徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:アンナ・キャサリン・グリーン著、『医師とその妻と時計』(世界推理短編傑作集1、創元推理文庫)

2020年02月13日 | 書評ー小説:作者カ行


江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集1』の6番目に収録されている作品は、アンナ・キャサリン・グリーン著、『医師とその妻と時計(The Doctor, His Wife, and the Clock)』(1895)です。1851年のニューヨークが舞台で、高名で尊敬されている市民、ハスブルック氏が夜中に高級アパートの自宅で射殺された事件についての推理短編です。
犯人の痕跡は(当時の捜査方法では)まったく見つからず、事件は迷宮入りしそうになっていたところ、担当刑事エベニサー・グライスが突然「ハスブルック氏の変死を知らせる最初の声を立てたのは誰だ?」という疑問がわき、再度聞き込みを開始すると、ハスブルック氏の隣人で盲目だが腕の良いザブリスキー医師が「犯人は自分だ」と自供しだします。しかし、動機も銃の入手経路も、犯行後に銃をどこに捨てたかなど、彼の犯行を裏付けるような事実を何一つ言えないし、盲目であるという事実も相まってとても信じられるものではないため、医師は精神異常をきたしているものと見なされます。
医師の主張は果たして真実なのか、もしそうなら、どうやって犯行が可能だったのか、動機は何だったかなどの謎が解かれていきます。
結末は悲劇的です。短編なのに濃厚な人間関係ドラマが詰まっていて、味わい深いミステリーになっています。

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