徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ:フィリップスブルク原発、虚偽の定期検査

2016年04月18日 | 社会

ドイツ、バーデン・ビュルッテンベルク州にあるフィリップスブルク原発でスキャンダルが起こっています。先週、外部委託の従業員が2015年12月に第2原子炉において、放射線管理用計器類の定期検査をせずに検査済みの報告をしたことが明らかになりました。同従業員はそれ以外にも7回虚偽の検査報告をしたことが分かりました。それを受けて4月13日にバーデン・ヴュルッテンベルク州環境省は第2原子炉の安全性が証明されるまで、再稼働を禁止しました。同原子炉は4月8日に定期検査のため停止していました。

事業者であるEnBWは、詳しい調査のためのタスクフォースを設置しましたが、今日また新たな事実が明るみに出ました。外部委託の従業員一人だけではなく、他の社員二人も虚偽検査に関係していたようです。

EnBWのタスクフォースによれば、第1原子炉で計9回放射線管理用計器類の検査が行われないまま、検査プロトコルに検査済みと記入されていました。そのうちの8回に最初の従業員が検査済み確認の署名をしており、残りの1回は二人目の従業員が代理で確認署名をしていました。因みに第1原子炉(フィリップスブルク1)は2011年8月に既に稼働停止となっています。

三人目の従業員は第2原子炉で検査を行ってはいましたが、15回にわたり検査日時を偽ったとのことです。検査予定日が過ぎてしまっていたことを誤魔化すためだったようです。第2原子炉(フィリップスブルク2)は2019年末(あるいは残留電力量によってはそれよりも早く)に完全停止となる予定です。

またヘッセン州にあるビブリス原発でも似たような虚偽検査があったようです。2014年第4四半期から2015年3月まで計器類の検査済みのプロトコルが作成されていましたが、実際には検査が行われていなかったとのこと。2015年5月にはヘッセン州環境省に報告されていましたが、ドイツ公営放送SWRによってこの度明るみに出ました。ビブリス原発は福島原発事故後2011年8月に停止し、現在廃炉作業中です。

監督省庁であるバーデン・ヴュルッテンベルク州環境相フランツ・ウンターシュテラーはこの事件が報告義務のある原子力事象ではないとは認めていますが、今後報告義務の基準を厳格化していくよう他州及び連邦環境相に働きかけていく構えです。

参照記事:
南ドイツ新聞、2016.04.13付けの記事「フィリップスブルク原発、安全検査したふり」 
独雑誌ハイゼ、2016.04.15付けの記事「ビブリス原発でも虚偽検査
独雑誌ハイゼ、2016.04.18付けの記事「検査官3人が虚偽検査に関係」 

 

原発に「安全」などあり得ませんが、事故を起こさないように最大限の努力をすることを怠っては、ただでさえ危険なものの危険性がさらに増します。ルーチンワークで気が抜けているのかも知れませんが、許されることではありません。虚偽検査に関わっていた従業員たちは最低でも懲戒免職にすべきですし、事業者側は今後このような虚偽ができないようにコントロールを強化すべきでしょう。EnBWは改善措置を取ると約束していますが、それはもう必要最低限だと私は思います。

ドイツの脱原発の詳細について興味のある方は拙ブログ記事「ドイツの脱原発~その真実と虚構、現状(1)」をご覧下さい。