WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『眠る盃』(著者:向田 邦子)

2011-09-22 15:42:06 | 本と雑誌
眠る盃 (講談社文庫) 眠る盃 (講談社文庫)
価格:¥ 490(税込)
発売日:1982-06-11

向田邦子さんが飛行機事故で亡くなって30年がたつ。それでも書かれたものはまったく古びた感じがしない。繰り返し読んでも手垢のつかない文章。それどころか、「ざっかけない」「夜さり」「出性」など、日常でもう出逢わなくなった言葉がところどころ、新鮮に目に飛び込んできて嬉しい。文学にも眼福というものがあるのだ。


ものごと、状況、感情などを表現するのにぴったりな言葉が思い出せず、頭のどこかにあるはずなのに、うろうろと悔しい思いをすることがある。若いうちは語彙が足りず、歳をとると記憶力の問題であろうか。プロの書き手ならばここで突き詰めて考えるべきと思うが、日本で活字になっている本では、失礼ながら適当すぎるものも多い。この方はこれだけの感性と構成力の作品を、1時間に原稿用紙10枚というスピードで書いていたという。私も全部通読した向田ファンがかならず思うことを思う、もっと長くお時間が残されていたらと。