徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

難民危機~バルカンルートとフランスで小さな改善

2015年11月03日 | 社会
ヨーロッパの難民対策は全体的に一向に前進していませんが、これから冬になって、難民たちの状況がさらに厳しくなるため、いくつかの対症療法が実施されました。

セルビア・クロアチア

セルビアとクロアチアは、難民たちが徒歩で両国国境を越えなくて済むように、セルビアの街シドから特別列車で難民たちを直接臨時収容施設が開設されたスラヴォンスキ・ブロドへ運ぶ協定を結びました。今日から運航開始し、1000人ほど乗せた列車が3本クロアチアに向かいました。スラヴォンスキ・ブロドに新設された臨時収容施設は5000人を収容することが可能で、暖房設備も整っています。医師も常駐し、風邪や感冒その他の病気に対応できる準備を整えています。
ただ、クロアチアに留まりたい難民は殆どいないので、臨時収容施設は登録、休憩、1泊だけの宿泊に使われることになるようです。

因みに、ハンガリーが9月半ばに国境封鎖して以来、現在まで31万2千人の難民がクロアチアを通過して、オーストリア・ドイツへ向かいました。


オーストリア・ドイツ

オーストリア・ドイツ間も一時混乱を極め、夜中に予告なしにバスで1000人単位の難民たちがドイツ国境に運ばれ、そこで降ろされた難民たちが放置される、というようなことも起こりましたが、現在は難民引き渡し地点が5か所に限られ、1時間につき各地点で50人ずつ、ドイツ側に入国できるよう取り決められました。これによりドイツ側の混雑も避けられ、もう少し丁寧な対応が可能になりました。
現在、ドイツでは国境に空港にあるようなトランジット・ゾーンを設置することが検討されています。メルケル首相に難民問題の早急な解決を求めて最後通牒を突き付けたバイエルン州首相兼連立与党キリスト教社会同盟(CSU)党首ホルスト・ゼーホーファーが主にトランジットゾーン設置を推し進めていました。メルケル首相(キリスト教民主同盟CDU党首)は当初あまり乗り気ではなかったのですが、姉妹政党党首同士がこれ以上争うわけにはいかないので、この案に合意することで手打ちにしようとしたようです。また、これまで連立パートナーである社会民主党(SPD)は監獄のようなものだから、人権上問題があるとして強硬に反対していましたが、今日は態度を多少軟化させ、具体的に案を詰めていくことに同意しました。木曜日に話し合いの場が持たれるとのことです。
具体的にどのようにトランジットゾーンが実施されるのかまだ明らかではありませんが、重要な点は、「難民申請が認定される可能性が皆無の人たちはそもそもドイツに入国させない」ということです。

フランス

フランスはバルカンルートとは無関係ですが、数か月前からユーロトンネルを通る電車やトラックに忍び込んで、あるいは徒歩でイギリスに渡ろうとする難民たちがカレーにできた「ジャングル」と呼ばれるテント村で寝起きしています。約6000人がそこに滞在していますが、きちんと管理されているわけではないので、かなり不衛生な状態です。本日パ・ド・カレー県行政裁判所は難民キャンプの状況改善のため、50か所の水場と仮設トイレを50個追加するよう指示を出しました。
また、ごみ収集システムの導入や救急車乗り入れ用路の設置及び敷地の清掃も指示。これらの指示は8日以内に実行されないと、罰金が1日遅れるごとに100ユーロ科されることになるそうです。
ユーロトンネルの侵入を防ぐための防御措置はイギリスと協力してかなり早い対応でしたが、難民キャンプの状況改善は随分とのんびりです。難民たちがイギリスに渡ろうとする最大の理由は、フランスが難民支援を十分にせず、難民審査をするでもなく彼らを放置した(している)からです。従って、テント村の状況改善したところで、そこにいる人たちにとっての根本的な問題は全く手つかずのままなのです。ないよりはあった方がまし、というだけの小さな改善です。