徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第零幕 三、二人の過誤』

2018年10月18日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

『紅霞後宮物語』の新刊が出たので早速購入し、あっという間に読み終わってしまいました。さすがライトノベルですね。

第零幕、三『二人の過誤』は、小玉が皇女(後の王太妃)の護衛に抜擢されてから、皇帝死去、約1年間の田舎暮らしを経てまた中央軍に戻るまでを語る番外編です。小玉と文林の「過誤」、すなわち酔った勢いで肉体関係を持ったとしか思えない状況で目覚めたが、どちらもそのいきさつを全然思い出せないというおまぬけな事態が起こり、文林の無自覚と小玉の無頓着で何やら決定的に気持ちのすれ違いを起こしている二人が滑稽です。しかし、小玉にとっては仕事に忙殺されている間に兄を亡くし、母を亡くすという辛い時期でもあります。

また王太妃の少女時代と小玉の出会いやおかしなやり取りなど、後の二人の関係の基礎が築かれる模様もなかなか楽しく読めます。

文林と薄幸の謝月枝の出会いもこの巻に収められています。謝月枝は本編でもかなり早い時期に文林のスパイとして活躍し、彼のために亡くなってしまっていたので、誰だったか思い出すのにちょっと苦労しましたが。

印象的なシーンは、文林をよこせと言ってそれを断った小玉を、手柄横取りや左遷などでいろいろと嫌がらせをしてきた魏光が汚職で摘発されて粛清され、その首がさらされているところでしょうか。勢いづいてあっという間に出世したものの、転落もあっという間という無常感が無様にさらされた首によって象徴されているようです。魏光の転落と小玉の王都への呼び戻しには文林が一役買っていたようですが、どうやったのかその経緯は詳しくは書かれていません。

番外(過去)編も悪くないですが、早く本編の続きが読みたいですね。


書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語』第零~七幕(富士見L文庫)

書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第八幕』(富士見L文庫)