徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ、既に2015年難民予想数到達。連立与党は「登録センター」で合意

2015年11月05日 | 社会
最新難民統計

ドイツ連邦内務省は今日、1月から10月に登録された難民数を発表しました:758.500人。これは今年の難民予想人数80万人に迫る人数です。登録が役所のキャパシティ不足により遅れて行われることを考慮に入れれば、既に10月末時点で予想数を上回っていた可能性もあります。

10月のみの新規登録者は約181.200人. 9月の164.000人より17.200人増えてます。

しかし、連邦移住難民庁で同時期に難民申請をした人は362.153人だけでした。それでも2014年の難民申請総数(約203.000人)より約16万件多くなっています。
内務省によれば連邦移住難民庁は1月から10月の期間中に205.285件の難民審査を終えました。昨年同期間の2倍以上の件数です。難民として認知されたのは39.7%でした。
未処理の申請件数は同時期に約3万件増え、328.207件となりました。 登録した難民のうちまだ難民申請をしていない人たちは申請件数統計には入っていません。

主要出身国は10月もシリア(88.640人、24.4%)がダントツで、アフガニスタン (31.051) 、イラク (21.875)と続きます。

内務省は夏に今年の難民予想数を80万人に引き上げました。州政治家や連邦経済・エネルギー相のジグマー・ガブリエルなどはとっくに難民100万人を見込んでいました。

ツァイト・オンライン、2015.11.05の記事より。


因みにオーストリアも難民統計が公表されました。オーストリア内務省による1月から9月の統計で、56.356件の難民申請があったそうです(前年比231%増)。申請者のうち、男性の割合は9か月平均で78%。男性の割合は5月が最大で83%。その後下がり続けて、9月には68%になったとのこと。申請者の中ではシリア人が最も多く、29.5%を占めました。
保護者同伴でない未成年申請者は6175人(11%)で、うち14歳以下の子どもは380人でした。

ディー・プレッセ、2015.11.05の記事より。

「トランジットゾーン」ではなく「登録センター」

連立与党党首ら、アンゲラ・メルケル(CDU)、ホルスト・ゼーホーファー(CSU)ジグマー・ガブリエル(SPD)は難民登録センター設置をはじめとする関連政策に合意しました。国境のトランジットゾーン案はこれで立ち消えとなりました。

登録センターはZDFによれば、バンベルクとマンヒングの2か所で、柵などの囲いは設置されるが、留置施設にはならないとのこと。同自治体での滞在を義務付ける予定ですが、当の難民申請者が滞在しているかどうかをどのようにコントロールするかについてはまだ明らかになっていません。

難民認定される可能性が少ない申請者の審査手続きは1週間以内に処理完了させ、もし申請者が不認可に対して不服申し立て訴訟を起こす場合は、その裁判手続きは2週間以内に終了しなければならないという。
簡易化した手続きは特にバルカン諸国のような安全な国出身者たちに適用され、再入国禁止となるそうだ。同様に2度目の申請をする人たちや有効なパスポートなどの身分を証明する書類を所持してない人にも適用されます。

難民証と難民データベース

メルケル首相は難民及び亡命申請者に統一証明書を導入すると宣言しました。そうした証明書の所持者だけが今後支援を受けられるようになります。統一証明書によって、これまでの難民の複数回にわたる登録を省くことができるようになるのが狙いです。

また難民データベースを作成し、誰が到着したのか俯瞰できるようにするそうです。家族呼び寄せは、特定の場合には2年間据え置きにすることも可能になります。

この合意で政権与党間の数週間に及ぶトランジットゾーンを巡る争いが収束しました。


野党の批判

政権与党の合意は野党の激しい批判を呼びました。「SPDはまたしてもCSUの亡命法厳格化路線に迎合した」と緑の党党首シモーネ・ペーターはロイター通信に語りました。「即席手続き、滞在義務の厳格化、支援の制限など許容できない嫌がらせであり、難民申請者の人権に対する攻撃だ。難民にいやがらせをして、出身国によって差別し、家族呼び寄せを制限する代わりに、難民審査のための人員を早急に増員すべき。」

左翼党党首ベルント・リークシンガーは「見せかけの妥協」と言っています。政府決定されたより厳しい滞在義務を伴う収容施設は間違った方向の致命的なシグナルだ。なんとしても国外退去が実施されるようになり、亡命権は壊される。そして法治国家的原則に基づいたフェアな審査手続きが行われなくなる危険がある。」と指摘しました。

ZDFホイテ、2015.11.05の記事より。