WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『孤独の発明』(著者:ポール・オースター 訳:柴田 元幸)

2011-09-23 19:35:19 | 本と雑誌
孤独の発明 (新潮文庫) 孤独の発明 (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:1996-03

3連休が続く今週、平日3日をオフにして遅めの夏休み。前半は佐賀と長崎に行き、台風十五号より一日早く東京に戻ってきた。日常生活を離れると、見たものを記憶に灼きつけようと、ピリッと気持ちが緊張する。それに三食とも外食続きというのが意外に疲れるのか、帰宅して家でお茶漬けなど作ると、我ながらおかしくなるくらいの満足感。旅行は短い滞在に限る。


ロジェ・グルニエの小説に、駅で電車を待つ男女のひとときを書いたとても素敵な短編があって、<J'aime la solitude.>というフレーズが出てくる。読んだとき思わず目が輝いてしまった。出会いのシーンで「わたしは1人でいるのが好き」「僕も」なんて会話がりっぱに成立する、さすが大人の国フランス。


人の向き合いかたには2種類あって、しじゅう誰かといないと不安なタイプと、1週間誰ともしゃべらなくても平気な孤独偏重。後者であるオースターの主人公は、初めて訪ねた外国の都市で道に迷い、あてもなく歩き回ることで、自分の思考回路のなか・・・自覚的な記憶と、そうでないプルースト的記憶が重なりあう迷路・・・を同心円状にめぐっている。読んでいるうちに何か大事なものをもらったような気分になる。いつの間にか、気持ちの疲れがとれていた。