みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0352「昔の彼」

2018-10-18 18:52:39 | ブログ短編

「えっ! 梶原(かじわら)君? 梶原君なの?」
 彼と会うのは…、10年ぶり、かな? 高二のとき何となく付き合い始めて、卒業(そつぎょう)とともに疎遠(そえん)になってしまった。そもそも、あの頃(ころ)の私たちって、本当(ほんとう)に付き合ってるって言えたのかな? 人を好きになるってことがどういうことなのか、よく分かってなかった気がする。まだまだ子供(こども)だったのよ。
「もう、こんなとこで会えるなんて思ってもいなかったわ」
 私は何だかソワソワして、変な気分(きぶん)だ。だって、ぜんぜん違(ちが)うんだもん。あの頃の彼は、何だがヤボったくって普通(ふつう)の子だったのよ。今、目の前にいる彼とは大違いだわ。
「えっ、私? なに言ってるのよ。私なんか、もうおばさんよ」
 もう、やだ。私の顔をじっと見て…。そんなに見つめられたら…、私、困(こま)るわ。
「でも、それは無理(むり)よ。だって、私…」
 私はさり気なく彼の薬指(くすりゆび)を見る。そこには、何もない。まだ、結婚(けっこん)してないのかも。あーっ、勤務中(きんむちゅう)じゃなかったらよかったのに。
「じゃあ、これ。もう、駐車違反(ちゅうしゃいはん)なんかしちゃダメだよ。罰金(ばっきん)はちゃんと払(はら)ってね」
 彼は、何か言いたげだったけど、そのまま言葉を呑(の)み込んで行ってしまった。私は彼の後ろ姿(すがた)を見つめながら、「また来てね」と呟(つぶや)いた。
<つぶやき>知り合いだからって、特別扱(とくべつあつか)いはしてもらえませんよ。違反(いはん)はしないように。
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