだけで、中の様子がだいたい判りますよ」
「レジの金を見張っているのかと思いました。マスターの視線、きついから」
「いろんな娘がいるからね、それもある。あとできる娘はピザの数が同じでも
必ずドリンクの注文も併せて取ってくるから、売り上げが全然違ってきますよ」
「まさか僕にそれを望んではいないでしょうね。まっぴらですよ」
「あんたに期待しちゃいませんよ」

「マスター、イタリアンチョコレート」
「バニラでいいか訊いてみて」
「へっ?」

「あの、マスターがバニラピザは如何ですかといっておりますが」
「えー?」

「何がバニラピザですか、メニュー良く見なさいよ。イタリアンチョコレート
にバニラと生クリームと二種類あるでしょ」
「バニラなんて知りません。これってココアの上にアイスクリームが乗っかっ
ているだけじゃないですか。マスター、知らない言葉で客を惑わすのは良くな
いですよ」