私のファーストキスの相手(あいて)は五歳の甥(おい)っ子だった。それも、突然(とつぜん)抱きついてきてブチュッとされてしまった。まったく、マセガキなんだから…。それを見ていたお姉(ねえ)ちゃんが、私をからかうように言った。
「ねえ、もしかしてファーストキスだったの?」
「そ…、そんなわけないでしょ。私だって、それくらい…」
お姉ちゃんには隠(かく)しごとはできない。昔(むかし)からそうなのだ。もう、腹(はら)が立つ…。
「子供(こども)相手に本気(まじ)にならないでね。あたしの可愛(かわい)い息子(むすこ)なんだから」
「なわけないでしょ。私にだって、ちゃんと好きな人いるんだから」
「へえ、そうなんだ。で、その彼とは…」お姉ちゃんはいつもそうだ。年上(としうえ)ぶって…。
「やっぱりね。まだ手も握(にぎ)ってないんだ。あんたさ、そんなんだから…」
「握ったわよ。手ぐらい、ちゃんとつないでるわ」
「でも、それだけなんでしょ。それじゃ、恋人なんて言えないわよ」
もう、彼のこと何にも知らないくせに、何なのよ。私だって、したいわよ。でも…。
「あたしが教えてあげようか?」お姉ちゃんは意味深(いみしん)な笑(え)みを浮(う)かべる。
私が奥手(おくて)になっちゃったのは、奔放(ほんぽう)すぎるお姉ちゃんのせいだ。お姉ちゃんみたいには、絶対(ぜったい)にならないって思ってたのに…。でも、この際(さい)、教えてもらっちゃおうかなぁ…。
<つぶやき>何事(なにごと)もタイミングが肝心(かんじん)です。好機(こうき)を逃(に)がさず、しっかりゲットしましょう。
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