徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

所得税&社会保険負担のOECD国際比較 (2015)~ 日本は平均以下

2016年04月12日 | 社会

『パナマ文書』の暴露により、世の中が脱税・税回避に関する議論で湧いていますが、一方で、税金から絶対に逃れられない人たちが居ます。それはサラリーマン・サラリーウーマンたちです。彼ら彼女らにとって、所得税や社会保険料とは給料明細の紙の上でのみお目にかかれる数字のことです。その数字の2015年度のOECD比較が公表されましたので、一部ここに私見に基づく解説を加えつつご紹介いたします。

下の表は各国の平均所得の独身者における税&社会保険負担を比較して、多い順に並べたものです。国名のすぐ右隣りの段がそれです。真ん中の段は所得税、右端の段は社会保険負担の所得に占める割合が示されています。トップ5はベルギー、オーストリア、ドイツ、ハンガリー、イタリアで、税&社会保険負担は49%以上です。OECD全体の平均は35.9%。日本はそのさらに下で、32.2%でしかありません。最下位は所得税のないチリで、7%。

所得税だけで見ると、デンマークの35.8%がダントツでトップで、2位のアイスランド(26.7%)を大きく引き離しています。それにオーストリア(22.7%)、ベルギー(21.6%)、フィンランド(18.4%)が続きます。日本の所得税6.7%はトップの国々の税率に比べ笑えるほど少ないですね。実に下から数えて4番目です。

社会保険負担を単独で見ると、スロベニアがトップで19%。2位ドイツ(17.2%)、3位ポーランド(15.3%)。OECD平均は8.2%。日本は平均以上の12.4%で8位に入っています。デンマーク、オーストラリア、ニュージーランドの3国は社会保険負担ゼロです。これは社会保障が労働収入にリンクせずに税金で賄われているか、完全に自己責任で民間の保険で賄われているということですね。

 

次の表は扶養家族として妻と子供2人がいる場合の比較です。世帯主がそれぞれの国の平均所得を得ている場合の所得税・社会保険料が換算されています。

トップ5を占めるのはフランス、ベルギー、イタリア、フィンランド、オーストリアで、税&社会保険負担は39%以上です。ドイツは34%で、10位に転落です。独身者に比べて15.4ポイントの負担軽減で、いかに独身者が税制上虐げられている(家族が優遇されている)かが明確に出ています。OECD全体の平均は26.7%で、独身者との差は9.2ポイントとなっています。日本はOECD平均をわずかに0.1ポイント上回る26.8%です。

所得税だけの順位を見ると、やはりデンマークがトップで31.9%です。2位オーストリア(22.7%)、3位アイスランド(19.1%)。OECD平均は9.1%。対する日本の所得税は5.5%で下から数えて9番目となっています。注目に値するのはポーランド、チェコ、スロヴァキアで所得税がマイナスになっていることです。これらの国では独身労働者から所得税を取り、扶養家族のある労働者へ配分されているということですね。

社会保険負担は扶養家族付きの場合もスロベニアがトップで、19%。2位ドイツ(17%)、3位ポーランド(15.3%)。トップ3の順位は独身者の場合と同じです。OECD平均は8.1%。日本はここでも8位(12.4%)となっています。

こうしてみると、日本の社会保険負担はOECD平均以上で、保険ベースの社会保障が割と手厚い印象を受けますが、その恩恵を受けられるのはほぼ正規雇用の労働者に限られるところが難点です。非正規雇用が拡大されていく中、社会保障のカバー率は下がる一方となり、「国民皆保険」ならぬ、「国民半保険」に成り下がってしまっています。非正規ゆえにセーフティーネットから取りこぼされてしまっている人たちのために保険制度・社会保障制度の抜本的な見直しと改革が緊急課題と言えるのではないでしょうか。

オリジナルのデータベースに興味のある方はOECD Tax Databaseをご参照ください。

なお上の表はhttp://www.compareyourcountry.orgのサイトから引用しました。こちらから直接ご覧になれます。項目ごとに並べ替えることもできます。